肺高血圧症の検査について:心電図、レントゲン、心エコー、カテーテル検査など
肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送るための血管である「
目次
1. 血液検査
血液検査は肺高血圧症の診断に直接結びつくものではありません。しかし、肺高血圧症が疑われるほとんどの人は血液検査を受けることになります。間接的に、肺高血圧症の原因や重症度を推定する重要な情報が得られるからです。
軽症の肺高血圧症では血液検査で全く異常が見られないことも多いです。しかし、重症になってくると心臓の負担を反映して
肺高血圧症は特に原因がなく
さらに、すでに肺高血圧症と診断されて治療を受けている人は、治療薬による副作用で貧血になったり、肝臓の機能に異常が出ることなどもあります。そうした副作用をチェックする目的でも血液検査は有用です。
2. 心電図検査
重症になると、肺動脈の血圧が上がっていることで心臓が受ける負担を反映した異常が見られるようになります。また、心房細動や心房粗動と呼ばれる不整脈が出てくることもよくあります。
3. 胸部X線写真(レントゲン)
4. 心臓超音波(エコー)検査
他の検査から肺高血圧症が疑われた人は、
このように心臓超音波検査は肺高血圧症の診断・治療に欠かせません。しかし、肺高血圧症と確定診断して治療薬を使っていく人は、より精密に肺動脈圧を測定する必要があります。超音波検査よりも精密に測定するためには、下で説明する心臓カテーテル検査が必要となります。
5. 呼吸機能検査
肺高血圧症は肺の血管の病気であるため、空気を吸ったり吐いたりする力が直接ダメージを受ける病気ではありません。しかし、実際には肺高血圧症を引き起こす背景となっている病気によって、肺の機能は正常よりも低下している人が多いです。また、間質性肺炎やCOPDといった肺の病気が進行して肺高血圧症を引き起こしていることがあります。そのため、肺高血圧症の原因となっている病気に対する検査として、呼吸機能検査が行われることもよくあります。
6. 動脈血ガス分析
脚の付け根や手首(親指側)を走る動脈から血液を採取して調べる検査です。これらの動脈は触ってみると脈打っているのが分かると思います。動脈は、酸素を豊富に含んだ血液が心臓から送り出される時に通る血管なので、
肺高血圧症では心臓・肺の血液循環がうまくいかず体内で酸素が不足することがよくあるため、この検査で酸素が不足していないか調べられることがあります。また、肺の病気が原因で肺高血圧症になっていることが疑われる人では、肺が酸素を取り込む能力を調べる意味でもより
7. 肺換気-血流シンチグラム
肺換気-血流
CTEPHの
8. 胸部CT検査
また、
【造影CT検査の注意点】
- 造影剤の注射により重度の
アレルギー を起こすことがある - 腎臓の機能が悪い人や喘息の人には、造影剤を使用できないことがある など
上記のような注意点があるため、メリットとデメリットを考慮したうえで検査を実施するかどうかが判断されます。なお、CT検査には放射線被曝を伴うので、造影剤の有無によらず妊娠中などの人には特に注意が必要です。
9. 胸部MRI検査
10. 心臓カテーテル検査
心臓カテーテル検査は、カテーテルという細い管を血管内に入れて行う検査です。カテーテルは脚の付け根、首、腕などの静脈から入れ、心臓や肺動脈に管の先端を届かせます。こうして直接、心臓や肺動脈にアプローチすることで、様々な検査データを得ることができます。一方で、血管の中に管を通すために皮膚を針で刺したりもするので、身体にも負担のかかる検査と言えます。心臓カテーテル検査で測定できる多くの検査データのうち、代表的なものについて以下に2つ紹介します。
平均肺動脈圧測定
カテーテルの先端を肺動脈内に進めて肺動脈の血圧を直に測定します。心臓超音波検査でも肺動脈の血圧は推定できますが、正確な値を知るためには心臓カテーテル検査による測定が不可欠です。肺高血圧症の診断基準は「安静にしている時、平均した肺動脈の血圧が25 mmHg以上」と定められており、肺高血圧症の診断を確定させるうえで心臓カテーテル検査はとても重要な検査と言えます。
肺動脈造影
肺動脈造影は慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)と呼ばれるタイプの肺高血圧症を調べる際に特に役立ちます。カテーテルから造影剤を流し込むことで1-2mm程度の小さい血栓まで検出できる精度の高い検査です。しかし造影CT検査と同様に、アレルギーや腎臓の機能の問題などで造影剤が使えない人ではできない検査となります。
11. 運動負荷検査
肺高血圧症がどの程度重症か、あるいは治療が効いているかを調べるうえで、肺動脈の血圧を測定することはとても有意義です。しかし、心臓カテーテル検査は身体の負担もある検査なので何度も頻繁に繰り返すことは現実的でなく、簡便で繰り返し行える心臓超音波検査では推定される肺動脈の血圧の精度が十分ではありません。
そこで、6分間でどのくらいの距離を歩けるかなどを調べる「6分間歩行試験」が代用されることがあります。6分間で440m以上歩ける人は治療成績が良いというデータもあり、これがひとつの目標とされることもあります。
その他、室内で自転車をこいでもらって、その間の様々な数値を測定することにより、運動機能をチェックする方法もあります。これは「心肺運動負荷試験」と呼ばれています。
参考文献
肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)(2020.8.20閲覧)