じんましん
じんましん(蕁麻疹)
皮膚が赤く腫れ、短時間で消える症状。原因はアレルギー、物理的刺激、発汗など。市販薬にもある抗ヒスタミン薬の飲み薬が有効。原因不明で長引く場合もある
16人の医師がチェック 249回の改訂 最終更新: 2024.10.25

蕁麻疹とはどのような病気か

蕁麻疹(じんましん)は皮膚が赤く膨らみ、かゆみをともなう病気です。身体のさまざまな部位に突然でき、しばらくすると消えます。よく知られた病気ですが、実はいくつかの種類があります。ここでは、蕁麻疹の種類について詳しく説明します。

1. 蕁麻疹ができるとき身体にはどんなことが起こっているのか

蕁麻疹の症状は、身体の中で作られるヒスタミン等の化学物質によって起こります。何かしらのきっかけで皮膚のマスト細胞(肥満細胞)から放出された化学物質は、皮膚の血管や神経に働きかけます。その結果、血管が拡がったり(紅斑:赤い皮疹)、血液中の水分を外に漏れでたり(膨疹:隆起する皮疹)して、皮膚の症状として現れるのです。また、ヒスタミンは神経を刺激してかゆみの原因にもなります。

2. 蕁麻疹には種類がある

蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹は発症する仕組みや原因によって、いくつかの種類に分類できます。種類によって治療方法が異なるため、どの蕁麻疹なのかを把握することが重要です。

まず、蕁麻疹の種類を大きく分けるとふたつあります。ひとつは、原因が不明の蕁麻疹、もうひとつは原因がある程度明らかである蕁麻疹です。原因不明の蕁麻疹は特発性蕁麻疹とも呼ばれ、さらに急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分類されます。原因が特定できる蕁麻疹は、その原因によって分類されます。

3. 原因不明の蕁麻疹(特発性蕁麻疹):急性蕁麻疹、慢性蕁麻疹

蕁麻疹の主な原因は身体への刺激です。原因となりうる刺激があまりにも多いため、いくら調べても特定できない場合がかなりあります。このように蕁麻疹の原因がはっきりしない場合を特発性(とくはつせい)蕁麻疹と言います。

原因不明の蕁麻疹は全体の7割程度を占めます。つまり、原因は分からない場合のほうが多いということです。ただ、原因不明であっても治療は可能ですし、多くは一般的な治療で治ります。

原因不明の蕁麻疹はさらにふたつの種類に区別されます。ひとつは急性蕁麻疹、もうひとつは慢性蕁麻疹です。急性蕁麻疹は症状が出てから6週間以内のもの、慢性蕁麻疹は6週間以上のものを指します。

急性蕁麻疹

子どもでは感染症に伴って蕁麻疹が出ることが多く、急性蕁麻疹と診断されることがあります。ほかにもさまざまな原因があり、原因を特定できないまま急性蕁麻疹と診断されることは少なくありません。原因を特定できていなくても、治療によって1ヶ月以内に治ることがほとんどです。

慢性蕁麻疹

慢性蕁麻疹の特徴として、夕方から夜間にかけて症状が出現したり悪化したりすることが知られています。急性蕁麻疹に比べて治療期間が長くなることが多く、数か月かかることも少なくありません。

原因は特定できないことが少なくありませんが、血液検査をすると「自己抗体」が上昇していることがあります。

抗体は体内に侵入した異物を排除する際に活躍します。異物から身体を守るのが本来の抗体の役目ですが、時々何らかの原因で免疫に異常が起こり、自分の身体の一部を敵と認識する抗体ができてしまうことがあります。このような抗体を自己抗体と言います。

慢性蕁麻疹の一部では自己抗体が、つまり異常な免疫が自分自身の身体を攻撃してしまうことが関係していると考えられます。

しかし、自己抗体の関与だけでは慢性蕁麻疹のすべてを説明できません。治療が長引く蕁麻疹の原因は不明なのです。

「原因不明」は「治らない」という意味ではない

原因不明と言われると、難しい病気なのかと不安になるかもしれません。しかし、蕁麻疹の場合は、原因を特定できなくても、一般的な蕁麻疹の治療を受ければ治ることが多いです。

