はしょうふう
破傷風
破傷風菌が傷口から体内に侵入して、けいれんや呼吸障害などを引き起こす病気
8人の医師がチェック 126回の改訂 最終更新: 2022.05.24

破傷風に関する注意点:予防接種(ワクチン)、傷の処置など

破傷風はとても重症な感染症ですが、予防接種によってほとんどの感染を予防することができます。また、破傷風の原因となる破傷風菌は傷口から体内に入ってきます。このページでは、破傷風にかからないようするためのポイントや、破傷風が疑われた時の受診のポイントについて説明します。

破傷風に関する創部について

破傷風菌は土壌などに潜んでいます。破傷風菌は通常は体内に侵入することは難しいですが、傷があるとそこから侵入して感染を起こします。傷ができたときにはどんなことをすれば破傷風を予防できるでしょうか。

どんな傷は気をつけたほうが良いのか?

古くから、サビた釘(くぎ)が刺さって傷ができたときには破傷風に気をつけよう、という言い伝えがあります。サビ自体が破傷風を起こすことはありませんが、サビが着くような状態のくぎは細菌に汚染されている可能性があります。また、破傷風菌は土壌中にいるので、土いじりでできた傷も要注意です。

創部が腫れたりが出てきたりする場合には、何らかの細菌による感染が起こっている可能性が非常に高いです。破傷風だけでなく、蜂窩織炎壊死性軟部組織感染症などが考えられます。

傷口にはどういう処置をすればよいのか?

傷ができたときにまず最初にやるべきことは、傷口を洗うことです。日本の水道水は衛生面で非常に優れているため、水道水で洗うのが一番良いです。特に傷が深い人や汚れたものによって傷ができてしまった人は、水洗したうえで医療機関を受診して受傷の状況を説明してください。

また、受診せずに少し様子を見ることを選択した人も、傷口が次のような状態になったら創部の感染を考えなければならないので注意してください。

  • 傷口やその周囲が赤い
  • 傷口やその周囲が腫れている
  • 傷口から膿が出てくる

これらの症状が出てきた人は、一度医療機関で診てもらってください。特に症状が急速に悪化する場合は、できるだけ早く医療機関にかかる必要があります。

破傷風が疑われた場合には入院治療が必要か?

破傷風の治療には入院が必要です。破傷風は非常に致死率が高い病気で、治療を行っても20-50%ほどの人が亡くなると言われています。

破傷風に対しては、薬物治療(抗破傷風ヒト免疫グロブリン、破傷風トキソイド、抗菌薬、抗けいれん薬など)や創部の治療、人工呼吸管理などが行われます(詳しい治療に関しては「破傷風の治療と予防について」を参考にしてください)。これらの治療は入院で行われるものですので、破傷風と診断された人が入院しないで済むことはほとんどありません。

また、破傷風が疑われる人も入院となることがほとんどです。破傷風は神経を冒す重病ですので、症状が出たらすぐに対応する必要があります。そのため症状がほとんどない人も入院して様子を見ていくことになります。

破傷風かもしれないと思ったら何科を受診すればよいのか?

破傷風は細菌感染症です。感染症の専門家は感染症内科であるため、感染症内科があればそこを受診すれば間違いはありません。また、破傷風によって神経や皮膚の治療が必要になることがほとんどなので、神経内科や皮膚科を受診しても大丈夫です。近くに内科しかない場合であれば、内科を受診しても問題ありません。

いずれの人も、受診先で必ず次の3つを伝えるようにしてください。

  • 受傷したときの状況
  • 自覚する症状とその程度
  • ワクチンの接種状況

これらの状況次第で破傷風の治療方法が変わってくるので、非常に大事な情報になります。

破傷風の予防接種はいつ何回受ければ良いのか?

破傷風の予防接種は複数回受けなければなりません。日本国内では破傷風を含む4種類の感染症に対するワクチン(四種混合ワクチン)が定期接種となっています。四種混合ワクチンは生後3, 4, 5ヶ月の時に1回ずつ計3回受けて、生後12−18ヶ月でもう1回受けるスケジュールになります。これに加えて、11歳になった時にも破傷風を含む二種混合ワクチンを受けることが勧められています。追加のワクチンを受けることで、ブースター効果が働き、破傷風の予防効果が高まります。

参考:予防接種のスケジュールに関するコラム

破傷風の予防接種は大人も受けたほうが良いのか?

ワクチンを正しく受けても、時間とともにその予防効果は低下していきます。これをセカンダリワクチンフェイラー(secondary vaccine failure)といい、どのワクチンでも起こることです。しかし、その効果減衰速度はワクチンによって異なり、破傷風の場合にはワクチンを接種してから10年ほどで感染しやすくなると言われています。つまり、正しく接種すればほぼ100%の予防効果がある破傷風のワクチンですが、接種してから10年以上経てばその効果も100%ではなくなるということです。

現在のワクチンスケジュールでは、破傷風感染者を除くと1歳あるいは11歳のときに打つのが最後です。つまり、1歳にワクチンを打った人は11歳くらいから、11歳にワクチンを打った人は21歳くらいから、破傷風に対する予防効果が低下してきます。

ワクチンは一度打てば大丈夫というものではありません。上で述べた通り、破傷風の予防接種の効果は遅くとも21歳時には低下してきているので、本来は大人も破傷風のワクチンを追加接種したほうが良いです。その後10年ごとに追加接種を行っていけば破傷風にかかることはほとんどなくなります。特に土いじりをする人や傷ができやすい職業の人は10年ごとの接種を行うようにしてください。

破傷風の予防接種に副作用はあるのか?

予防接種には副反応があります。副反応とは一定確率でどうしても起こってしまう事象のことです。四種混合ワクチンで気をつける必要がある主なものは、接種した部位が腫れることとしこりができることです。また、痛みを伴うこともありますが、これらの副反応は数日以内に消えることがほとんどです。

ワクチンは、打つと一定確率で副反応が出る一方で、感染症を予防する効果が高いと判断されたものが使われています。破傷風はかかってしまったら高確率で命を落とす病気です。予防接種をうまく使って、感染の予防を心がけましょう。

参考文献
・Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases 8th edition
国立感染症研究所ホームページ「破傷風」(2018.6.27閲覧)