蕁麻疹の治療概論
蕁麻疹の治療では、原因が明らかな場合にはできるだけ原因を取り除き、必要に応じて薬を使って症状をおさえます。原因不明な場合であっても、薬で症状を改善することができます。ここでは、蕁麻疹の治療について詳しく説明します。
目次
1. 蕁麻疹の治療法はどのように決めるか
蕁麻疹の治療は、「蕁麻疹の原因を特定して除去すること」と「症状に応じて必要な治療薬を用いていくこと」です。治療によって症状がなくなったら、次のステップとして治療しなくても症状がない状態を目指していきます。
蕁麻疹の対処法として、原因がわかっている場合は、原因を除去することで症状の悪化や再発を防ぐことができます。「原因を除去する」ということは当たり前のように思えますが、極めて重要なことで、治療薬よりも効果的であることは少なくありません。
また、感染やストレス、疲労などが蕁麻疹を悪化させますので、これらをできるだけ減らすように、生活習慣を改善することも重要です。
次に蕁麻疹の診断の簡単な流れの図を示します。

医療の現場では、これをもっと複雑な図式で考えていくことが多いのですが、ここでは簡略化して説明しています。
原因がわかるときは原因を除く
蕁麻疹の治療方針を決めていくうえで、まずは蕁麻疹に明らかな原因があるかどうかを考えます。原因の有無を判断するためには、症状が「いつ出てくるか」「いつまで続くか」「どんな
原因がわからない蕁麻疹では症状の持続時間が短ければ薬を使ってみる
原因が明らかではない場合は、蕁麻疹が「長く続くのか続かないのか」が重要視されます。短い時間で蕁麻疹が消えていく場合は、
また、蕁麻疹ができた部位も重要です。顔面や唇に症状が出るかどうかも大きな判断材料になるからです。顔面や唇に症状が出る場合は血管性
ただし、ここで挙げた方法は極めて簡略的なものですので、くれぐれも自己判断は避け、蕁麻疹を診ている医療機関で診察を受けることをお勧めします。
2. 蕁麻疹の治療薬①:抗ヒスタミン薬

蕁麻疹の多くは原因が分からず、特発性蕁麻疹と呼ばれます。原因が明らかではないため、原因を除去するという治療は選択できません。そこで、特発性蕁麻疹の治療は薬に頼ることになります。主に抗ヒスタミン薬が用いられます。
ヒスタミンは
なお、主な抗ヒスタミン薬は「こちらのページ」を参考にしてください。詳しい作用についても説明があります。
抗ヒスタミン薬の副作用
抗ヒスタミン薬の副作用として、眠気や、口の渇き、尿閉、便秘などが挙げられます。この副作用は、中枢神経抑制作用(脳の覚醒などを抑える作用)や抗コリン作用(体内物質である
効果が十分に得られない場合はどうするか
蕁麻疹の治療では、一つの抗ヒスタミン薬を通常の量で使い、もしも効果が十分に得られない場合にはその薬を増量するか、他の抗ヒスタミン薬へ変更していく方法が最も良いと考えられます。このような薬の選択は一人ひとりの薬への相性や体質・体格などを考慮することが大切です(抗ヒスタミン薬の種類や特徴について、詳しくは「蕁麻疹に処方される抗ヒスタミン薬」で説明しています)。
それでも治療効果が見られない場合には、抗ヒスタミン薬以外の薬を追加することがあります。これらはまとめて「補助的治療薬」と呼ばれます。
3. 蕁麻疹の治療薬②:補助的治療薬(抗ヒスタミン薬以外の薬)
抗ヒスタミン薬で十分な治療効果が得られない人には補助的治療薬として、次の薬が使われることがあります。
- H2ブロッカー
- 抗ロイコトリエン薬
- 漢方薬
ステロイド薬 - 生物学的製剤(デュピルマブ®)
抗ヒスタミン薬以外の治療薬として代表的なものは、H2ブロッカー(H2受容体拮抗薬)や漢方薬などです。H2ブロッカーも実は抗ヒスタミン薬と同様にヒスタミンに働きかける薬なのですが、抗ヒスタミン薬ほどの強さを持ち合わせてはいません。抗ヒスタミン薬と併用することで、副作用を抑えつつ効果を高めることが期待できます。
2024年2月にデュピルマブという薬が承認されました。この薬は生物学的製剤と呼ばれる薬に分類されるもので、インターロイキンという
また、漢方薬は体質や症状などに合わせて処方されるものです。蕁麻疹の原因を断ち切る根治的な治療というよりは、本来ある
詳しく知りたい人は「蕁麻疹に使われる抗ヒスタミン以外の薬」をご覧ください。
4. 蕁麻疹の治療薬③:緊急事態を救う薬(ステロイド・アドレナリンなど)
蕁麻疹では皮膚がアレルギー反応によって
参考文献
日本皮膚科学会蕁麻疹