心配な人は、処方された薬や治療法がどんな症状に対するもので、どの程度の効果を期待できるのか、お医者さんに質問してみると良いです。

4. 原因が特定できる蕁麻疹

原因がある程度特定できる蕁麻疹もあります。「刺激誘発性の蕁麻疹」と「血管性浮腫」の2つに分類されます。また、蕁麻疹に似た症状が現れる病気として蕁麻疹関連疾患というものもあります。

刺激誘発性の蕁麻疹は、アレルギー物質や物理的な刺激(こする、冷える、日に当たるなど)によって起こるものを指します。血管性浮腫は血管のむくみが原因で起こる蕁麻疹のことです。かゆみを伴わない場合も多いです。

さらに細かく分類すると次のようになります。

【原因が特定できる蕁麻疹と蕁麻疹関連疾患について】

  • 刺激誘発性の蕁麻疹
    • アレルギー性の蕁麻疹
    • 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
    • 非アレルギー性の蕁麻疹
    • アスピリン蕁麻疹
    • 物理性蕁麻疹
    • コリン性蕁麻疹
    • 接触蕁麻疹
  • 血管性浮腫
    • 特発性の血管性浮腫
    • 刺激誘発型の血管性浮腫
    • ブラジキニン起因性の血管性浮腫
    • 遺伝性血管性浮腫
  • 蕁麻疹関連疾患
    • 蕁麻疹様血管炎
    • 色素性蕁麻疹
    • Schnitzler症候群(シュニッツラー症候群)およびクリオピリン関連周期性症候群(CAPS: Cryoprin-associated Periodic Syndrome)

5. 刺激誘発性の蕁麻疹

特定の刺激が加わったときに現れる蕁麻疹を「刺激誘発性(しげきゆうはつせい)の蕁麻疹」と言います。1日のうちに何回も蕁麻疹が出ることもあれば、数か月症状が出ないこともあります。基本的に、症状は数十分から数時間で消えることがほとんどですが、まれに持続してしまう場合もあります。

刺激誘発性の蕁麻疹の分類を再掲します。

【刺激誘発性の蕁麻疹】

  • アレルギー性の蕁麻疹
  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
  • 非アレルギー性の蕁麻疹
  • アスピリン蕁麻疹
  • 物理性蕁麻疹
  • コリン性蕁麻疹
  • 接触蕁麻疹

それぞれについて見ていきます。

アレルギー性の蕁麻疹

蕁麻疹の数%が、このアレルギー性蕁麻疹であると言われています。アレルギーを誘発する物質(アレルゲン)に触れたり、吸い込んだりすることで、蕁麻疹が出ます。

アレルゲンとなるのは、食べ物・薬品・植物・昆虫などです。アレルゲンにさらされてから、数分ないし数時間以内に蕁麻疹の症状があらわれます。基本的には、アレルゲンを避ければ蕁麻疹は消えます。

ただし、例外もあるので注意が必要です。例えばゴムの成分であるラテックスにアレルギーがある人は、キウイ、バナナ、アボカドなど特定の食品でもアレルギー反応が出ることが知られています。このような場合では、いくらゴムに触れないようにしていても、キウイを食べると蕁麻疹が出ることがあります。ラテックスアレルギーと言われた人は注意すべき食品をお医者さんに確認しておくと良いです。また、食品でアレルギーがある人はラテックスアレルギーかどうかを確認しておくこともお勧めします。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

特定の食べ物を摂ってから数時間以内に運動すると起こるアナフィラキシー反応のことです。原因となる食べ物を食べただけでは症状は現れませんが、摂取後に運動をすると、蕁麻疹、かゆみ、咳、吐き気などの症状が現れます。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因となる食べ物は、日本では小麦やエビがほとんどです。また、この蕁麻疹は、一部の解熱鎮痛剤(非ステロイド系消炎鎮痛薬::NSAIDs)の服用で悪化することがあり、運動しなくても原因の食品と鎮痛剤の組み合わせだけで起こることもあります。食物依存性運動誘発アナフィラキシーの人は食品や運動だけではなく、解熱鎮剤の使用もお医者さんと相談しておくとよいです。

