じんましん
じんましん(蕁麻疹)
皮膚が赤く腫れ、短時間で消える症状。原因はアレルギー、物理的刺激、発汗など。市販薬にもある抗ヒスタミン薬の飲み薬が有効。原因不明で長引く場合もある
16人の医師がチェック 249回の改訂 最終更新: 2024.10.25

蕁麻疹の治療概論

蕁麻疹の治療では、原因が明らかな場合にはできるだけ原因を取り除き、必要に応じて薬を使って症状をおさえます。原因不明な場合であっても、薬で症状を改善することができます。ここでは、蕁麻疹の治療について詳しく説明します。

1. 蕁麻疹の治療法はどのように決めるか

蕁麻疹の治療は、「蕁麻疹の原因を特定して除去すること」と「症状に応じて必要な治療薬を用いていくこと」です。治療によって症状がなくなったら、次のステップとして治療しなくても症状がない状態を目指していきます。

蕁麻疹の対処法として、原因がわかっている場合は、原因を除去することで症状の悪化や再発を防ぐことができます。「原因を除去する」ということは当たり前のように思えますが、極めて重要なことで、治療薬よりも効果的であることは少なくありません。

また、感染やストレス、疲労などが蕁麻疹を悪化させますので、これらをできるだけ減らすように、生活習慣を改善することも重要です。

次に蕁麻疹の診断の簡単な流れの図を示します。

蕁麻疹の診断

医療の現場では、これをもっと複雑な図式で考えていくことが多いのですが、ここでは簡略化して説明しています。

原因がわかるときは原因を除く

蕁麻疹の治療方針を決めていくうえで、まずは蕁麻疹に明らかな原因があるかどうかを考えます。原因の有無を判断するためには、症状が「いつ出てくるか」「いつまで続くか」「どんな皮疹か」「かゆみは伴うか」が重要です。原因が明らかであれば、それを除去することが第一の選択肢であり、最も効果が期待できます。お医者さんは患者さんからの情報を頼りに原因を考えます。診察時になるべく具体的に質問に答えられるよう準備をしてください。

原因がわからない蕁麻疹では症状の持続時間が短ければ薬を使ってみる

原因が明らかではない場合は、蕁麻疹が「長く続くのか続かないのか」が重要視されます。短い時間で蕁麻疹が消えていく場合は、特発性蕁麻疹(急性および慢性蕁麻疹)を疑うことになります。原因が不明ですので、原因を除去して治療していくことはできませんが、抗ヒスタミン薬が効くことがわかっています。

また、蕁麻疹ができた部位も重要です。顔面や唇に症状が出るかどうかも大きな判断材料になるからです。顔面や唇に症状が出る場合は血管性浮腫である可能性が高くなります。

ただし、ここで挙げた方法は極めて簡略的なものですので、くれぐれも自己判断は避け、蕁麻疹を診ている医療機関で診察を受けることをお勧めします。

2. 蕁麻疹の治療薬①:抗ヒスタミン薬

蕁麻疹の多くは原因が分からず、特発性蕁麻疹と呼ばれます。原因が明らかではないため、原因を除去するという治療は選択できません。そこで、特発性蕁麻疹の治療は薬に頼ることになります。主に抗ヒスタミン薬が用いられます。

ヒスタミンはアレルギー症状(皮膚の発疹や咳、鼻炎など)を引き起こす体内物質です。抗ヒスタミン薬はヒスタミンの働きを抑え、アレルギー症状を抑えます。蕁麻疹だけではなく花粉症アトピー性皮膚炎などにも使われます。

なお、主な抗ヒスタミン薬は「こちらのページ」を参考にしてください。詳しい作用についても説明があります。

抗ヒスタミン薬の副作用

抗ヒスタミン薬の副作用として、眠気や、口の渇き、尿閉便秘などが挙げられます。この副作用は、中枢神経抑制作用(脳の覚醒などを抑える作用)や抗コリン作用(体内物質であるアセチルコリンという物質を阻害する作用)の影響だと考えられています。

効果が十分に得られない場合はどうするか

蕁麻疹の治療では、一つの抗ヒスタミン薬を通常の量で使い、もしも効果が十分に得られない場合にはその薬を増量するか、他の抗ヒスタミン薬へ変更していく方法が最も良いと考えられます。このような薬の選択は一人ひとりの薬への相性や体質・体格などを考慮することが大切です(抗ヒスタミン薬の種類や特徴について、詳しくは「蕁麻疹に処方される抗ヒスタミン薬」で説明しています)。

それでも治療効果が見られない場合には、抗ヒスタミン薬以外の薬を追加することがあります。これらはまとめて「補助的治療薬」と呼ばれます。

3. 蕁麻疹の治療薬②:補助的治療薬(抗ヒスタミン薬以外の薬)

抗ヒスタミン薬で十分な治療効果が得られない人には補助的治療薬として、次の薬が使われることがあります。

  • H2ブロッカー
  • 抗ロイコトリエン薬
  • 漢方薬
  • ステロイド薬
  • 生物学的製剤(デュピルマブ®)

抗ヒスタミン薬以外の治療薬として代表的なものは、H2ブロッカー(H2受容体拮抗薬)や漢方薬などです。H2ブロッカーも実は抗ヒスタミン薬と同様にヒスタミンに働きかける薬なのですが、抗ヒスタミン薬ほどの強さを持ち合わせてはいません。抗ヒスタミン薬と併用することで、副作用を抑えつつ効果を高めることが期待できます。

2024年2月にデュピルマブという薬が承認されました。この薬は生物学的製剤と呼ばれる薬に分類されるもので、インターロイキンという炎症に関係した物質を抑えることで効果を発揮します。全員に使える薬ではなく、12歳以上で既存の治療で効果がない人に使用は限られます。

また、漢方薬は体質や症状などに合わせて処方されるものです。蕁麻疹の原因を断ち切る根治的な治療というよりは、本来ある治癒能力を高めて症状を和らげることを期待して用いられます。

詳しく知りたい人は「蕁麻疹に使われる抗ヒスタミン以外の薬」をご覧ください。

4. 蕁麻疹の治療薬③:緊急事態を救う薬(ステロイド・アドレナリンなど)

蕁麻疹では皮膚がアレルギー反応によってむくみます。まれに、消化管(胃腸の壁)や気道(気管や肺)の壁がむくむこともあり、その場合は症状として、消化管では下痢や腹痛が、気道では咳や息苦しさが見られることになります。また、アレルギー反応が激しい場合はショック状態といって、血圧が下がり命が危険にさらされる状態になることもあり、救命治療が必要です。このような蕁麻疹の原因に対してはステロイドアドレナリンといった薬を使うことがあります。

参考文献

日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会, 蕁麻疹診療ガイドライン 2018, 日皮会誌:128(12),2503-2624,2018