2016.07.17 | コラム

熱中症で下痢になることはある?

熱中症の症状・治療について
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この記事のポイント

1. 熱中症で下痢になることはある?
2. 熱中症の下痢以外の症状は?
3. 熱中症で下痢になった時の治療法とは?
4. まとめ

熱中症では下痢が出ることもあります。暑い日が続く時に、お腹がゆるくなり下痢になり、食あたりかとも思いながら、心当たりはない…そういう時には、熱中症かもしれません。熱中症の予防法、対処法について説明します。

◆熱中症で下痢になることはある?

暑い日が続くと、病院では熱中症の患者さんが増えます。

「ふらふらして、熱中症っぽいんです…」と自分で心当たりをもって来る方から、重症の方では全身の筋肉がつってしまって、痛みと吐き気で動けずに救急車で受診される方もいます。

 

でも、下痢をしている時に自分が熱中症だと思う人は少ないんじゃないでしょうか。熱中症で出ることがある症状の一つに下痢があります。少し緩いくらいの軟便だけでなく、水っぽい下痢が出ることもあります。真夏日に下痢で救急病院を受診する方が熱中症と診断されることはありえます。

熱中症で下痢になる原因には、汗をたくさんかいて、その後に水分を一気飲みすると、腸で水分を吸収しきれずに便が水っぽくなるといったことが考えられます。

熱中症は、体温が上がって体中の機能がうまく働かなくなってしまう状態です。熱中症は体温だけの問題ではなくて、脳から胃腸、肝臓、腎臓など、あらゆる内臓に影響をおよぼす病気です。そのため、次に説明するようにさまざまな症状が現れます。

 

◆熱中症の下痢以外の症状は?

熱中症の下痢以外の症状には、次のようなものがあります。

 

  • めまい、立ちくらみ
  • 吐き気、嘔吐
  • 筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り
  • 頭痛
  • だるさ、脱力感、集中力や判断力の低下

 

文字だけを見てもイメージが湧きにくいところですので、実際の患者さんの例(実際にいた方を参考に作った架空の人物)を見てみましょう。

 

中学3年生の男子が、日曜日の夕方に救急外来を受診しました

家族:「週末に野球部の練習があって運動してたんですけど、今日の午後から練習中にぼーっとしちゃってたみたいで…。監督から電話があって迎えに行ったんです。吐き気もあるっていうから連れて来ました」

本人:「頭がぼーっと…します…。……。はい…。」

家族:「こんな感じで、話しててもいつもと違うんですよ。」

これは典型的な熱中症です。集中力の低下と吐き気の症状は、よく見られる症状です。体温を測って熱があったり、このようにぼんやりとしている時には、現場での応急処置だけでなく受診が必要になります。

 

ではもう一つ、別のパターンを見てみましょう。

 

40-50代の女性が、日中に内科のクリニックを受診しました

本人:「なんかここ3-4日、全然食欲がなくて…。昨日からは下痢もしちゃってて、なんかお腹をこわしたみたいなんです。胃の薬か何かいただけませんか??」

医者:「なにか古いものや生ものは食べましたか?あと、夜は眠れてますか?」

本人:「悪いものは食べてないと思うんですけど…。ここ何日か熱帯夜が続いてるので、かなり寝苦しいです。まだ7月なのでクーラーは使いたくなくて。いつも朝起きると汗びっしょりです。ちゃんと寝れてないからかもしれないんですけど、立ちくらみも最近特にひどくて…」

こちらも熱中症がかなり疑わしい方です。

 

熱中症は、炎天下の運動だけで起こるわけではありません。暑い日に一気に熱中症になることもあれば、何日かかけてじわじわ熱中症になることもあります。ずっと屋内にいても、閉めきった部屋で冷房なくすごしていると熱中症になってしまいます。

寝ている間は水分補給ができませんから、10時間近く汗だけをかきながら、一滴も水分をとらないという状況が体に良くないことは、想像にかたくありません。

クーラーの使い過ぎは体によくありませんが、体が冷えすぎないように注意しつつ適切に冷房を使用することは、体を守るためにも大切なことです。

 

◆熱中症で下痢になった時の治療法とは?

では、実際に熱中症になってしまったときには、どうすれば良いのでしょうか。

 

  1. 軽いだるさや下痢、吐き気、筋肉痛の場合:まずは応急処置を試します
    • 涼しい場所へ移動して、体を冷やします。首や脇の下、太股の付け根など、太い血管がある部分を冷やすと効果的です
    • 水分と塩分補給をします。スポーツドリンクと、塩分の多い梅干しおにぎりが適していますが、食欲がないときには食塩を手のひらに出してなめるだけでも効果があります
    • 横になって体を十分に休めます
  2. 吐いてしまったり、頭痛や、頭がぼーっとするなどの症状がある場合:病院の受診が必要です
    • 嘔吐、頭痛、集中力の低下は熱中症の強い症状です
    • 応急処置は悪くはないのですが、病院の受診が遅れるくらいであれば、先に受診してしまうことをお勧めします。内科か救急科、小児科が適切ですが、あまりこだわる必要はありません

 

病院を受診した後には、強い熱中症の場合、点滴の治療をします。熱中症の点滴治療薬があるわけではなく、スポーツドリンクと同じような成分の点滴を行います。

飲んでも点滴をしても効果は変わらないのですが、吐き気が強くてたくさんは飲めない、という人は、点滴することで十分な量の水分・塩分補給ができます。

また、入っている成分はスポーツドリンクと同じですが、病院の点滴の方が塩分がより多く含まれています。飲むと「ちょっとしょっぱいなぁ」と感じるくらいの濃度(生理食塩水)が、体にとってはちょうど良いためです。もしご自身でドリンクを作られる場合には、少し塩気が強いくらいのものが本当は適切です。

目安は、水1リットルに塩9グラムになりますが、感覚的なところとしては、「コップ1杯なら我慢して飲めなくはないが、それでも砂糖を入れないとつらい」、でも「海水ほどの塩気はない」という程度です。

そして、下痢そのものの治療はあまり必要なく(よい手段があるわけではなく)、このような水分・塩分補給をして体を休ませているうちに、自然と治ってくるのを待つことになります。

 

◆まとめ

熱中症について、下痢という症状を中心にまとめました。「下痢と熱中症」と言われてもあまり結びつきを感じにくいと思うのですが、だからこそ知らないと診断や対処が遅れてしまいがちです。

熱中症は悪化すると入院が必要になりますし、何よりも、正しい知識をもつことで予防・早期対応ができる病気です。熱中症が悪化して辛い思いをしないで済むよう、このページも参考のひとつにしてください。

 

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2019年9月4日ににメドレー編集部で一部回筆修正しました。

執筆者

沖山 翔

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。