統合失調症の人や家族が知っておくとよいこと
このページでは統合失調症にまつわる疑問や治療を受ける際の注意点、利用可能な社会制度についてまとめています。
1. 統合失調症について知っておくとよいこと

統合失調症は一度は耳にしたことがある病名かもしれません。「精神の病気」ということはなんとなく知っている一方で、それ以上のことは詳しく知られていません。ここでは統合失調症について知っておくとよいことをまとめます。
統合失調症はなぜ起こるのか
統合失調症の原因ははっきりとはわかっていませんが、脳内の電気信号を伝えるドーパミン(ドパミン)や
統合失調症はうつるのか
先に説明したように、統合失調症は脳内の神経伝達物質の異常による病気と考えられています。風邪や結核、ノロウイルス感染症のように人から人にうつる病気ではありません。このため、患者さんと接する際にうつる心配は不要です。
統合失調症になりやすい性格はあるのか
ドイツの精神科医クレッチマー(1888-1964年)は統合失調症の人(発病前)や、その家族には次のような性格の組み合わせが見られやすいと指摘しています。
- 非社交的、静か、控え目、生真面目、変人
- 臆病、繊細、敏感、神経質、興奮しやすい、自然や書物に親しむ
- 従順、善良、温和、無頓着、鈍感
上のリストの性格に該当すると統合失調症を発症しやすいと考えられていますが、傾向をしめしたものにすぎず、必ず統合失調症を発症するわけではないので、気にしすぎないようにしてください。
統合失調症の原因は遺伝なのか
親が統合失調症である子どもが生涯に統合失調症を発病する可能性は約10%とされています。この可能性は一般の人の発病率の約10倍にあたります。発症率の高さから統合失調症の発症には何らかの遺伝的な要因があると考えられていますが、詳しい原因遺伝子などは分かってはいません。
2. 統合失調症の治療について知っておくとよいこと
統合失調症の治療は長期に及ぶことが多く、それにともなって治療にまつわる疑問が生じやすいです。ここでは統合失調症の治療について知っておくとよいことについてまとめます。
統合失調症の治療には入院が必要なのか
妄想や幻覚が強く現れて、外来での治療が難しい人には入院が必要です。また、発病したばかりの人や、症状が急に悪化した人も入院することが多いです。入院しなければ治療できないわけではなく、症状が落ち着いた後には外来でも治療することができます。外来の通院回数は状況に応じて異なり、1週間に1回の人もいれば、3ヶ月に1回の人もいます。一般的には症状が安定してくると、通院の頻度は減ります。
統合失調症は治るのか
統合失調症の人の約半数が治療に効果を示して、社会復帰の目安になる「症状が完全になくなる」または「症状がほとんどなくなる」状態になります。このように、社会復帰が可能になった人のことを「統合失調症が治った」と考えることができます。ここで注意が必要なのは、統合失調症は再発が多いということです。治った人の4人中3人が再発すると言われています。
再発したとしても、治療をすみやかに再開すると症状が落ち着きやすいので、治った後も定期受診で再発の可能性を確認することが大切です。
統合失調症治療薬の副作用について
統合失調症の治療薬(
【統合失調症の治療薬の主な副作用】
症状を抑えるには抗精神病薬が有効ですが、副作用には十分な注意が必要です。できるだけ副作用が少なくてすむようにするために、持病や内服している薬をお医者さんに伝えてください。例えば、持病に糖尿病がある人では、血糖値が上がりにくいタイプの抗精神病薬を選んだり、糖尿病治療の調整を並行することで、血糖値を上がりにくくすることができます。また、副作用と思われる症状が出た時は我慢せずにお医者さんに相談してください。便秘や排尿障害(尿の出にくさ)があれば、抗精神病薬とともに便や尿を出しやすくする薬を使うことで、副作用を抑えることができます。
統合失調症は再発するのか、有効な予防法はあるのか
統合失調症は再発することがある病気です。治療が功を奏しても、発症から2年以内に約75%の人が再発を経験するとされています。有効な予防法は現在見つかってはいないので、再発は避けがたいことも多いのですが、再発したとしてもすみやかに治療を始めると回復が早いとされています。再発かもしれないと心配になった人は、定期受診を待つのではなく、早めに受診することをお勧めします。
