ねっちゅうしょう
熱中症
高温環境にいることで身体にさまざまな変調をきたした状態
10人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2019.02.21

熱中症の対策や処置について

熱中症は日常の工夫で予防できます。また、熱中症になったとしても軽症であれば適切な対処で回復します。ここでは熱中症対策や熱中症になった際の処置について説明します。

1. 自分でできる熱中症対策について:水分摂取や食べ物の工夫、対策グッズの利用

熱中症は重症化すると命を落としかねないものです。しかし、日常生活のちょっとした工夫で防ぐことができます。ここでは自分でできる熱中症対策を中心に説明します。

暑さ指数をチェックする

熱中症は高温・多湿の環境下で起こりやすいです。気温や湿度は熱中症の起こりやすさの目安にはなりますが、熱中症予防により適した指標として「暑さ指数」〔WBGT(湿球黒球温度):Wet Buile Globe TEmperature)〕があります。暑さ指数は気温・湿度・周辺の熱環境の3つから算出されます。

また、環境省からは「暑さ指数」の数値ごとに「日常生活」や「運動」に関する指針が示されており、その日の熱中症対策の参考にすることができます。外出前に「こちらのサイト」をチェックして、熱中症を起こしやすい日は念入りに対策をしてください。

熱中症になりやすい状態に注意する

「朝食を抜く」、「二日酔い」、「作業の初日」などの条件にあてはまる人は熱中症になりやすいことが知られています。暑い日に屋外での活動がある場合は、朝食はきちんと食べて前日には飲酒を控えるまたは少量にするようにしてください。また、屋内外に限らず高温多湿になりやすい環境での作業の初日は、身体が慣れていないので熱中症を起こしやすいです。本人が積極的に休むのは難しいことがあるので、周りの人は適宜涼しい場所での休憩や水分の補給などを行えるように配慮してください。

熱中症になりやすい状況を回避する

熱中症を起こしやすいのは次のような場所です。

  • 直射日光が強い場所
  • 風通しが悪く熱がこもりやすい場所
  • 温度と湿度がともに高い場所

上に挙げた場所を避けるのが最も良いですが、仕事などの理由で避けられない人もいると思います。その際には、少しでも涼しくなるような工夫をしてください。具体的に言うと、直射日光が多い場所では日陰で過ごしたり、帽子をかぶって直射日光をさえぎるなどの工夫をしてください。また、風通しが悪くドアや窓を開けても熱がこもってしまう場合には、扇風機を利用したり、適宜休憩時間を設けて涼しい場所に移動するといった方法も有効です。

また、エアコンが使える場合は、我慢せず利用してください。エアコンを使う際には適温が気になるところです。冷やし過ぎも身体には良くないので、「クールビズ」を参考に室温28℃を目安としてくださいい。ただし、この温度はエアコンの設定温度ではなく、実際の室温を指している点に注意が必要です。室温と設定温度は必ずしも一致しないため、エアコンの設定温度を28℃で固定すると、室温が思いもよらぬくらい上がってしまい熱中症対策の効果が薄くなることもあります。

また、夜であっても熱中症には注意が必要です。特に寝ている間は、気づかないうちに汗をたくさんかいていることがあるので、夜間の温度や湿度が上がりすぎないような対策をして過ごしてください。

暑さに身体を慣らす:暑熱順化

暑さに身体が慣れていないと熱中症を起こしやすいです。特に、気温が急に上がった日には熱中症になる人が増えます。急な暑さによる熱中症は、前もって上手に身体を暑さに慣らしておくことで予防ができます。この身体の準備を暑熱順化といい、「やや暑い環境で少し身体に負担がかかる運動を1日30分間、2週間行う」と身体が暑さになれやすくなると考えられています。例えば、本格的な夏が始まる前に、通勤や通学時に早歩きをするだけでも暑熱順化につなげることができます。日常生活にこのような工夫を取り入れてみてください。ただし、無理は禁物なので、暑熱順化は体調と相談して行うようにしてください。

水分摂取や食事の工夫をする

汗には体温を下げる機能があります。暑い日には体温調節がしやすいように、水分を十分にとっておき、汗をかきやすくするようにしておくことが重要です。 熱中症になりやすい高温多湿の環境では、誰でも水分が不足しがちです。一定時間ごとに水分摂取の時間を設ける、手元に常に飲み物をおいておくなどの工夫で意識的に水分を摂取してください。

また、汗には水分だけではなく、塩分などのミネラルも含まれています。汗をたくさんかく環境では水分だけではなく塩分も失われることから、単なる水だけではなく塩分も摂取するとなおよいです。塩分はスポーツドリンクにも入っていますが、経口補水液(OS-1®)の方が多く含まれているので、熱中症対策には向いています。

飲料だけではなく、梅干しや味噌汁などの食品から塩分を補うことも有効です。ただし、高血圧症や心臓の病気、腎臓の病気の人が塩分を摂りすぎると持病の悪化が懸念されます。熱中症が心配になる時期の前に、どの程度の塩分摂取が適切かかかりつけのお医者さんと相談してください。

対策グッズを利用する

熱中症の対策グッズを上手に使うと、予防につながります。グッズといっても特別なものではありません。例えば、日差しが厳しい場所に行く場合には、帽子や日傘が有効ですし、市販されている冷却シートを首などに貼っても効果があります。また、塩分を手軽にとれる飴も市販されているので、汗をたくさんかいた時に水分摂取とともに舐めるとより高い効果が期待できます。

2. 熱中症になったらどうすればいいのか?上手な治し方や覚えておきたい応急処置について

熱中症は医療機関での治療が必要になることがありますが、一方で自分たちでできることも多くあります。ここでは熱中症になった人にまず行うべきことや医療機関にかかった方がいい状態について説明します。

