ねっちゅうしょう
熱中症
周囲の気温の上昇や過度の運動により、体温が上昇して発生する健康障害のこと
10人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2018.10.05

Beta 熱中症のQ&A

    熱中症の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    熱中症の原因には大きく分けて3つあります。

    1. 体温の上昇
    2. 脱水
    3. ミネラル(特に塩分)の欠乏

    これらが関係し合って、だるさやめまい、その他の症状が出る病気が熱中症です。軽くふらつく程度の症状で済む場合もありますが、重症化すると命に関わる場合もあります。また水分を十分に摂取していても、塩分が不足していると熱中症を発症しやすくなります。塩分を含まない水やお茶などは、飲めば飲むほど汗をかいて塩分を失うため、大量に水、お茶を飲んだことでかえって熱中症を発症しやすくなることもある点に注意が必要です。

    また、熱中症に特に多いパターンとしては以下の2つのものが知られています。

    1. スポーツや肉体労働中の発症。特に若い男性に多い
    2. 運動以外の原因で、暑い屋内などでの発症。特に高齢の女性に多い

    若い男性が運動中に起こす熱中症はイメージがつきやすく、現場で正しく診断がついて初期対応がなされることが多いようです。したがって、これらは軽症で済むケースが多いと言えます。その一方で高齢の方が暑い自宅で徐々に脱水状態になり、周囲の人に気づかれないうちに悪化するというのが、重症化しやすいパターンであるため注意が必要です。

    熱中症では、どんな症状が出るのですか?

    熱中症では、重症度をI度(軽症)からIII度(重症)の3段階に分けて表現します。それぞれの重症度でよくある症状は以下の通りです。

    • I度:めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(つること)
    • II度:頭痛、嘔吐、だるさ、脱力感、集中力や判断力の低下
    • III度:ぼーっとする、意識が低下する、全身がけいれんする

    熱中症は、どのように診断するのですか?

    熱中症は、特別な検査ではなく、それまでの状況や症状(体温、発汗、意識状態など)から診断されます。体温測定では、通常行う脇の下・耳・口などで測定するものとは別に、深部温(または深部体温)と言って、肛門から体温計を入れて体温測定を行う場合があります。

    熱中症になった直後には、応急処置として脇の下を氷で冷やされていたり、そうでなくとも汗で皮膚表面の温度だけが低下している場合があります。そのような場合に脇の下で体温を測定すると、正しい体温が反映されないことがあり注意が必要です。深部温は常に正確な体温を反映し、脇の下で測定した体温と大きく差が出ることがあります。

    熱中症の治療法について教えて下さい。

    熱中症の治療は大きく分けて3つの軸からなります。

    1. 体の冷却
    2. 水分と塩分の補給
    3. それぞれの症状や臓器障害に応じた対症療法

    対症療法としては、腎不全に対して点滴を行ったり、DIC(播種性血管内凝固)と呼ばれる病態に対してその治療薬を使用したりすることがあります。冷却と、水分・塩分の補給については、次項移行でより詳しく説明します。

    熱中症が多い時期はいつですか?

    例年、7月中旬から8月上旬にかけて熱中症のピークを迎えます。気温、湿度、風の有無、日の強さなどが発症率に大きく影響します。

    一方これよりも早い時期に関しては、体がまだ高気温に慣れていないため、7-8月の暑さのピーク時よりも低めの気温でありながらも、熱中症が相対的に発生しやすいことが知られています。

    参考:「熱中症診療ガイドライン2015 日本救急医学会

    熱中症が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    最重症であるIII度熱中症の中でも、重症のものではDIC(播種性血管内凝固)という病状が起こります。DICでは血液中に小さな血のかたまりが出来て、それが全身に炎症を引き起こしたり、様々な出血症状を引き起こしたりします。また、肝臓や腎臓の機能が低下して、血液中の毒素や不要な物質を分解・排泄することができなくなります。神経の機能異常によって意識状態が悪くなったり、全く意識がなくなってしまうこともあります。

    このように、複数の臓器に強い異常が起きている状態を多臓器不全と呼びます。多臓器不全が生じた最重症の熱中症では、入院の上で集中治療を行っても救命が困難な場合があります。

    熱中症の、その他の検査について教えて下さい。

    熱中症で検査を行うのには、大きくわけて2つの目的があります。具体的には、以下のような目的で検査を行います。

    1. 熱中症の診断の下で、その重症度を確認するため
      • 尿検査:熱中症によって脱水になっていないか(尿が濃くなっていないか)、腎臓や肝臓の異常が尿中にあらわれていないかを確認します
      • 血液検査:腎臓や肝臓の機能低下がないかどうか、血液を固める凝固機能や血小板の数に異常がないかどうかを確認します
         
    2. 熱中症に似た別の病気を診断(もしくは否定)するため
      • 想定している病気によりますが、例えば肺炎や尿路感染症など体温が上がる別の病気を調べるためには、胸のレントゲンや尿検査、血液検査などを行います。意識障害の原因として熱中症以外のものを調べるのであれば、頭部CT検査を行う場合もあります。

    熱中症の応急処置は、どのようにすれば良いですか?