統合失調症の治療はお腹の中の赤ちゃんに影響を与えるのか
統合失調症の治療薬の中には、赤ちゃんに先天異常を起こしたり、薬の中毒を起こすものがあります。赤ちゃんへの影響を最小限に留めるために、妊娠中は薬の調整が必要ですが、妊娠前の状態が安定しているほど、薬の調節がしやすくなります。妊娠を考えている人は、まずかかりつけのお医者さん(精神科)に妊娠を希望している旨を伝えて、安定している時期かどうか意見を求めるとよいです。また、妊娠した人は、産婦人科で統合失調症を治療していることを伝えて、精神科のお医者さんからも産婦人科のお医者さんに情報提供をしてもらえるようにしてください。
3. 統合失調症の人が利用できる社会制度について
統合失調症の人は社会制度を利用して社会的・経済的な支援を受けることができます。統合失調症の人が利用できる主な社会制度は次の3つです。
- 自立支援医療制度
- 精神障害者保健福祉手帳
- 障害年金
それぞれの制度では受けられるサービスの内容が異なるので、個別に説明します。
自立支援医療制度
自立支援医療制度は精神疾患の通院治療に使うことができる医療費の助成制度です。助成の対象になる通院治療には外来での診察、投薬、検査、訪問看護、デイケアが含まれます。統合失調症の人は自立支援医療制度の利用が可能で、医療費の自己負担額を1割にすることができます。
自立支援医療制度の申請は市町村の窓口で行うことができます。一般的には次のものが必要です。
【自立支援医療制度の申請に必要なもの】
- 申請書(申請する市町村の窓口で入手可)
- 医師の診断書(申請日から3ヶ月以内に記入されたもの)
- 世帯所得が確認できるもの(課税証明書もしくは非課税証明書)
- 健康保険証
上のリストで入手場所がわかりにくいのは3の「世帯所得が確認できるもの(課税証明書もしくは非課税証明書)」ですが、これも市町村の窓口で手に入れることができます。市町村によっては上のリスト以外の書類が必要となることがあるので、申請前に問い合わせておくとよりスムーズです。また、自立支援医療制度の有効期限は1年なので、毎年忘れずに更新してください。
精神障害者福祉手帳
精神障害者福祉手帳は精神障害を持つ人の自立と積極的な社会参加を促すことを目的とした制度です。精神障害者保険福祉手帳を利用すると、下のリストのような社会サービスを受けることができます。
【精神障害者保健福祉手帳で受けられる主なサービス】
- 一部の税金の控除・減免
- 所得税
- 住民税
- 相続税
- 公共料金の割引:NHK受信料の減免など
地域によっては、各種サービス(施設、タクシー、携帯電話など)の利用料なども減額の対象になります。精神障害者保健福祉手帳の申請は、統合失調症で最初に医療機関を受診した日から6ヶ月以上経過していれば市町村の窓口で行うことができます。
申請書の他に、診断書または証書(障害年金など)の写し、本人の写真が必要です。
統合失調症の治療期間は長いため、経済的な負担が大きくなります。精神障害者保健福祉手帳を利用することで、日常生活の経済的負担を軽減することができます。
障害年金
病気や怪我による障害で、社会的・経済的に困難な状況にある人に障害年金が支給されます。障害年金を受けとることができるのは次の条件を満たしている人です。
- 初診日から1年6ヶ月以上経過している
- 初診日の時点で、公的年金(国民年金、厚生年金、共済年金)に加入している
- 初診日以前の一定期間、保険料を納めている
- 一定以上の障害がある
- 原則として20歳以上65歳未満
統合失調症によって日常生活に支障を来している人は、症状の程度が一定以上であれば障害年金を受給できる可能性があります。症状の程度は「診断書」などによって判断され、障害の程度に応じて、1級(重度)、2級(中等度)3級(軽度)のうちのどれかの等級に当てはめられます。
支給される年金額は「加入している年金の種類」や「障害の等級」によって異なります。また、申請する先も加入している年金によって次のように違います。
【年金の種類ごとの申請先】
| 年金の種類 | 申請先 |
| 国民年金 | 市町村窓口 |
| 障害者厚生年金 | 社会保険事務所 |
| 障害共済年金 | 共済組合 |
必要な書類は申請前に各窓口で確認してください。
参考文献
・尾崎紀夫, 他/編, 「標準精神科医学」, 医学書院, 2018