げんぱつせいまくろぐろぶりんけっしょう
原発性マクログロブリン血症
血液がんの一種。IgMという抗体が異常に増加する
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最終更新: 2021.12.18
原発性マクログロブリン血症の基礎知識
POINT 原発性マクログロブリン血症とは
血液中の免疫細胞の一種である形質細胞が腫瘍化する病気です。腫瘍化した形質細胞がIgMという免疫に関連したタンパクを異常に多く作ってしまいます。ゆるやかに進行する病気で、根治は困難です。長期間にわたって無症状であることが多いですが、症状が出始めると、発熱、怠さ、体重減少、頭痛、めまい、鼻血、視力障害などがみられます。また、感染症になりやすくなることも分かっています。診断は、血液検査でIgMが異常に増加していることを確認し、骨髄検査で骨髄中の腫瘍化した形質細胞が存在した場合に確定します。ゆっくり進行して根治が困難な病気であり、症状が無い人では経過観察のみが行われます。腫瘍の進行による症状が出てくる人には、リツキシマブを軸とした抗がん剤治療を行います。IgM値が非常に高い人には、血漿交換療法を行いIgMを減少させる治療も行われます。原発性マクログロブリン血症が心配な人や治療したい人は、血液内科を受診して下さい。
原発性マクログロブリン血症について
血液がん の一種- IgMという
免疫 タンパク質をつくる細胞(リンパ形質細胞)が異常に増殖し、これに伴い引き起こされる病気 - IgMが増加しすぎることで血液がドロドロになり、さまざまな症状が出現する(過粘稠症候群)
- ゆっくり進行し、長期間にわたって無症状であることが多い
- IgMという
- まれな病気である
- 国内での調査では人口10万人あたりの
発症 数が、全体で0.053人、男0.089人、女0.028人と言われている
- 国内での調査では人口10万人あたりの
- 多発性骨髄腫とは似ている病気であるが、
骨髄 検査で細胞の異常を確認した上で区別される
原発性マクログロブリン血症の症状
原発性マクログロブリン血症の検査・診断
- 血液検査
- 異常なIgMの増加があるかどうか調べる
- 全身の臓器のダメージを調べる
- 尿検査
- 尿中に異常なタンパク質が出ていないか調べる(ベンス・ジョーンズ蛋白)
- 画像検査(
CT 検査、MRI 検査、PET検査 など)- 肝臓や
脾臓 、リンパ節 の腫れを確認する 造影 剤という注射をしてから画像検査をするとより詳細な情報を得られることがあるが、血液がゼラチン状になったという副作用報告もあり、過粘稠症候群がある場合にはあまり行われない
- 肝臓や
眼底検査 - 過粘稠症候群による目のダメージを確認する(無症状でも検査する)
骨髄 検査- 腰骨や胸の骨を刺して骨髄を採取する
- 骨髄中の
腫瘍 性形質細胞が10%以上あることを確認する
原発性マクログロブリン血症の治療法
- 緩やかに進行する病気であり、無症状のうちは
経過観察 が基本- 平均して7年以上は無症状とされる
- 15年経過すると75%の人には症状が出てくる
- リツキシマブを中心とした
化学療法 (抗がん剤 )- リツキシマブ単剤療法(3週間ごとの注射)
- DRC療法:デキサメサゾン、リツキシマブ、シクロホスファミド療法(3週ごとの注射)
- ベンダ-R療法:ベンダムスチン、リツキシマブ療法(4週ごとの注射)
- フルダラビン療法:フルダラビンの内服治療(4週ごと) など
血漿交換 療法(血液透析 の一種)- IgM値が非常に高い場合(4,000mg/dlが目安)にはリツキシマブ使用後に一時的に病状が悪化(フレア)する可能性がある
- IgM値が非常に高い場合には、化学療法前に血漿交換療法を行い、IgM値を一時的に低下させる
- 感染対策
- 病気の影響、化学療法の影響で
感染症 にかかりやすくなるので、化学療法中は予防薬が必要- 帯状疱疹予防薬(バラシクロビル、アシクロビルなど)
- ニューモシスチス肺炎予防薬(ST合剤、アトバコン、ペンタミジン吸入など)
- 病気の影響、化学療法の影響で