ねっせいけいれん
熱性けいれん
主に生後6ヶ月から5歳頃までの乳幼児が、発熱時(38℃以上)におこす「ひきつけ」のこと
18人の医師がチェック 166回の改訂 最終更新: 2023.03.01

熱性けいれんの治療について

熱性けいれんは、解熱のための治療、けいれんを止めるための治療、けいれんを予防するための治療を行います。解熱のためには解熱鎮痛剤を使用します。けいれんが5分以上続くときにはジアゼパムやミダゾラムの静脈内注射でけいれんを止めます。熱性けいれんの再発予防のために発熱時にジアゼパム坐薬を投与したり、抗てんかん薬を継続内服することがあります。

1. 解熱のための治療

熱を下げて熱による苦痛を和らげるために、アセトアミノフェン(商品名:カロナール®など)などの解熱鎮痛薬を使用します。アセトアミノフェンは子どもにも安全に使える薬ですが、大量に使用すると肝機能障害などの副作用が出ることがあります。

ただし解熱鎮痛薬で熱を下げることで、熱性けいれんを予防することはできません。また逆に、解熱鎮痛薬を使用し一旦解熱した後再び熱が上がる際に、熱性けいれんが起こりやすくなるということもありません。

解熱鎮痛薬には内服薬の他に坐薬もあります。解熱鎮痛薬の坐薬(商品名: アンヒバ®坐剤など)と、けいれん予防のためのジアゼパムの坐薬(商品名: ダイアップ®坐剤など)を併用する場合には、ジアゼパムの坐薬を先に入れ、30分以上たってから解熱鎮痛薬の坐薬を入れます。同時に入れるとジアゼパムが吸収されにくくなり効果が弱まるためです。解熱鎮痛薬が内服薬の場合には同時に投与しても構いません。

2. けいれんを止めるための治療

熱性けいれんの多くが5分以内に止まり病院に着いた頃には治まっています。

身体のけいれん(こわばり)が止まっていても、目が開いたままで正面を向かず一方向に偏っている場合にはけいれん発作は続いていると考えます。

けいれん発作が5分以上続いているときは、ジアゼパム(商品名: ホリゾン® セルシン®など)またはミダゾラム(商品名: ドルミカム®など)の静脈内注射を行い、けいれんを止めます。ジアゼパムの副作用には眠気や呼吸抑制などがあります。ミダゾラムの副作用には呼吸抑制や不整脈などがあります。

3. けいれんを予防するための治療

熱性けいれんを起こした後再発予防のために、発熱時にジアゼパム坐薬を投与したり、抗てんかん薬を継続内服することがあります。

熱性けいれんの再発率は30%です。つまり、70%は再発しません。また薬物の副作用もあるので、熱性けいれんを起こした人全員に再発予防治療を行う必要はありません。

〇発熱時のジアゼパム坐薬投与

再発予防のために、発熱時にジアゼパム坐薬(商品名: ダイアップ®坐剤など)を投与するのは、以下の1.または2.を満たす場合に限られます。

  1. けいれん発作が15分以上続いた場合
  2. 次の6つのうち2つ以上を満たした熱性けいれんを2回以上繰り返した場合
    1. 身体の一部分のみのけいれんまたは24時間以内の反復
    2. 熱性けいれん発症前からの神経学的異常、発達遅滞
    3. 家族が熱性けいれんまたはてんかんを起こしたことがある
    4. 生後12か月未満での発症
    5. 発熱後1時間未満でのけいれん発作
    6. 38℃未満でのけいれん発作

以上の基準を満たし発熱時にジアゼパム坐薬を投与する場合には、37.5℃を目安として、1回につき体重1㎏あたり0.4-0.5mg(最大10mg)を肛門に挿入し、発熱が持続していれば8時間後に同量を追加します。

ジアゼパム坐薬の副作用には、ふらつきや眠気があります。

〇抗てんかん薬の継続内服

熱性けいれんの再発予防のために抗てんかん薬を継続内服することがあるのは、以下の場合です。

  • ジアゼパム坐薬による予防を行っても15分以上のけいれんが起こった場合
  • ジアゼパム坐薬による予防を行っても繰り返し発作がみられた場合

投与例)

  • フェノバルビタール(商品名:フェノバール®、フェノバルビタールなど):1日量体重1㎏あたり3-5mgを1日2回か3回に分けて内服
  • バルプロ酸(商品名:デパケン®、セレニカ®など):1日量体重1kgあたり20-30mgを1日2回に分けて内服

フェノバルビタールの副作用には発疹血小板減少などがあります。バルプロ酸の副作用には肝機能障害や発疹などがあります。

発熱時のジアゼパム坐薬、抗てんかん薬の継続内服いずれの場合も、熱性けいれんの最終発作から1-2年間、もしくは4-5歳まで投与を行います。

参考:熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023