ねっせいけいれん
熱性けいれん
主に生後6ヶ月から5歳頃までの乳幼児が、発熱時(38℃以上)におこす「ひきつけ」のこと
18人の医師がチェック 166回の改訂 最終更新: 2023.03.01

熱性けいれんに関する日常の注意点

熱性けいれんは生後6か月から5歳の乳幼児が高熱を出した時に起こりやすいです。後遺症はなく、知的能力や運動能力が低下することはありません。また70%が生涯に一度だけの発作で、90%以上は以後にてんかん発症することもありません。初めてけいれんを起こしたとき、または5分以上けいれんが続くときには、救急車を呼んでください。

1. 熱性けいれんを起こしやすい子はいる?

熱性けいれんを起こしやすい条件は以下の通りです。

  • 熱のピークが高い
  • 高熱を来たすウイルス感染症にかかっている
  • 予防接種を受けた後(2週間程度まで)
  • 家族が熱性けいれんを起こしたことがある
  • 母親が妊娠中に喫煙していたか、受動喫煙があった
  • アレルギー性鼻炎喘息アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がある

何歳までに起こりやすい?

熱性けいれんは生後6か月から5歳(特に1歳から1歳半)の乳幼児に多く起こります。5歳以下の乳幼児の2-4%(25人から50人に1人)に熱性けいれんが起こります。

大人にも起こるのか?

熱性けいれんは、子どもの脳が発達途中で大人に比べて未熟なため熱の影響を受けやすいことが原因で起こります。脳の発達とともに発作を起こさなくなるので、大人には熱性けいれんは起こりません。

熱性けいれんは通常、満5歳(生後60か月)までの発作と定義されています。しかし満5歳を超える年長児でも熱性けいれんを起こすことはあります。年齢以外の熱性けいれんの定義を満たす場合には、熱性けいれんと同様に対応します。ただし5歳以後に発作を繰り返す場合や熱のない時に発作を起こした場合には、てんかんの可能性があるため専門医(小児神経内科)の診察を受けてください。

2. 熱性けいれんは再発しやすい?

熱性けいれんを起こした人の70%は生涯で1回だけしか起こしません。再発率は30%です。再発しやすくなる条件には以下のようなものがあります。

  • 両親のどちらかが熱性けいれんを起こしたことがある
  • 1歳未満で発症した
  • 発熱から1時間以内に発作が起きた
  • 発作を起こした時の体温が39度以下だった

以上の条件のいずれかが当てはまる場合、熱性けいれんの再発率は2倍以上になります。

3. 熱性けいれんは後遺症が残るのか?

熱性けいれんが後遺症を残すことはほとんどありません。熱性けいれんを起こした後に、知的能力や運動能力が低下することはありません。

4. 熱性けいれんがてんかんに移行することはある?

てんかんは、大脳の神経細胞の異常な放電による発作(てんかん発作)を繰り返す疾患です。てんかんはすべての人の0.5%から1.0%に現れる身近な病気です。

熱性けいれんとてんかんは似ている点もありますが、別の病気です。熱性けいれんはてんかんの一種ではありません。熱性けいれんは発熱に伴って起こりますが、てんかん発作は発熱とは無関係に特に誘因なく起こります。

また熱性けいれんは乳幼児に起こりますが、てんかんは乳幼児に限らず子どもから大人まで起こることがあります。

ただし、熱性けいれんとてんかんの両方が現れる人もいます。熱性けいれんを起こした後にてんかんを発症する確率は2.0-7.5%です。一般人口におけるてんかん発症率(0.5-1.0%)よりは高いですが、熱性けいれんを起こした子どもの90%以上はてんかんを発症しません。また熱性けいれんからてんかんに進展、移行するのではないため、熱性けいれんの後にてんかんを予防することもできません。

熱性けいれんを起こした後にてんかんを発症することが多い条件は、以下の4つです。

  • 熱性けいれん発症前から脳や神経に異常がある
  • 両親や兄弟にてんかんがある
  • 複雑型熱性けいれん(①身体の一部分の発作、②持続時間が15分以上、③24時間以内に発作を繰り返す、のいずれか1つ以上に該当)
  • 発熱と発作の間隔が1時間以内

5. どんなときに救急車を呼べばよいのか?

初めてけいれんを起こしたとき、または、けいれんが5分以上続くときには、救急車を呼んでください。

熱性けいれんの多くは5分以内に止まります。すぐに病院に行ってもたいてい病院に着く頃には治まっています。ですから、熱性けいれんが始まって5分以内であれば救急車を呼ぶ必要性はありません。しかし、初めてけいれんを起こしたときには、それが熱性けいれんなのか、ほかの病気の症状なのか、簡単には区別がつきません。このため、初めてのけいれんではすぐに救急車を呼んでください。以前に熱性けいれんと診断されたことがあって同じような症状が再発した場合、特に熱性けいれんが再発しやすい条件に当てはまる場合には、けいれんが5分以上続けば救急車を呼んでください。

目の前で子どもが突然けいれんをし始めたら、気が動転してしまうのは当然です。熱性けいれんで死亡したり後遺症が残ることはないので、まずは落ち着いてください。速やかに安全な場所に身体を横向きにして寝かせ、衣類の首元を緩めます。そしてけいれんの持続時間と、身体のどこにどんなけいれんが起こっているかを観察します。この時、もし周りに人が2人以上いて余裕があれば、スマートフォンでけいれんの様子を動画撮影しておき、病院を受診した際に医師に見せます。けいれんを止めようとして身体を強く押さえつけたり、口の中に指などを突っ込んだりすることは危険なのでしないでください。

5分以上けいれんが続くときには薬物投与を行いけいれんを止める必要があります。したがってけいれんが5分以上続くときには、救急車を呼んで病院を受診しましょう。

また、けいれんが治まった後眠ってしまったりぼーっとすることがあります。そのような場合には慌てることはありません。自家用車かタクシーなどを利用して、かかりつけの小児科を受診してください。

参考文献
・日本小児神経学会, 熱性けいれん診療ガイドライン2015
・Chungath M, Shorvon S.The mortality and morbidity of febrile seizures. Nat Clin Pract Neurol. 2008 Nov;4(11):610-21. 
・熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023