ねっせいけいれん
熱性けいれん
主に生後6ヶ月から5歳頃までの乳幼児が、発熱時(38℃以上)におこす「ひきつけ」のこと
18人の医師がチェック 166回の改訂 最終更新: 2023.03.01

熱性けいれんとはどんな病気か?

熱性けいれんとは、生後6か月から5歳までの乳幼児が、38℃以上の発熱に伴って突然意識を失い起こす発作です。急激に自分の意志とは無関係に筋肉がこわばりガクガクと震えるいわゆるひきつけだけでなく、脱力や一点凝視、眼球上転なども発作に含まれます。熱性けいれんは年齢や症状などによって診断されますが、必要に応じて血液検査や画像検査(頭部CT検査MRI検査)、腰椎穿刺による髄液検査、脳波測定などの検査が行われることもあります。治療は、熱を下げるための治療、けいれんを止めるための治療、けいれんの再発予防のための治療を行います。

1. 熱性けいれんとは

熱性けいれんとは、乳幼児に38℃以上の発熱があった時に引き起こされる発作のことです。

熱性けいれんは、生後6か月から5歳(特に1歳から1歳半)の乳幼児に起こります。研究報告によってばらつきはありますが、最大9%(11人に1人)の人が熱性けいれんを経験するとされます。

子どもの脳は発達途中であり大人に比べて未熟なため熱の影響を受けやすいことが、熱性けいれんの原因と考えられています。

熱性けいれんの発作は、けいれん(急激に自分の意志とは無関係に筋肉がこわばりガクガクと震える発作、ひきつけ)だけでなく、脱力や一点凝視、眼球上転(目が上を向いて白目がちになること)なども含まれます。

熱性けいれんの他に、髄膜炎などの脳や脊髄感染症代謝異常などでもけいれん発作を起こすことがあります。明らかにこれらが発作の原因と思われる場合や、てんかんを起こしたことがある場合には、熱性けいれんとは言いません。

熱性けいれんとてんかんの違いは?

てんかんは、脳の神経細胞の異常な放電による発作(てんかん発作)を繰り返す疾患です。てんかんも0.5-1.0%の人が経験する比較的身近な病気です。

熱性けいれんとてんかんはどちらも多くの人に起こり、けいれんなどの症状が似ている点もありますが、熱性けいれんとてんかんは別の病気です。熱性けいれんはてんかんの一種ではありません。

熱性けいれんは発熱に伴って起こりますが、てんかん発作は発熱とは無関係に特に誘因なく起こります。

また熱性けいれんは乳幼児にだけ起こりますが、てんかんは乳幼児に限らず子どもから大人まで起こることがあります。

ただし、熱性けいれんとてんかんの両方が現れる子どももいます。熱性けいれんを起こしたことのある人がてんかん発症する確率は2.0-7.5%です。一般人口におけるてんかん発症率(0.5-1.0%)よりは高いですが、見方を変えると熱性けいれんを起こした子どもの90%以上はてんかんを発症しません。

熱性けいれんは遺伝する?

熱性けいれんは、親が起こしていれば子どもも必ず起こすとは言えませんが、遺伝的な傾向があると考えられています。熱性けいれんを起こした子どもの両親や兄弟の10-20%が、過去に熱性けいれんを起こしたことがあるか、将来熱性けいれんを起こします。

また両親のどちらかが熱性けいれんを起こしたことがある場合には、ない場合に比べて熱性けいれんの再発率が高くなります。

熱性けいれんは再発する?

熱性けいれんの再発率は約30%です。つまり、熱性けいれんを起こした人10人中7人は生涯で1回だけしか起こしません。しかし両親のどちらかが熱性けいれんを起こしたことがある場合には、再発率が2倍以上になります。

2. 熱性けいれんで起こる症状

熱性けいれんでは、発熱に伴い突然意識を失いけいれん発作を起こします。39℃以上の発熱の出始め(発症1日目)に起こることが多いです。熱性けいれんは症状の現れ方で種類を分けることがあるので、次に説明します。

