ねっちゅうしょう
熱中症
高温環境にいることで身体にさまざまな変調をきたした状態
10人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2019.02.21

熱中症の検査について

熱中症が疑われた人は診察や検査を受けて、「熱中症かどうか」や「重症度(程度)」が調べられます。診察や検査でわかる重症度は治療法を決める際の判断材料の1つにされます。ここでは診察や検査、熱中症の重症度について説明します。

1. 問診

患者さんとお医者さんの対話による診察を問診といいます。問診の目的は患者さんの状態や背景の把握です。患者さんは自分が困っている症状をお医者さんに伝え、お医者さんからは症状についての詳しい質問や今までにかかった病気、持病、定期的に飲んでいる薬について聞かれます。

熱中症が疑われた人への問診の具体例は次のものです。

【熱中症が疑われた人への問診の例】

  • どんな症状があるのか
  • 症状はいつからあるのか
  • 症状が起こった環境について
  • 現在治療中の病気はあるか
  • 定期的に飲んでいる薬はあるか

症状は熱中症の重症度が推測できる重要な情報です。お医者さんに詳しく伝えるようにしてください。患者さんの意識がはっきりとしない場合には、周りの人が分かる範囲で状況を伝えるようにしてください。 また、熱中症と似た症状は他の病気や薬の副作用でも見られることがあります。例えば、意識消失は脳卒中糖尿病治療薬の副作用でも起こります。治療している病気や定期的に飲んでいる薬はお医者さんにもれなく伝えるようにしてください。

2. 身体診察:体温の測定など

お医者さんが、患者さんの身体を見たり、触ったりしてくまなく調べることを身体診察といいます。身体診察にはいくつか種類があります。例えば、体温などのバイタルサイン(脈拍数・呼吸数・体温・血圧・意識レベル)を調べることも身体診察ですし、視診(身体を観察すること)や聴診(聴診器で身体の中を調べること)、触診(身体を触って調べること)などもあります。問診で得た情報をもとに身体診察を行うことで、症状の原因がさらに絞り込まれます。熱中症では体温が著しく上がることがあるので、体温は注目される項目の1つです。また、意識状態がはっきりしない人には脳や神経の状態を調べる診察が行われます。

3. 血液検査

熱中症になると身体の中の水分不足や電解質のバランスの乱れ、臓器機能の低下などの悪影響が起こります。これら身体への影響は血液検査が参考になります。

脱水の程度を調べる

熱中症になると、大量の汗が出て、身体から水分や塩分が失われます。身体の水分が不足することを脱水といいます。脱水になると血液が濃くなるので、血液に含まれる成分の濃度は上昇するものが多いです。具体的には、赤血球ヘモグロビンなどです。血液検査からわかる脱水の程度は点滴で補う水分量の参考にされます。

電解質の状態を調べる

熱中症が重症化すると、血液中に含まれるカリウムやカルシウムといった電解質に異常がみられます。例えば、血液中のカリウム濃度が上昇しすぎると命に危険を及ぼす不整脈が起こるので、点滴や透析治療を行ってすみやかに濃度を下げなくてはいけません。その他のカルシウムやナトリウムなどの電解質の異常にも正常範囲内に近づける治療が行われます。

臓器機能を調べる

熱中症になると、腎臓や肝臓の機能が低下してしまうことがあり、血液検査によってその程度を調べることができます。腎臓の機能低下が著しい場合には、透析治療(血液中の電解質を機械で正常な状態にできる)が検討されます。また、肝臓の機能が低下している場合には、肝臓のダメージを軽くする肝庇護薬が治療に使われます。

4. 画像検査

画像検査では身体の断面を画像化して詳しく調べることができます。CT検査やMRI検査などが画像検査に含まれます。熱中症で画像検査が行われることは多くはありませんが、意識障害などの症状があり、脳の病気の可能性がある人に画像検査が行われます。

5. 熱中症の診断基準と重症度について

「熱中症の診断」や「重症度の判断」は主に問診や身体診察によって行われます。熱中症の診断基準と重症度について詳しく説明します。

診断基準

熱中症診療ガイドライン2015によると、『熱中症とは「暑熱環境における身体適応障害によって起こる状態の総称」である。すなわち「暑熱による諸症状を呈するもの」のうちで、他の原因疾患を除外したものを熱中症と診断する』とされています。

噛み砕くと、高温の環境によって身体に変調をきたし、詳しく調べても他に原因がない場合に熱中症と診断される、ということです。つまり、熱中症と診断するためには、他の病気がないことが確認されなければなりません。問診や身体診察だけでは他の病気の可能性が否定できない場合は、血液検査や画像検査が行われます。

重症度

熱中症の診断と同時に、症状によって重症度が決められます。重症度がわかると、その後の経過の予測や治療法の見通しが立てやすくなります。熱中症は以前、4つの名前で重症度が分けられていましたが、現在は1度から3度に分けたものが用いられます。従来の呼び名が使われることもあるので、「現在の重症度」と「主な症状」、「従来の呼び名」を併記した表を下に示します。

【熱中症の重症度】

重症度 従来の呼び名 主な症状
1度
(軽症)
失神
熱けいれん
日射病
めまい
筋肉痛
こむら返り
発汗
皮膚の張りの低下
2度
(中等症)
熱疲労 頭痛
発熱(微熱)
嘔吐
倦怠感
脱力感
口渇感(口の中の渇き)
集中力や判断力の低下
頻脈(脈が早くなること)
3度
(重症)
熱射病 眠気
意識障害
発熱(高熱)
全身の痙攣

1度では身体の冷却や水分・塩分の摂取によって回復することが多く、医療機関でなくても対応できることが多いです。一方で、2度と3度は医療機関での治療が必要で、身体の冷却とともに点滴による水分・塩分の補充が行われます。また、3度になると脳や腎臓、肝臓などに影響が現れ、時に生命に危険が及ぶこともあるため、必要に応じて集中治療室で治療が行われるなどより慎重に経過が見られます。

治療の詳しい説明は「熱中症の治療」を参考にしてください。

【参考】

・「標準救急医学」、(日本救急医学会/監修)、医学書院、2014年
・「Step Beyond Resident」、(林 寛之/著)、羊土社、2006
熱中症診療ガイドライン 2015