身体を冷やすことと水分の摂取が重要

熱中症になった人にはまず身体を冷やして、水分・塩分の摂取を促すようにしてください。それぞれの上手な方法を説明します。

■身体の上手な冷やし方

まず身体を風通しのよい涼しい場所に移動させてください。その後、重ね着をしている場合は脱がして、次の身体の部位を重点的に冷やしてください。

【身体を効果的に冷やせる部位】

  • 後頭部
  • 両側の前頸部(首の両側前よりの場所)
  • わき
  • 鼠径部(足の付根)

上に挙げた部位に氷枕や保冷剤を当ててください。また、可能であれば肌の上に薄いガーゼを置いて霧吹きで水を吹きつけると、身体の表面の気化熱が奪われるのでさらに短時間で体温を下げることができます。水風呂にも効果が期待できますが、意識がはっきりとしないときに行うと、溺水の危険があるので無理に行うことは避けたほうがよいです。

■水分の上手な摂り方

大量の汗をかいている人は水分だけではなく塩分も喪失しています。水分だけでなく塩分も同時に補うことが大切です。経口補水液が理想ですが、ない場合にはスポーツドリンクで代用してください。また、身体を中から冷却する効果を期待して、飲み物はできるだけ冷えているもの方が望ましいです。

水分摂取は重要ですが、意識朦朧(いしきもうろう)としている人に水分を飲ませると、むせ返ってしまうことがあるので、無理には飲ませないようにしてください。水分摂取ができない人には点滴が必要なので、医療機関の受診を急いでください。

■必ず誰かが様子を観察

熱中症になると時間の経過とともに、症状が重くなっていくことがあります。症状がよくなったように見えても一人にしないで必ず誰かが付き添って、ときおり声をかけて意識の状態を確認してください。「眠り込んでしまう」、「意味不明な言動をする」といった症状は悪化のサインです。手助けしてくれる人を集めて急いで医療機関に連れて行くか、救急車を呼んでください。

熱中症になった当日や翌日は無理は禁物

熱中症になったその日と翌日は安静を続けるようにしてください。軽症の熱中症は数十分から数時間で回復することが多いですが、時間差で悪化することがあります。熱中症になったその日は身体を休めることに集中するのがよいです。具体的には、入浴はシャワー程度にとどめて、飲酒は避けてください。翌日はほとんどの人がもとの状態に近くなっていますが、それでも頭痛やだるさが残っている人は無理をせずに身体を休めてください。

病院を受診した方がいいのはどんなときか

熱中症になっても軽症であれば、医療機関で治療を受けなくても回復が見込めます。一方で中等症や重症の人は医療機関での治療が必要です。(それぞれの症状については「熱中症の症状」を参考にしてください。)具体的な目安として、「水分が口から摂れない人」や「対処でも症状がよくならない人」は医療機関を受診した方がよいです。

また、意識を失った人や全身が痙攣している人はすみやかに医療機関で治療を始めなくてはなりません。必要に応じて救急車を呼ぶことを検討してください。

病院では何科を受診すればいいのか

熱中症が疑われる人は救急科や内科を受診してください。中等症であれば、一般的な医療機関で用意されている点滴で対応することができます。重症の場合は集中治療ができる医療機関で対応してもらうことが望ましいのですが、受診した医療機関で集中治療ができなくても点滴などの初期治療と並行して、医療機関を移ることができます。まずは治療を早く開始することを重視してください。

3. 熱中症のQ&A

熱中症に関してよく耳にする疑問について説明します。

熱中症で死亡することはあるのか

熱中症では死亡することがあり、近年では国内で年間で500人から1700人程度の人が熱中症で亡くなっています。特に猛暑と言われる年は死亡者数が急増する傾向があるので注意が必要です。

子どもや高齢者は熱中症になりやすいのか

子どもや高齢者は熱中症になりやすいことが知られています。それぞれの理由について説明します。

■子ども

子どもは体温を調節する機能がまだ発達しきっていないために、大人に比べて体温が上昇しやすいです。また、喉の渇きや体調の変化といった症状を周囲にうまく伝えられないことも熱中症を起こしやすくしています。 子どもの熱中症に早く気づくには、日頃から周りの大人が様子を観察することが大切です。暑い中で「活気がない」「ぐったりしている」といった様子は熱中症を起こしている可能性があります。室温や水分の摂取の具合を確認して、必要な対応をしてください。

■高齢者

高齢者は、喉の渇きに対する感覚が鈍っており、暑さによる不快感なども感じにくくなっています。この身体の変化のために、高齢者は熱中症になりやすいと考えられています。また、一般的な熱中症は屋外で起こりやすいのですが、高齢者は室内でも熱中症を起こしやすい点に注意が必要です。高齢者の熱中症を予防するには、室内でも適温を保つこと、一定間隔で水分摂取を促すことが重要です。

熱中症で鼻血が出ることがあるのか

熱中症になると鼻血が出ることがありますが、必ずしも出る症状ではありません。鼻血が出ているか出ていないかよりも、こちらのページにある症状を熱中症の参考にしてください。鼻血は特に原因なく出ることがありますが、鼻血が頻回に出る場合は耳鼻科を受診して原因を調べてもらってください。

熱中症に効果のある薬はあるのか

熱中症を治せる飲み薬はありません。中には体温を下げる目的で解熱剤を使おうとする人がいますが、熱中症の高体温に対する効果は期待できないばかりか、腎臓などの機能を低下させる副作用があるので避けてください。

【参考】

・「標準救急医学」、(日本救急医学会/監修)、医学書院、2014年
・「Step Beyond Resident」、(林 寛之/著)、羊土社、2006
熱中症診療ガイドライン 2015
厚生労働省人口動態統計