単純性けいれんと複雑性けいれん

熱性けいれんには単純型熱性けいれんと複雑型熱性けいれんがあります。単純型熱性けいれんは、全身のけいれんで、持続時間は15分以内(多くが5分以内)、24時間以内の再発作がないものです。複雑型熱性けいれんは、身体の一部分のけいれん、持続時間15分以上、24時間以内の再発作のうち一つ以上に該当するものです。

熱性けいれんの多くが単純型熱性けいれんです。複雑型熱性けいれんでは再発やてんかん発症のリスクが高くなります。

熱性けいれんの種類の重責状態

熱性けいれんが30分以上続く場合、または、意識が回復しない間に何度もけいれんを繰り返す場合を、熱性けいれん重積状態と言います。熱性けいれんは5分以内に止まることが多いですが、5分以上続く場合は治療を行わないと30分以上続き熱性けいれん重積状態になる可能性が高くなります。けいれんが30分以上続くと脳に障害を来たす可能性があるので、治療を行いけいれんを止める必要があります。

熱性けいれんを初めて起こした場合、けいれんが5分以上続く場合には、救急車を呼んでください。けいれんが5分以上続く場合には薬物を投与してけいれんを止める治療を行います。

発作が治まった後であれば、急ぐ必要はありません。自家用車かタクシーなどを利用しかかりつけの小児科を受診してください。

詳しくは「熱性けいれんではどんな症状がみられる?」で説明します。

3. 熱性けいれんが疑われたらどんな検査が行われる?

熱性けいれんは年齢や症状などによって診断されます。病院を受診するときにはすでに発作が治まっていることも多いので、問診が重要になります。

問診では、発作の様子と持続時間、発熱の開始時期と最高体温、予防接種の接種状況、本人及び家族の熱性けいれんの経験、脳の異常や発達遅滞などの有無について伝えます。

熱性けいれんを起こした全ての人には行われませんが、必要に応じて血液検査や画像検査(頭部CT検査、MRI検査)、腰椎穿刺による髄液検査、脳波測定などの検査が行われます。

詳しくは「熱性けいれんが疑われたときに行われる検査」で説明します。

4. 熱性けいれんの治療について

発熱に対しては、熱による苦痛を和らげるために、アセトアミノフェン(商品名:カロナール®など)などの解熱鎮痛薬を使用し、体温を下げます。

ただし解熱鎮痛薬で体温を下げることで、熱性けいれんを予防することはできません。また逆に、解熱鎮痛薬を使用すると一旦解熱した後に薬が切れて再び熱が上がりますが、そのように波ができるからといって熱性けいれんが起こりやすくなるということもありません。熱が上がってくる時には「ますます悪くなるのではないか」と心配になるかもしれませんが、もともとの熱に戻っているだけです。

解熱鎮痛薬には飲み薬の他に坐薬もあります。けいれん予防のためのジアゼパムの坐薬(商品名:ダイアップ®坐剤など)と、解熱鎮痛薬の坐薬(商品名:アンヒバ®坐剤など)を併用する場合には、ジアゼパムの坐薬を先に入れ、30分以上たってから解熱鎮痛薬の坐薬を入れます。

けいれん発作が5分以上続いているときはジアゼパム(商品名:ホリゾン®セルシン®など)またはミダゾラム(商品名:ドルミカム®など)の静脈注射を行い、けいれんを止めます。

熱性けいれんの再発予防のために、発熱時にジアゼパム坐薬(商品名:ダイアップ®坐剤など)を投与したり、抗てんかん薬を継続内服することがありますが、副作用の心配があるので、専門的な知識を持ったお医者さんが判断した子どもに限られます。

詳しくは「熱性けいれんの治療について」で説明します。

5. 熱性けいれんは再発する?

熱性けいれんの再発率は30%です。つまり、熱性けいれんを起こした人10人中7人は、生涯で1回だけしか起こしません。再発しやすくなる条件には以下のようなものがあります。

  • 両親のどちらかが熱性けいれんを起こしたことがある
  • 1歳未満で発症した
  • 発熱から1時間以内に発作が起きた
  • 発作を起こした時の体温が39度以下だった

以上の条件のいずれかが当てはまる場合、熱性けいれんの再発率は2倍以上になります。

参考:熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023