ねっちゅうしょう
熱中症
高温環境にいることで身体にさまざまな変調をきたした状態
10人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2019.02.21

熱中症の治療について

熱中症の治療の基本は「身体の冷却」と「水分・塩分の摂取」です。軽症であれば、医療機関に行かなくても適切な対処で多くの人は回復します。一方で、中等症や重症の人は医療機関での治療が必要になります。ここでは熱中症を「軽症」「中等症」「重症」の3段階の重症度に分けてそれぞれの治療を説明します。

1. 重症度で分けた熱中症の治療

熱中症は重症度によって治りやすさが異なります。軽症の人のほとんどは、医療機関に行かなくても回復します。一方で、中等症から重症の人は医療機関での治療が必要になります。

軽症の治療

治療の説明に入る前に症状について説明します。軽症の人には次のような症状が現れます。

  • めまい
  • 筋肉痛
  • こむら返り
  • 口の渇き
  • 皮膚の張りの低下

熱中症の治療の基本は「身体の冷却」と「水分・塩分の摂取」の2つです。軽症であれば医療機関でなくてもできます。具体的には涼しい場所に患者さんを移して、首や脇を冷やしながら水分を飲ませます。熱中症が疑われる人には、まずこの対応を行うようにしてください。数分から数十分で回復することが多いですが、回復した後も無理をせずに涼しいところで水分と塩分の摂取は続けるようにしてください。

身体の冷却と水分・塩分の摂取の上手なやり方は「熱中症の対策や処置」を、軽症時の症状の詳しい説明は「熱中症の症状」を参考にしてください。

中等症の治療

中等症の人の症状は次のものです。

  • 頭痛
  • 発熱(微熱)
  • 嘔吐
  • 倦怠感
  • 脱力感
  • 集中力や判断力の低下
  • 頻脈(脈が早くなること)

中等症の治療は軽症のとき同じく、まず「身体の冷却」と「水分・塩分の摂取」を行います。軽症時と違うのは、身体から失われている水分・塩分の量が多い点と、吐き気や倦怠感のために自分の力で水分・塩分の摂取が難しい点です。水分摂取が難しい場合は点滴で補わなければなりません。すぐに医療機関に連れて行ってください。

重症の治療

重症の人は主に次のような症状が現れます。

  • 傾眠(眠りこんでしまうこと)
  • 意識障害
  • 発熱(高熱)
  • 全身の痙攣(けいれん)

重症の人では臓器に影響が出始めています。血液検査を行い肝臓や腎臓の機能を中心に詳しく調べられます。また、重症の人の身体からは多くの水分・塩分が喪失していて、臓器に十分な栄養を届けられるだけの血液が不足しています。この血液量の不足を補うために、十分な量の水分と塩分が点滴されます。

また、すでに臓器の機能が低下している場合は、ダメージを抑えるために臓器を保護する治療を行ったり、臓器の代わりとなる治療を行います。例えば、肝臓の機能が低下している場合には、肝庇護薬を使い、腎臓が十分に機能していない場合には、腎臓の代わりとして血液透析(血液中の老廃物を機械で濾し取る治療)を行います。

重症時の症状の詳しい説明は「このページ」を参考にしてください。

2. 熱中症の治療ガイドラインはあるのか

熱中症には日本救急医学会が作成した「熱中症診療ガイドライン」があります。ガイドラインは治療の成績や安全性の向上を目的にして作られており、過去の治療の報告を根拠に、最適だと考えられる検査や治療の方法が記されています。お医者さんはガイドラインを踏まえることで、素早く検査を選んだり、治療を行ったりすることができます。

一方で、ガイドラインに記されていることが最適ではないこともあります。医学は日進月歩で有効な検査や治療がみつかります。進歩を反映するために、ガイドラインは数年毎に改定されていますが、それでも改定前に新しい治療が浸透することや不明だった治療の効果が明らかになり治療法が変わることもあります。 また、ガイドラインは患者さん一人ひとりの身体の違いを鑑みて作られているわけではありません。一人ひとりに最適な治療を行えるように、最新の知見や患者さんの状態を踏まえてアレンジして使うことで、ガイドラインはその力をより発揮することができます。

【参考】

・「標準救急医学」、(日本救急医学会/監修)、医学書院、2014年
・「Step Beyond Resident」、(林 寛之/著)、羊土社、2006
熱中症診療ガイドライン 2015