あれるぎーせいけつまくえん(しゅんきかたるをふくむ)
アレルギー性結膜炎(春季カタルを含む)
眼の結膜でアレルギー反応が生じて、炎症の起こる病気
11人の医師がチェック 132回の改訂 最終更新: 2024.08.16

アレルギー性結膜炎の治療

アレルギー性結膜炎では点眼薬による薬物治療が中心になります。アレルギー性鼻炎が同時に生じている人や、点眼薬では症状が治らない人には内服薬が追加されます。最近では処方薬と同じ成分が含まれている薬が市販薬として購入できるようになりました。ここではアレルギー性結膜炎の治療について、市販薬を含めて説明します。

1. 点眼薬での治療

アレルギー性結膜炎の治療は点眼薬を中心に行われます。点眼薬は症状が起きている目に直接作用するため、内服薬よりも効果が出やすいです。さらに内服薬に比べて眠気などの副作用が少ないことも利点です。

初期療法とは何か?

季節性アレルギー性結膜炎では初期療法が重要です。初期治療とは、原因となる花粉の飛散前の症状がない時期から抗アレルギー薬の点眼薬による治療を開始することです。初期療法をすることで、花粉飛散がピークになった時の症状を軽減できます。

抗アレルギー薬を続けても症状が強い人には、ステロイド薬が含まれた点眼薬が追加で使われます。しかし、ステロイド点眼薬には眼圧の上昇などの副作用があるため、使用は短期間にすることが勧められます。

点眼薬の種類

抗アレルギー薬が症状を抑えるメカニズムは、大きく2つに分けられます。ヒスタミンの作用を抑える「ヒスタミン拮抗作用」と、ヒスタミンを含めたケミカルメディエーターが放出されるのを抑える「メディエーター遊離抑制作用」です。ヒスタミンの作用によって目の強いかゆみが起こるため、目のかゆみが強い場合にはヒスタミン拮抗作用をもつ薬が使われることが多いです。

日本で販売されている主な抗アレルギー点眼薬は次の通りです。

【アレルギー性結膜炎で使用される主な抗アレルギー薬(点眼薬)】

商品名 薬剤名 ヒスタミン
拮抗作用
メディエーター遊離抑制作用 点眼回数(回/日) コンタクトをつけたままの使用
リボスチン®️ レボカバスチン塩酸塩 × 4 ×
ザジテン®️ ケトチフェンフマル酸塩 4 ×
パタノール®️ オロパタジン塩酸塩 4 ×
アレジオン®️
アレジオン®LX
エピナスチン塩酸塩 4
2
インタール®️ クロモグリク酸
ナトリウム
× 4 ×
エリックス®️ アンレキサノクス × 4 ×
アレギサール®️ ペミロラストカリウム × 2 ×
ペミラストン®️
リザベン®️ トラニラスト × 4 ×
トラメラス®️
ケタス®️ イブジラスト × 4 ×
ゼペリン®️ アシタザノラスト水和物 × 4 ×

次に、抗ヒスタミン薬とメディエーター遊離抑制薬に分けて、点眼薬について詳しく説明します。

抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1拮抗薬):パタノール®、アレジオン®など

ヒスタミンとはアレルゲンに刺激された肥満細胞が放出する物質の一つです。毛細血管や神経にあるヒスタミン受容体に結合して、強いかゆみや充血などのアレルギー症状を起こします。ヒスタミンが受容体に結合しないように働くのがヒスタミンH1受容体拮抗薬です。

使い始めてすぐに効果が表れるという利点がありますが、効果の持続時間が短いため、1日に4回の点眼が必要になる薬がほとんどです。内服のヒスタミンH1拮抗薬に比べて眠気などの副作用が少ないことが点眼薬の利点です。

なお、小児向けに開発された点眼薬はありませんが、子どもにも大人と同じ点眼薬が処方されます。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬の主な点眼薬は次の通りです。

  • リボスチン®点眼薬0.025%(1日4回)
  • ザジテン®点眼薬0.05%(1日4回)
  • パタノール®点眼薬0.1%(1日4回)
  • アレジオン®点眼薬0.05%(1日4回)
  • アレジオン®️LX点眼液0.1%(1日2回)

このうちリボスチン®点眼薬は、ヒスタミン受容体に作用する効果のみですが、残りの3つはケミカルメディエーターを抑制する効果を併せ持っています。

メディエーター遊離抑制薬:インタール®、リザベン®、ケタス®など

ケミカルメディエータとは、ある細胞が別の細胞に情報を伝えるために放出する化学物質の総称です。肥満細胞はアレルゲンに刺激されると、ヒスタミン、ロイコトリエン、PAF、プロスタグランジンD2などのケミカルメディエーター を放出し、アレルギー症状を引き起こします。また、これらの物質は好酸球という細胞を活性化して、アレルギーの長期化や重症化にも関与します。ケミカルメディエーターが肥満細胞から放出されるのを防ぐのが「メディエーター遊離抑制薬」です。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬に比べて効果の作用時間が長いことが特徴で、持続的にアレルギー症状を抑える効果があります。しかし、ヒスタミン拮抗薬のような即効性はなく、使い始めてから効果が出るまで時間がかかります。

