熱中症の初期対応のポイントを押さえよう:あくび、頭痛、足がつるなどの疑わしい症状が出た時の対策

熱中症は毎年数十万人がかかる病気です。そのうち数百人以上が亡くなり、多い年には千人以上が命を落とします。熱中症で危険な状態にならないためには、初期対応が適切にできるかどうかがとても重要です。とっさの対応ができるように、これから説明する5つのポイントを押さえてください。
熱中症を疑ったほうがいい症状とは?
初期対応のポイントの前に、簡単に熱中症を疑う代表的な
重症度 | 症状 |
軽症 | めまい 筋肉痛 こむら返り あくび 発汗 皮膚の張りの低下 |
中等症 | 頭痛 発熱 嘔吐 脱力感 口の渇き 集中力や判断力の低下 脈が速くなる |
重症 | 高熱 けいれん |
暑い環境下でこれらの体調不良がみられたら、熱中症の可能性が考えられるので、これから説明していく対応をとるようにしてください。なお、より詳細な症状の説明は「こちらのページ」になります。もう少し詳しく知ってから読み進めたい人は目を通してみてください。
熱中症の初期対応のポイント①:意識状態を確認する
熱中症が疑われる人がいたら、まずは声をかけて意識状態を確認してください。呼びかけがないと目を開けない場合や、呼びかけに反応がない場合は、危険な状態です。すぐに医療機関に運ぶ手配をし、並行して以下の応急処置をしてください。一方で、意識がある場合は、以下の応急処置をまずやってみて、回復に向かうかどうかを観察してください。
熱中症の初期対応のポイント②:涼しい場所に連れて行く
熱中症になった場合は一刻も早く体を冷やす必要があります。患者さんを涼しい場所に移動させてください。クーラーが効いた室内が理想ですが、難しければ風通しのよい日陰でもよいです。
熱中症の初期対応のポイント③:衣服を緩め、身体を冷やす
身体にこもった熱を放散させるために、衣服をゆるめます。例えば、ネクタイやベルトをしている場合は外してください。そして、氷嚢やアイスノン、冷たいペットボトルなどを身体に当てて冷やしていきます。太い血管が皮膚の表面近くを通っている、首筋・脇の下・太ももの付け根に当てると効果的です。その他では、身体に水を吹きかけて、うちわであおいだり扇風機をあてる方法も身体を冷やすのに有効とされています。どちらの方法からでもよいので、早く実行できそうなほうから取り掛かってみてください。
熱中症の初期対応のポイント④:水分を摂取してもらう
水分を摂取することも大切です。一方で、意識がない状態で水分を摂取させようとするのは危険なので控えなければなりません。意識がはっきりとしていることが確認できた場合に行ってください。 熱中症を起こした場合は塩分も不足している可能性が高いので、水分補給には水分と塩分がともに吸収しやすいように作られた経口補水液が理想的です。すぐに準備できない場合は、スポーツドリンクでも代用可能です。 むせたり誤嚥をしないように、少しずつ飲んでもらってください。水分摂取ができなかったり、飲めても吐いてしまう場合は、点滴で水分を補う必要があるので、医療機関に向かうようにしてください。
熱中症の初期対応のポイント⑤:必ず誰かが付き添う
初期対応によって熱中症がよくなることがある一方で、適切に初期対応をしたにも関わらず症状が悪化する場合があります。例えば、会話ができていた人が意識をなくしたり、突然嘔吐したりなど様々なケースが考えられます。症状が悪化した場合、すみやかに医療機関につれていかなければなりません。ですので、ひと通り初期対応をしたあとも誰かがそばにいて、状態が変化していないかどうかを確認するようにしてください。
暑い時期には熱中症はありふれた病気ですので、多くの人がいつでも初期対応できるように知識をもっておくと、熱中症による犠牲者を減らすことに繋がるかもしれません。
また、熱中症というと屋外で起こる病気というイメージがあるかもしれませんが、屋内で熱中症になる人も決して少なくありません。暑い日は空調機を使って室内を適温にするように気をつけてください。
今回のコラムが役に立つと思ってくれた人は家族や友人にもこのコラムを紹介してもらえれば幸いです。
なお、予防策については「熱中症の詳細情報:自分でできる熱中症対策について」や「熱中症予防のためには、運動を控えることも必要」を参考にしてみてください。
執筆者
・日本救急医学会,「熱中症診療ガイドライン2015」
・環境省, 「熱中症環境保健マニュアル 2018」
(2020.6.24閲覧)
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。