    軽症の熱中症に対する現場での応急処置としては、まずそれ以上の体温上昇を避けることが肝心です。直射日光を避け、風通しの良い場所もしくは冷房の効いた室内へ移動します。その上で、太い血管がある場所(首、脇の下、足の付け根)を冷やすと、体の表面だけでなく体全体を効率良く冷やすことができます。扇風機は、冷たい風を送るだけでなく、汗を蒸発させる際に体の熱が発散するため有効です。

    なお、重症熱中症の場合には、冷却法のうち医学的に推奨されている方法とされていない方法があるため、意識がない、反応がにぶいなどの症状があれば、現場での応急処置をあれこれ工夫するよりも前に、速やかに病院を受診するか救急車を呼ぶことが肝心です。病院内ではウォーターマットを使用したり、血管に太い管を入れて血管内の温度を直接下げる機器を使用したりするような場合があります。

    熱中症は、毎年どのくらい発生する病気ですか?

    2013年の国内データ(診療報酬明細)によると熱中症関連の診断を受けた人数は41万人で、そのうち入院数が3万6千人(全体の8.7%)、死亡者は550人(全体の0.13%)でした。

    参考:「熱中症診療ガイドライン2015 日本救急医学会

    上記数値の中には、軽症のケースもある程度含まれているとは言え、これは少なくとも病院を受診した人に限られたデータです。実際に熱中症を発症して、現場での応急処置のみで対応できた数も含めると、41万人という数値は全体の一部に過ぎないと言えます。熱中症は、誰にとっても他人事ではありません。

    熱中症と診断が紛らわしい病気はありますか?

    若年者の熱中症の場合には、それまでの経過(炎天下で運動をしていたなど)から診断が容易なケースが多いです。一方で高齢者の熱中症は、体温が上昇する他の病気や、意識がもうろうとする他の病気が数多くあるため、しばしば診断が困難となります。

    診断が紛らわしい病気は、その時の症状次第ではありますが、頻度が高いものを例として挙げると、肺炎、尿路感染症、慢性硬膜下血腫、低ナトリウム血症などがあります。これらの病気が元々あって、それが原因で熱中症を起こすこともあるため、そのような場合には余計に診断がしづらくなってしまいます。

    熱中症を予防するためにできることはありますか?

    熱中症予防のために、水分はもちろんですが、それに加えて塩分を適切に摂ることが重要です。水分を十分に摂取していても、塩分が不足しているとそれだけで熱中症を発症しやすくなります。

    塩分を含まない水やお茶などは、飲めば飲むほど汗をかいて塩分を失うことにつながります。したがって大量に水、お茶を飲んだことでかえって熱中症を発症してしまうことがある点にも注意が必要です。水、お茶よりと比べると、スポーツドリンクの方が塩分を含んでいて望ましいと言えます。

    また熱中症の予防ではなく治療という意味では、スポーツドリンクでもなお塩分が不足している(かつ、余計な糖分が含まれている)点に留意しなければなりません。だからと言って飲むのを控えてしまっては逆効果ですが、本来であればより塩分濃度の高いものが適切と考えられます。スポーツドリンクよりも高濃度の塩分を含むものとしては、経口補水液と呼ばれる飲料があります。国内で流通しているものとしてはOS-1が有名です。

    スーパーやコンビニなどでは「塩あめ」と銘打った菓子類も販売されていますが、1粒に含まれる塩分は0.05-0.1g程度のものが多いようです。炎天下で運動して大量に汗をかくような場合には、たとえ1袋(20粒で計算)全てを摂取してもスポーツドリンク1リットル分と同程度の塩分しか含まれていないことから、塩あめを数個食べただけでは決して十分とは言えません。

    熱中症では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    III度熱中症では(場合によってはII度でも)、入院が必要となる場合があります。多くの人は入院の上で1-2日間点滴を行えば体調が良くなることが多いですが、最重症の熱中症の場合、集中治療室で、救命のための治療が必要となることがあります。

    入院するほどでもないが血液検査の値(特に腎臓や肝臓の値)に異常がある場合などは、安静にして水分、塩分摂取に努めた上で、翌日または数日後に外来再診となることがあります。その数日間で腎臓、肝臓の機能が回復したかを確認することが目的です。

    熱中症と熱射病の違いについて教えて下さい。

    従来、熱中症は症状によって、熱射病、熱疲労、熱失神、熱痙攣などと呼ばれていました。しかしこれらの分類が正確に重症度を反映しないため、現在では「熱中症」という病名に統一されました。その中で重症度をI度(軽症)からIII度(重症)の3段階に分けて表現されることとなっています。重症度ごとの目安は、以下の通りです。

    熱中症の分類

    • I度:現場で対処可能
    • II度:医療機関の速やかな受診が必要
    • III度:採血などの検査を行い、場合によっては入院や集中治療が必要

    参考:「熱中症診療ガイドライン2015 日本救急医学会

    熱中症で、後遺症が残ることはありますか?

    III度(重症)熱中症では、意識や精神、神経に関連した後遺症が残ることがあります。小脳失調(歩く際にふらつく、手足の機敏さが低下するなど)や記憶の障害、パーキンソン症候群の発症などがあり、これらは短期的に完治する場合もありますが、後遺症として残ってしまう場合もあります。

    また同様に最重症の場合には、腎臓の機能が低下してしまい、入院中にある程度は回復したとしても、将来的に血液透析が必要となってしまうことがあります。