アレルギー性結膜炎の検査
アレルギー性結膜炎の診断では症状の確認が最も重要です。特定の物質に対して
1. 問診
【問診で聞かれる質問の例】
- 症状についての質問
- どのような症状があるか
- どのような時に症状が起こりやすいのか
- 毎年同じような季節に症状が起こるのか
- 以前同じような症状が出た時に使用した薬があるか
- 日常生活についての質問
- コンタクトを使用するか
- 車の運転や機械操作などを行うか
- 身体状況に関する質問
- 以前に治療した、もしくは現在治療中の病気、けが、持病はあるか
- 常用薬やサプリメントの服用はあるか
- 薬や食べ物などのアレルギーはあるか
- 妊娠や授乳をしているか
アレルギー性結膜炎の診断では症状についての問診が特に重要です。上記の質問例を参考に、受診前に情報を整理しておくとスムーズです。
症状についての質問
アレルギー性結膜炎では目のかゆみや違和感などの症状が特徴的です。目の痛みや見えにくさなどは起こりにくく、これらの症状がある人では別の病気の可能性が考えられます。症状について詳しくお医者さんに伝えてください。また、アレルギーの原因となる物質を推測するためには、どんな時に症状が起こりやすいかの情報も重要です。
日常生活についての質問
アレルギー性結膜炎の治療薬を選ぶ際に、日々の生活習慣を考慮する必要があります。例えば、コンタクトを使っている人では使用できる
身体状況に関する質問
患者さんの身体状況によっては使用を控えたり、量を調整する必要がある薬があります。また、飲んでいる薬があれば飲み合わせにも注意が必要なので、漏れなく伝えるようにしてください。医療機関で処方された薬であれば、お薬手帳に詳しい情報がまとまっています。受診時に持参することをお勧めします。
2. 身体診察
身体診察では主に目の状態が観察されます。
3. 血液の検査:特異的IgE抗体検査(RAST)
血液の検査はアレルギー性結膜炎を診断するうえで必須ではありませんが、どのような物質にアレルギーが起きやすいのかを調べる目的で行われることがあります。主に行われる血液検査は
また、この検査でアレルゲンを推定できるので、その物質を避けるなどの日常の対策に役立てられます。しかし、アレルギー症状が出ない物質に対しても、抗体の値が陽性になることがあるため注意が必要です。原因となっているアレルゲンは血液検査のみではなく、症状が起こる季節や状況なども参考に総合的に判断されます。
特異的IgE抗体検査は大きく2つの方法にわけられます。
- 項目を個別に選んで検査する方法
- 多項目を同時に検査する方法
項目を個別に選んで検査する方法
原因となるアレルゲンが推定されている場合に行われます。200種類以上あるアレルゲン項目のなかから自由に選んで検査できます。次に説明する「多項目を同時に検査する方法」に含まれないアレルゲンも幅広く選べることが利点ですが、一度に13項目までしか調べることができません。一般的にはアレルゲンとして頻度の多い次のような項目を検査します。
- 花粉
- スギ
- ヒノキ
- ハルガヤ
- カモガヤ
- ブタクサ
- ヨモギ
- ハンノキ
- 室内塵
- ハウスダスト
- ダニ
- 動物
- ネコ上皮
- イヌ上皮
- カビ
カンジダ - アルテルナリア
検査する項目は、一人ひとりの生活環境や症状が起こる時期、場所を参考に決めるため、上記がすべて含まれていない場合もあります。検査を受けてから結果が出るまでには1週間程度かかり、費用は13項目測定した場合に3割負担で5000円程度です。
多項目を同時に検査する方法
1回の血液検査で多数のアレルゲンを調べられる方法です。アレルゲンの項目は自由には選べず既製のセットになっています。MAST33やViewアレルギー39などの検査があります。
アレルゲンが推定できない場合に、網羅的に調べるために行われます。検査を受けてから結果がで出るまでには1週間程度かかり、費用は13項目測定した場合とほぼ同じで3割負担で5000円程度です。
また、指先から少量の血液を採取するだけできる簡易検査もあります。この検査では決まった3項目もしくは6項目について調べることができます。15分ほどで結果が出るため、その場で結果がわかることが利点です。
4. 皮膚テスト:スクラッチテストなど