メディエーター遊離抑制薬が使われるのは次のような場合です。

  • アレルギー性結膜炎の症状が比較的軽い場合
  • 季節性アレルギー性結膜炎の初期療法として

メディエーター遊離抑制薬を使用中に症状が悪化した人には、ヒスタミンH1受容体拮抗薬に変更されたり、追加されたりします。

主なメディエーター遊離抑制薬の点眼薬は次の通りです。

  • インタール®️点眼液2%
  • インタール®️点眼液UD2%
  • エリックス®️点眼液0.25%
  • アレギサール®️点眼液0.1%
  • ペミラストン®️点眼液0.1%
  • リザベン®️点眼液0.5%
  • トラメラス®️点眼液0.5%
  • トラメラス®️PF点眼液0.5%
  • ケタス®️点眼液0.01%
  • ゼペリン®️点眼液0.1%

メディエーター遊離抑制薬には肥満細胞からのケミカルメディエーターの放出を抑制する効果がありますが、その他にもいくつかの仕組みがあり、どの部分を抑制するかは薬によって異なります。ケミカルメディエーターの作用によって、アレルギー性結膜炎の症状が長引いたり重症化することが知られており、それらを抑制する効果があります。

抗アレルギー薬の点眼薬の副作用

抗アレルギー薬の点眼薬の副作用は少ないですが、次のようなものがあります。

点眼薬が目の周囲につくことで接触性皮膚炎を起こすことがあります。接触性皮膚炎では目の周りの皮膚が赤くなったり、痒くなったりする症状が起こります。アレルギー性結膜炎の症状と重なるため区別が難しいですが、点眼薬を使用し始めてから赤みがひどくなったなどの場合には、医療機関で相談してください。

また、かゆみがある時に強く目を擦りがちで、まぶたが赤く腫れている人では副作用が出やすいので注意が必要です。薬を使い始めてから変化があった場合には、医療機関で相談してください。

◎コンタクトレンズ装用したまま使用できる点眼薬

ソフトコンタクトレンズを装用したまま点眼する時には、防腐剤(ベンザルコニウム塩化物)の入っていない点眼薬を使用してください。防腐剤が入っている点眼薬はコンタクトレンズに悪影響を及ぼし、目にも悪い影響が起こる可能性があります。コンタクトレンズをつけたまま点眼可能な薬にアレジオン®があります(2019年9月)。

◎コンタクトレンズをつける場合の注意点

上記以外の点眼薬を使う時には、いったんコンタクトレンズを外して点眼し、5-10分経ってからレンズを装用するようにしてください。とはいえ、目のかゆみが強く、充血や目やにが多い時期にはコンタクトレンズを中止してメガネを使うことをお勧めします。コンタクトレンズはアレルゲンや汚れが付着しやすく、症状の悪化に繋がりやすいためです。症状が改善してきたらコンタクトレンズの使用の再開をしても構いませんが、できれば1日使い捨てのものが望ましいです。もし、使い捨てのもの以外を使用する場合には洗浄や消毒をしっかりするようにしてください。

ステロイド薬:フルメトロン®など

抗アレルギー薬の点眼薬を使用しても症状が治らない人には、ステロイド薬が含まれた点眼薬を併用することがあります。

ステロイド点眼薬を使用する際には副作用に注意が必要です。副作用で眼圧が上昇すると、視野が欠けたり狭くなったりする緑内障という病気を引き起こします。しかしながら、眼圧が上昇しても自覚症状があまりなく、気づかないうちに緑内障発症していることがあります。そのため、ステロイド点眼薬を使用している人は、必ずお医者さんの指示通りに定期的に通院して眼圧測定をしてください。特に子どもでは副作用が起こりやすいので注意が必要です。

2. 内服薬

アレルギー性結膜炎の治療では主に点眼薬が使われます。しかし、鼻水や鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎の症状も合わせて起こしている場合や、点眼薬のみでは症状が抑えられない場合などには内服薬を併用することがあります。

内服薬では、アレルギー反応に関わるヒスタミンやロイコトリエンといった化学物質の働きをブロックすることによって効果を発揮します。

ここではアレルギー性結膜炎の治療で、点眼薬とともに使われる主な内服薬である抗ヒスタミン薬について説明します。その他の内服薬などについてはこちらを参考にしてください。

