2015.07.27 | コラム

子どもの熱中症について〔小児科に行く前に〕

子どもは熱中症になりやすい!?
子どもの熱中症について〔小児科に行く前に〕の写真
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子どもは大人よりも熱中症になりやすい特徴があります。保護者の方がしっかりとお子さんの様子を観察し、適切な環境下で遊ばせること、適切な水分補給をすることで予防できます。重度の熱中症は命を落とす危険もあるので、注意しましょう。

◆熱中症とは?

人間の細胞は、ある一定範囲内の温度でなければ活動できません。そのため気温が高いときは汗をかき、体温が一定の範囲より上昇しないように調節します。

汗には塩分(ナトリウム)やカリウムなども含まれ、汗を大量にかくと水分だけでなく、これらもからだの外にたくさん出てしまいます。体内のナトリウムやカリウムは電解質(イオン)となり、筋肉の収縮や神経の伝達など、からだのさまざまな機能の維持にかかわっています。そのため汗をたくさんかくと、それ以上電解質を失わないように汗が止まり、体温調節ができなくなって熱中症がおこります。

高温多湿の環境下では汗がたくさん出るので、水分や塩分を適切に摂取しないと熱中症になりやすいのです

子どもは次の理由により、熱中症になりやすいといわれています。

  1. 体重に占める体液の割合が大人よりも高く、汗として水分が失われやすい。
  2. 皮膚や呼吸などから常に一定量失われる水分(不感蒸泄量という)が多い。
  3. 腎臓の働きの一つである「必要な水分、塩分を再吸収する機能」が未熟である。
  4. 新生児や乳児は、自らの意思で水分や電解質の摂取ができない。

ですから、熱中症予防のためには、親や周りの人が気を配ることが大切です。

 

◆意識がしっかりしているか確認

熱中症は、重症度に応じて次の3段階に分けられています(日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」より)。

  • Ⅰ度(軽症:熱けいれん・熱失神)……めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗のほか、筋肉痛やこむらがえりがおこることもある。意識はある。
  • Ⅱ度(中等症:熱疲労)……頭痛、嘔吐と、倦怠感、集中力や判断力の低下がみられる。
  • Ⅲ度(重症:熱射病)……意識障害やけいれん発作などがみられる。症状が重くなると汗が出なくなって皮膚が乾燥し、体温が上昇して40度を超えることもありますが、重症でもそれほど高温にならないこともあります。

熱中症らしき症状が出た場合には、風通しのよい涼しい場所(冷房の効いた室内が望ましい)へ移動し、服を脱がせ、水枕や氷のうでからだを冷やし(とくに首やわき、太もものつけ根など太い血管のあるところを冷やす)、風を送って、皮膚から熱が放散されるようにします。同時に水分と塩分を補給し、脱水状態を改善させます。Ⅰ度であればこうした応急処置で回復が期待できますが、改善しないときや、Ⅱ度、Ⅲ度のような症状がみられたときはすみやかに医療機関で治療を受けることが必要です

 

熱中症は予防が何よりも大切です。油断せず、下記の予防を心がけてください。

<子どもの熱中症を予防するために>

  • 屋外、屋内問わず、高温多湿のなかで長時間遊ばせるのは避けましょう。
  • 子どもがほしがらなくても、30分~1時間おきに水分をこまめに与えましょう。
  • 風通しのよい、涼しい衣服を選びましょう。外出時はつばの広い帽子をかぶせましょう。
  • 小さな子どもは地面からの照り返しの影響を強く受けるので、炎天下を長時間歩くのは避けましょう。ベビーカーの中も高温になるので要注意です。
  • 汗をたくさんかいたときは水やお茶ではなく、ナトリウムが多く、吸収されやすい経口補水液などを与えましょう。

 

【編集部注】

この記事は、「キャップスクリニック」のサイトで公開中の記事をもとに作成しています。

http://www.caps-clinic.jp/forparents

執筆者

白岡 亮平

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。