皮膚にアレルゲンをつけて反応をみる検査です。皮膚テストはアレルギー性結膜炎を診断するうえで必須ではありませんが、血液検査と同様に、どのような物質にアレルギーが起こりやすいのかを調べる目的で行われることがあります。しかし、この検査が陽性であっても、目の症状の原因がアレルギーであることを示しているわけではありません。
現在行われている皮膚テストには次の3つがあります。
プリックテスト :皮膚にアレルゲンをつけ、その部分を針先で刺して反応を観察スクラッチテスト :皮膚に針先で引っ掻き傷を作り、そこにアレルゲンを垂らして反応を観察- 皮内テスト:アレルゲンを皮内注射して反応を観察
この中で最も一般的な検査はプリックテストです。
【皮膚テストの優れている点】
- 安価
- その日のうちに結果がわかる
【皮膚テストの注意すべき点】
- 検査に少々痛みを伴う
- 少なくとも検査の1週間前にはアレルギーに対して使っている薬を中止する必要がある
- ごくまれにアナフィラキシーショックが起こる
皮膚テストは費用があまりかかりませんが、検査に時間がかかるため行われないことが多いです。現在主流の検査は血液検査です。
5. 目の検査:涙や結膜の検査
アレルギー性結膜炎では、全身性のアレルギーの起きやすさを調べるとともに、目でアレルギーが起きているかどうかを調べます。目でアレルギー反応が起きているかを調べる検査は次の通りです。
- 涙液中総IgE抗体測定
- 点眼誘発試験
- 結膜分泌液・眼脂内の好酸球検査
この中で最も多く行われているのが、短時間で簡単にできる「涙液中総IgE抗体測定」です。そのほかの検査もあわせて詳しく説明します。
涙液中総IgE抗体測定
簡単にできることから診断のために行われることが多い検査です。目でアレルギーが起きると涙の中のIgE抗体が増加します。この検査ではIgE抗体の総量が多いことはわかりますが、どのアレルゲンに対するIgE抗体が増えているのかまではわかりません。
検査では、下まぶたに検査用の細い紙をぶらさげて涙を染み込ませます。その紙を試験薬に浸してIgE抗体が増加しているかどうかが判定されます。10分程度で行うことができ、当日に検査結果を知ることができます。
点眼誘発試験
血液検査や皮膚テストから特定のアレルゲンが原因として推定された場合に、そのアレルゲンを点眼して実際に結膜炎が起こるかどうかを確認する検査です。薄い濃度からはじめて徐々に濃くして様子をみます。眼のかゆみや充血が起きたら検査陽性と診断されます。かゆみが出た時点で、あわせて眼の診察が行われます。しかし、アレルゲンの点眼薬を準備する手間などもあり、一般的にはあまり行われていません。
結膜分泌液・眼脂内の好酸球検査
アレルギー反応に関わる好酸球という細胞が、結膜の分泌液や目やににあるかどうかを調べる検査です。分泌液や目やにが出ていればそれを採取し、なければ上まぶたの裏をこすって細胞を採取します。
通常は結膜や目やにの中には好酸球がいません。採取したものを顕微鏡でみて1つでも好酸球があれば、検査は陽性となります。しかし、アレルギー性結膜炎であっても好酸球が見られないことがあることと、検査を行う手間が多いことなどから、あまり行われない検査です。
6. アレルギー性結膜炎の診断基準
アレルギー性結膜炎の診断をする際には日本眼科学会がまとめた診断基準が用いられます。専門的な内容なので難しい用語が含まれていますが、ここまで説明してきた検査が診断でどのように使われるかの参考にしてみてください。
臨床診断 (Aのみ) |
アレルギー性結膜疾患に特有な臨床症状がある |
準確定診断 (A+B) |
臨床診断に加えて、血清抗原特異的IgE抗体陽性、または推定される抗原と一致する皮膚反応陽性 |
確定診断 (A+B+CまたはA+C) |
臨床診断または準確定診断に加えて、結膜擦過物中の好酸球が陽性 |
A:アレルギー性結膜炎に特有な臨床症状あり
問診で次の症状があること
- 眼のかゆみ
- 眼の充血
- 涙が出る
- 眼がゴロゴロする
- 目やにが出る
B:1型アレルギーの全身的や局所的な素因がある
次の検査で全身性の1型アレルギー性素因があること
- 血清抗原特異的IgE抗体陽性(RAST法、MAST法など)
- 皮膚テスト(スクラッチテスト)
次の検査で局所性(眼)の1型アレルギー素因があること
- 涙液総IgE抗体陽性
- 点眼誘発試験の陽性
C:結膜での1型アレルギー反応あり
結膜分泌液や目やに中の好酸球陽性
参考文献
・日本眼科学会 アレルギー性結膜疾患