あなふぃらきしー
アナフィラキシー
強いアレルギー反応により、窒息など命の危険が引き起こされた状態
17人の医師がチェック 135回の改訂 最終更新: 2022.03.07

アナフィラキシーとは?症状、原因、治療などを解説

アナフィラキシーは命の危険につながる全身性のアレルギーです。危険な症状に息苦しさ、立ちくらみがあります。数分で死亡することもあるので、すぐに病院を受診してください。アナフィラキシーが疑われた場合、アドレナリン注射や輸液、酸素投与が行われます。

1. アナフィラキシーとはどんな意味なのか?

アナフィラキシーとは命の危険につながる全身性のアレルギーのことです。一般的にはアレルギーというと花粉症食物アレルギーなどを思い浮かべることが多いかもしれません。しかし、医学用語のアレルギーはもう少し幅広い意味をもちます。ここでは「本来、無害であるはずの物質に対して体が有害な反応を起こすこと」を意味しています。

アナフィラキシーは英語ではanaphylaxisと書きます。これは防御を意味するphylaxisという単語に、否定を意味するana-という接頭辞がついたのが語源と言われています。

2. アナフィラキシーショックについて

アレルギー反応により血圧が下がったり、意識を失うような状態をアナフィラキシーショックといいます。アナフィラキシーショックはアナフィラキシーの中でも特に重症な状態であり、疑われる場合にはすぐに病院受診する必要があります。

ショックってどんな状態?

医学用語でショックとは重要な臓器に血流を送れなくなり、命に関わる可能性がある状態を意味します。アナフィラキシーを原因として起こったショックをアナフィラキシーショックといいます。

アナフィラキシーショックに診断基準はあるか?

近年、正確な診断を行うためにさまざまな病気に対して診断基準が設けられるようになっています。アナフィラキシーショックにも診断基準が設けられており、以下のものになります。

  • 以下の3項目のうちいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。
    • 皮膚症状(全身の発疹、掻痒または紅潮)、または粘膜症状(口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)のいずれかが存在し、急速に(数分内〜数時間以内)発現する状態で、かつ以下の症状のうちいずれかを伴う。
      • 呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症)
      • 循環器症状(血圧低下、意識障害
    • アレルゲン(※)となりうるものへの曝露の後、急速に(数分〜数時間以内)、以下の症状のうち2つ以上があらわれる。
      • 皮膚・粘膜症状(全身の発疹、掻痒、紅潮、浮腫
      • 呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症)
      • 循環器症状(血圧低下、意識障害)
      • 持続する消化器症状(腹部疝痛、嘔吐)
    • アレルゲンの暴露後の急速な(数分〜数時間以内)血圧低下を伴う。血圧低下の定義は以下の通り。
      • 平常時血圧の70%未満または
      • 生後1ヶ月〜11ヶ月 収縮期血圧 < 70mmHg
      • 生後1歳〜10歳    収縮期血圧 < 70mmHg +(2×年齢)
      • 11歳〜成人 収縮期血圧 < 90mmHg

※アレルゲンはアレルギー反応を引き起こす物質です。アレルゲンとなるものは個人ごとに異なります。また、アレルギー反応が起きた後に調べてもアレルゲンが特定できない人もいます。またあとで詳しく説明しますが、アレルゲンになる頻度が多いものとしては食べ物、薬剤、虫刺されなどがあります。

参考文献
日本アレルギー学会:アナフィラキシーガイドライン(2022.3.7閲覧)

3. アナフィラキシーはどんな時に疑われるのか

全身に赤みのあるかゆい発疹(蕁麻疹)が出現し、同時に息苦しさやふらつきがあらわれた場合は疑わしいサインです。また、もともとアレルギーのある食べ物を食べた後や蜂などの虫刺され後に上記の症状が現れた場合では更に疑わしくなります。

4. アナフィラキシーの症状

アナフィラキシーで出やすい症状は以下の通りです。

  • じんましん(全身が赤く腫れれる)
  • 皮膚や口などの違和感やかゆみ
  • 腹痛
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 眼の充血
  • 頭痛
  • めまい
  • 動悸
  • 冷や汗
  • 呼吸困難
  • 立ちくらみ

アナフィラキシーではさまざまな症状が現れますが、特に「呼吸困難」、「立ちくらみ」などは危険なサインなのですぐに病院受診するようにしてください。
詳しくは「アナフィラキシーになるとどんな症状が出る?」で説明しています。

アナフィラキシーはどのくらいの時間持続して起こるものなのか?

アナフィラキシーは多くの場合で30分から1時間以内に症状がピークに達し、その後数時間以内に良くなることが多いです。ただし、一度症状が良くなったアナフィラキシーが数時間後に再度症状が現れることがあり、これを二相性アナフィラキシーと呼びます。そのため、アナフィラキシーでは一度症状が良くなった場合でも、二回目のアナフィラキシーが起こらないか様子をみる目的で、元気な状態であっても入院することがあります。
また、アナフィラキシーが軽度で入院とならなかった場合でも、特に最初の24時間は二回目のアナフィラキシーについて注意が必要と言われています。このため、帰宅後にも家族が様子をしっかりと見るようにしてください。

5. アナフィラキシーの原因

アナフィラキシーの原因としては以下のものが知られています。食べ物、医薬品、昆虫に原因が多いです。

  • 食べ物
    • 乳製品
    • 小麦
    • ソバ
    • ピーナッツ
    • その他
  • 医薬品
    • 抗菌薬
    • 局所麻酔薬
    • 解熱鎮痛薬
    • 抗がん剤・生物学的製剤
    • 予防接種
    • 造影
    • 輸血
    • ラテックス
    • その他
  • 昆虫

アナフィラキシーの原因となるものはさまざまなので、日常生活でもいろいろな場面で注意が必要になります。それぞれの原因に詳しくは「アナフィラキシーの原因は蜂?食べ物?」で説明しているので参考にしてください。

6. アナフィラキシーの治療

アナフィラキシーは数分で死亡することもあり、初期の対応が極めて重要です。アナフィラキシーが疑われた場合、アドレナリンの筋肉注射や輸液、酸素投与などが行われます。携帯型のアドレナリン製剤として「エピペン®」があり、アナフィラキシーを経験したことがある人などに対して処方されます。緊急時には「エピペン®」を自分や周りにいる人がで注射しなければならない場面もあります。
詳しくは「アナフィラキシーの治療はアドレナリン注射?治療薬や対処法」で説明しています。

7. アナフィラキシーになったと思ったらどうしたら良いのか

アナフィラキシーは急速に症状が進行することが多く、数分以内に死亡することもあります。そのため、アナフィラキシーが疑われる場合、すぐに医療機関を受診できるよう急いでください。

8. アナフィラキシーガイドライン

近年、どこの病院でも一定水準以上の医療を受けられるようにするため、さまざまな病気に対してガイドライン(治療指針)が作成される時代となっています。日常診療ではガイドラインを参考に治療が行われます。アナフィラキシーも例外ではなく、日本アレルギー学会から2014年に「アナフィラキシーガイドライン」が発表されています。

9. アナフィラキシーで死亡することはあるのか

アナフィラキシーは発症後、数分以内に死亡することがある病気です。そのため、アナフィラキシーが疑われる場合には、すぐに病院を受診をするようにしてください。