抗ヒスタミン薬:アレグラ®、アレロック®、アレジオン®など

抗ヒスタミン薬はアレルギー性鼻炎の治療で使われる中心的な薬ですが、アレルギー性結膜炎では、症状がひどくて点眼薬のみでは効果が不十分な場合や、アレルギー性結膜炎にアレルギー性鼻炎を合わせて起こしている場合に処方されます。

抗ヒスタミン薬は開発の時期によって第一世代と第二世代に分けられます。現在は主に第二世代抗ヒスタミン薬が治療に使われています。

抗ヒスタミン薬はヒスタミンという化学物質の作用を阻害してアレルギー反応を抑え、くしゃみ、鼻水などの症状を和らげる効果があります。

◎副作用について

主な副作用に「眠気」があるため、運転や機械の操作などをする人は注意が必要です。第二世代抗ヒスタミン薬は第一世代に比べて眠気が軽減されてはいますが、その中でも眠気が出やすいものと出にくいものがあります。アレグラ®、クラリチン®、ビラノア®は、添付文書に運転注意の記載がなく、比較的眠気が少ない薬です。しかし副作用の出方には個人差がありますので、眠気が強いようであればお医者さんに相談してください。

また、第一世代抗ヒスタミン薬では、喉の渇き、尿閉(尿が出なくなる)、便秘、眼圧の上昇などの副作用もがあります。持病によっては使えなかったり、薬や容量の調整が必要になったりするため、現在治療中の病気がある場合には必ず伝えてください。

なお、妊娠している人は、妊娠4ヶ月までは胎児が重要な臓器を作る器官形成期であるため、薬剤の使用を避けます。その後の妊娠期間では、昔から使用され赤ちゃんの異常などの問題が今まで報告されていない、第一世代抗ヒスタミン薬のポララミンなどが使われます。

3. 市販薬での治療

アレルギー性結膜炎の症状に効果的な薬は市販薬としても販売されています。特に季節性アレルギー性結膜炎の人では、症状が起こる2週間ほど前から治療を開始すると、ピーク時の症状を軽くすることが期待できます。

市販薬で症状が改善しない人は、市販されていない成分を含む薬も使用できることから、医療機関に受診することも検討してみてください。

その他、以下に当てはまる人は薬を購入する際には必ず薬剤師さんに相談してください。受診が勧められる場合もあると思いますので、その場合に医療機関への受診をお勧めします。

  • 他の病気で医師の治療を受けている
  • 子どもや高齢者
  • 妊娠中または妊娠している可能性がある
  • 授乳中である
  • 薬などでアレルギー症状を起こしたことがある

次に、薬局で手に入るアレルギー性結膜炎の点眼薬を紹介します。

点眼薬(目薬)

市販されている点眼薬も、処方されるものと同様に抗ヒスタミン薬とメディエーター遊離抑制薬の2つが中心になります。ステロイドが含まれる目薬は市販されていません。

処方薬が市販薬としても購入できるようになったものをスイッチOTCと呼び、点眼薬では以下の薬があります。効果があった処方薬と同じ成分の市販薬を購入するもの一つの方法です。不明な点などがあれば、薬剤師さんに相談をしてみてください。

市販薬 処方薬 ヒスタミン拮抗作用 メディエーター遊離抑制作用
ザジテン®️AL点眼薬 ザジテン®️点眼薬
アイフリーコーワAL ゼペリン®️点眼液 ×
ノアールPガード点眼液®️ アレギサール®️点眼液
ペミラストン®️点眼液
×

症状がひどくなった場合は、点眼薬を変更すると効果的な場合があります。市販の点眼薬を使用しても効果が感じられない場合や、症状がひどくなった場合は、一度、医療機関で相談してください。

◎コンタクトをしたまま使える市販の目薬はあるのか

市販薬の点眼薬でもコンタクトをしたまま使用できるものもあります。その場合は、パッケージに「ソフトレンズをしたままOK」などの記載がありますので、参考にしてみてください。判断が難しい場合は薬剤師さんに聞いてください。

また、一般的に、「ソフトレンズ使用可能」という記載のある目薬でも、カラーコンタクトレンズでは使用できないことが多いので、注意してください。

なお、家族分を含めて対象となる市販薬の購入金額が1年で12,000円を超えて、一定の条件を満たしている場合は「セルフメディケーション税制」が利用できます。申請の際にに必要になるので、購入時のレシートは保管しておいてください。

4. アレルギー性結膜炎の診療ガイドラインはあるのか

日本眼科学会がまとめた「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン」があります。日本眼科学会のホームページから参照できますので、興味がある人はみてみてください。