非アレルギー性の蕁麻疹

特定の物質によって蕁麻疹が生じるものの、アレルギーの機序を伴わないことが特徴です。このタイプの蕁麻疹は、検査で原因物質を突き止めることは非常に難しいので、蕁麻疹が出た時の状況から推測します。

アスピリン蕁麻疹

アスピリンを代表とする非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)を飲む、注射する、塗ることで出るタイプの蕁麻疹です。NSAIDsを使ったあと数分から数時間で蕁麻疹があらわれます。また、NSAIDsは、慢性蕁麻疹や食物依存性運動誘発アナフィラキシーといった他の蕁麻疹を悪化させることもあるため注意が必要です。思い当たる節がある人はお医者さんに相談してみてください。

物理性蕁麻疹

物理的な刺激によって出る蕁麻疹です。その種類は次のようにさまざまです。

  • 機械性蕁麻疹:皮膚をこする刺激によって生じる
  • 寒冷蕁麻疹:冷える刺激によって生じる
  • 日光蕁麻疹:日光の刺激によって生じる
  • 温熱蕁麻疹:温まる刺激によって生じる
  • 遅延性圧蕁麻疹:圧迫刺激によって生じる
  • 水蕁麻疹:水に触れることで生じる  など

また、寒冷蕁麻疹の場合はさらに、全身性と局所性に分類されています。全身性では全身が冷えた時に小豆くらいの大きさの赤い皮疹(紅斑)と隆起する皮疹(膨疹)が身体のさまざまな部位に生じるのに対して、局所性では冷えた部分に一致して蕁麻疹が出現します。

コリン性蕁麻疹

入浴、運動、緊張といった発汗するような状況であらわれる蕁麻疹のことを言います。子どもから30代前半頃までの大人によくみられます。数mmから数cmくらいで、かゆみを伴う蕁麻疹が出ますが、ほとんどの場合、数分から数時間で消えます。

一方、体温や発汗とは関係なく、緊張によって出現するアドレナリン性蕁麻疹というものもありますが、コリン性蕁麻疹とは別物です。

接触蕁麻疹

特定の物質と接触することであらわれる蕁麻疹のことです。原因となる物質に触れてから数分から数十分以内に症状が現れて、ほとんどは数時間後に消えます。特定の物質で蕁麻疹が起こることから、アレルギー性の蕁麻疹や非アレルギー性の蕁麻疹と重複する蕁麻疹とも言えます。

6. 血管性浮腫

血管性浮腫(けっかんせいふしゅ)は、その名の通り血管のむくみ(浮腫)により、皮膚や粘膜の限られた範囲に蕁麻疹が現れます。クインケ浮腫とも呼ばれます。

血管性浮腫による蕁麻疹は発症してから数日以内に消えることが多く、顔や目の周り、口などに見られます。かゆみを伴わないこともあります。通常の蕁麻疹と同じようにマスト細胞が関わるものもあれば、ブラジキニンという物質が関わるものがあります。また、血管性浮腫もいくつかの種類に分けられます。

特発性の血管性浮腫

発症原因が不明の血管性浮腫のことです。症状が現れたり消えたりを繰り返し、数日おきに蕁麻疹が見られることが多いとされています。

刺激誘発型の血管性浮腫

原因となる物質にさらされたり、 非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)、ペニシリンなどの薬剤を使用することであらわれる血管性浮腫のことです。原因物質にさらされてから、数時間以内に症状が見られることが多いです。

