あなふぃらきしー
アナフィラキシー
強いアレルギー反応により、窒息など命の危険が引き起こされた状態
17人の医師がチェック 135回の改訂 最終更新: 2022.03.07

アナフィラキシーの原因について:蜂や食べ物など

アナフィラキシーは食品、薬剤、虫刺されなどさまざまな原因で起こります。ここではアナフィラキシーの原因に関して説明します。

1. アナフィラキシーの原因には何があるのか

アナフィラキシーを起こすことが有名なものとしては次のようなものがあります。

  • 食べ物
  • 薬剤
  • 予防接種
  • 造影
  • 輸血
  • ラテックス
  • 虫刺され(蜂やヒアリなど)

食べ物や虫刺されといった日常生活に関わるものから医療行為に関わるものまで、その原因は幅広いです。
以下ではそれぞれの原因について説明していきます。

2. アナフィラキシーを起こしやすい食べ物について

アナフィラキシーを起こしやすい食品として以下のものが知られています。

  • 乳製品
  • ソバ
  • 小麦
  • ピーナッツ

また、人によっては原因となる食物の摂取だけではアナフィラキシーは起こらず、それに加えて食後に運動することでアナフィラキシーを発症します。これを食物依存性運動誘発アナフィラキシーと呼びます。食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは食物摂取後4時間以内の運動で発症することが多いとされます。
これらの食品を摂取してアナフィラキシーを起こした場合は避けるようにしなければいけません。特に外食時には知らぬ間に調理に使われていることがあるので、あらかじめアナフィラキシーを起こした食品を伝えておくとよいです。

参考文献
・Akiyama H, et al. Japan food allergen labeling regulation--history and evaluation. Adv Food Nutr Res 2011;62:139-171

3. 薬剤が原因のアナフィラキシーについて

薬剤はアナフィラキシーの代表的な原因のひとつです。中でもアナフィラキシーを起こしやすい薬剤として以下のものが知られています。

  • 抗菌薬
  • 局所麻酔薬
  • 解熱鎮痛薬
  • 抗がん剤・生物学的製剤

それぞれがどのような治療に用いられるものなのかを説明していきます。

抗菌薬

細菌感染症の治療に用いられる抗菌薬はアナフィラキシーがよく報告される薬剤です。これには日常診療で使用頻度が多いこととも関連しています。

抗菌薬によるアナフィラキシーを防ぐためには「必要のない抗菌薬は処方しない・飲まない」という視点が大事です。抗菌薬は感染症に対して用いられる治療薬ですが、全ての感染症に効果があるわけではなく、風邪などのウイルス感染症には効果がありません。
しかし、実際の診療では風邪に対する抗菌薬処方が後を絶たず、抗菌薬の不適切使用が問題となっています。抗菌薬によるアナフィラキシーを減らす、という観点でも医療者の立場では「不必要な抗菌薬の処方をなくす」姿勢が大事ですし、患者の立場では「風邪をひいた時に抗菌薬の処方を求めない」ということが必要です。

局所麻酔薬

局所麻酔薬は医療の処置でよく用いられる薬剤です。歯の治療などで使われた経験がある人は多いと思います。もし、局所麻酔薬でアナフィラキシーの経験がある方は、処置の前に申告するようにしてください。

解熱鎮痛薬

痛み止めや熱を下げる薬で、病院では「痛み止め」や「熱冷まし」と言われて処方されることも多く、打ち身や捻挫の痛みを抑えたり、高い熱が出たときに用いられます。解熱鎮痛剤でアナフィラキシーを経験した人は、「痛み止め」や「熱冷まし」の薬をもらう前に、アナフィラキシーを経験したことを伝えて別の薬をもらうようにして下さい。

抗がん剤・生物学的製剤

一部の抗がん剤や関節リウマチなどで用いられる生物学的製剤はアナフィラキシーを起こしやすいものがあります。そのため、事前に抗がん剤・生物学的製剤の投与前にアレルギーに対する治療薬を予防的に使うこともあります。

4. 予防接種(ワクチン)とアナフィラキシーの関係について

予防接種は感染症にかかりにくくするうえで重要な予防策です。まれではありますが、アナフィラキシーが起こることがあります。例えば、平成27年シーズンのインフルエンザワクチンによるアナフィラキシーの頻度は、およそ5千万回の接種で8回と報告されています。とはいえアナフィラキシーは命に関わることがあるので万一にも備えておくべきです。アナフィラキシーが起こっていないかを確認のため、予防接種後30分程度は医療機関に留まる必要があります。

参考文献
厚生労働省:医薬品・医療機器等安全性情報339号

5. 造影剤によるアナフィラキシーについて

医療の現場では、検査や治療のために造影剤の投与が行われることがあります。造影剤とは、レントゲンCT検査などの画像検査で見たいものをくっきり写し出すために使う薬剤です。造影剤が用いられる状況としては以下のものが挙げられます。

  • 造影CT検査
  • 造影MRI検査
  • 消化管造影検査
  • 尿路造影検査
  • 子宮卵管造影検査
  • 血管造影検査
  • カテーテル治療

さまざまな検査に必要とされる造影剤ですが、まれにアナフィラキシーを引き起こすことがあります。過去に造影剤によるアナフィラキシーの経験がある場合、同じ造影剤を再度使用するとアナフィラキシーが誘発される危険性があるため、同じ造影剤を用いた検査や治療を受けることはできません。

6. 輸血によるアナフィラキシーについて

輸血もアナフィラキシーの原因となります。特に頻度が多いのは血小板製剤で8,500例に1例程度で起こります。また赤血球製剤は87,000例に1例程度で起こります。

7. 虫刺されが原因となるアナフィラキシーについて

虫刺されが原因でアナフィラキシーが起こることがあります。中でもスズメバチ、アシナガバチ、ミツバチなどハチによる虫刺されに注意が必要です。過去にハチに刺された人が再度刺された時にアナフィラキシーが起こりやすいとされています。

他にも、虫刺されによりアナフィラキシーが起こるため注意喚起されている昆虫にヒアリがあります。ヒアリは体長2.5-6mm程度の赤茶色の有毒のアリで、近年世界各地への侵入・定着が問題となっており、平成29年には日本でも発見されました。刺された場合には刺された部位の非常に強い痛みと腫れが起こり、アナフィラキシーが起こすことがあるとされています。

8. ラテックスによるアナフィラキシーについて

ラテックスは医療用の手袋などに用いられる天然ゴムです。頻度は稀ですが、ラテックスとの接触によりアナフィラキシーを起こす人がいます。このラテックスは診察、医療処置、手術など医療現場で幅広く用いられており、ラテックスに対するアレルギーをもっている場合は事前に医師や看護師に申告することが重要です。