また、振動の刺激が原因になることもあり、振動蕁麻疹または振動血管性浮腫と呼ばれます。

ブラジキニン起因性の血管性浮腫

ブラジキニンは血管を広げたり痛みを感じさせたりする働きのある物質です。増えすぎると血管から水分が染み出して、皮膚や粘膜に浮腫が生じます。このブラジキニンの量はC1インヒビター(C1-INH)という物質によってコントロールされています。そのため、C1-INHの働きが不足するとブラジキニンが増えてしまい、血管性浮腫が生じやすくなります。痛みやかゆみを伴うことは少ないですが、ケガ、感染、疲労、ストレスなどで症状が悪化することがあります。治療は数週間から数ヶ月かかることが多いです。

遺伝性血管性浮腫

遺伝子の変異によってC1-INHが不足して起こるタイプの血管性浮腫です。C1-INHの量が少ない場合もあれば、C1-INHの働きが弱い場合もあります。症状は皮膚にあらわれることが多いですが、腹痛、下痢、嘔吐などのお腹の症状が出ることもあります。

血管性浮腫で注意が必要な点は、もし喉の奥の気道がむくんでしまった場合、窒息する危険性が高いということです。そのため、もし息苦しさを感じたら救急科のある医療機関をできるだけ早く受診してください。

7. 蕁麻疹関連疾患

病気が引き金となって、蕁麻疹のような皮疹があらわれる場合があり、蕁麻疹関連疾患というグループに分類されます。そのなかでも代表的なものを説明します。

蕁麻疹様血管炎

慢性蕁麻疹と似た病気で、皮疹は24時間以上続きます。跡形もなく消える通常の蕁麻疹と異なり、蕁麻疹様血管炎は皮疹が消えた後に色素沈着が残ります。膠原病の全身性エリテマトーデス(SLE)に近い病気であることがわかっており、SLEの症状としてあらわれたり、蕁麻疹様血管炎からSLEに移行することもあります。

色素性蕁麻疹

皮膚に色素が沈着する蕁麻疹です。マスト細胞(肥満細胞)と呼ばれるアレルギー反応に関連する細胞が皮膚にたくさん集まることで起こります。複数の部位に同時にあらわれることもあります。

色素が沈着している部分を少し強くこすると、その部位が膨らむ「ダリエ徴候」がみられることが特徴です。入浴などの急激な温度変化によって発症することもあります。

Schnitzler症候群(シュニッツラー症候群)およびクリオピリン関連周期性症候群(CAPS:Cryopirin-associated Periodic Syndrome)

シュニッツラー症候群は、慢性蕁麻疹、間欠熱、関節痛(関節炎)、骨痛などを特徴とする非常にまれな疾患です。皮疹は、慢性蕁麻疹あるいは蕁麻疹様血管炎と同じものが見られます。かゆみを伴う場合と伴わない場合があり、その症状はさまざまです。

クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)は、明らかな感染がないにもかかわらず、発熱やだるさ、関節の痛みなどの炎症症状と蕁麻疹に似た皮疹を繰り返すのが特徴の病気です。体内の炎症を制御するcryopyrin 蛋白という遺伝子(CIAS1)の異常によって起こると言われています。

軽症型である家族性寒冷誘発自己炎症性症候群、中間型のMuckle-Wells症候群、重症型のCINCA症候群(chronic infantile neurological cutaneous articular syndrome)に分類されます。

  • 家族性寒冷誘発自己炎症性症候群:全身が冷えることで慢性蕁麻疹に似た皮疹や、発熱、関節痛があらわれます
  • Muckle-Wells 症候群:子どものころから発熱や倦怠感、関節痛などがあらわれ、蕁麻疹が続きます。感音性難聴が進行することも特徴です
  • CINCA症候群:新生児の頃から発症して、全身の皮疹、無菌性髄膜炎、関節炎、感音性難聴などがみられます

これらの病気は稀であるため、専門的な医療機関での検査が必要なことがあります。

参考文献

  • 日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会, 蕁麻疹診療ガイドライン 2018, 日皮会誌:128(12),2503-2624,2018
  • 堀 正二/監修, 坂田泰史/編集, 図解循環器用語ハンドブック第3版, メディカルレビュー社, 2015