パニック障害の基礎知識
POINT パニック障害とは
突然発作を起こしてしまい生活に支障が起こる病気です。不安障害と呼ばれる病気のカテゴリーに分類されます。「パニック発作」、「予期不安」、「広場恐怖」が主なパニック障害の症状です。1つ目の「パニック発作」は動悸や発汗、息苦しさを突然感じることです。多くは数十分で、長くても1時間以内には自然に収まります。2つ目の「予期不安」は「パニック発作がまたくるのではないか」という不安や心配を感じ続けてしまうことです。 3つ目の「広場恐怖」は発作が起こったときにすぐに助けが求められなかったり、すぐに逃げ出せなかったりする状況に対する恐怖です。広場でのみ感じるのではなく乗り物、人混みなど他の状況でも恐怖を感じます。パニック障害は症状から診断が行われます。似たような症状が現れる病気が他にもあるので、パニック障害以外の病気の可能性が低いことを調べあげることも重要です。薬物治療と認知行動療法(あえて不安症状が起こる状況に身を置くこと)が中心になります。早期治療が順調な回復につながるので、パニック障害が疑われる場合は、早めに精神科や心療内科を受診してください。
パニック障害について
- 突然のパニック発作を起こし、生活に支障が起こる状態
- 「不安障害」の中の一つ
- かつては心理的な状態や周囲の環境などが原因と考えられていたが、現在では、脳の情報伝達物質の異常も強く関わっているのではないかと考えられている
- 「また
発作 がおこるのではないか」と不安になったり(予期不安)、「発作が起こったときに助けが求められない状態に対する恐怖」(広場恐怖)を感じる - 頻度
- 国内のデータでは、生涯のうちに1.8%の人が不安障害を経験すると言われている
- 国内のデータでは、生涯のうちに0.8%の人がパニック障害を経験すると言われている
- 若い女性に多い(最近男性にも増えてきた)
- 海外のデータでは近年
罹患率 が増えてきていることが示されている
パニック障害の症状
- パニック障害の3大
症状 - パニック発作
- 予期不安
- 広場恐怖
- パニック発作
動悸 - 汗をかく
- 息苦しくなる、窒息するような気分になる
- 吐き気
- めまい、ふらつき、気の遠くなるような感じがする
- 腹痛や腹部の不快感
- 現実感がなくなったり、自分が自分でないような感覚(離人感)を覚える
- 身震いしたり、手足が震えたりする
- 自分がおかしくなってしまう、死んでしまうのではないかという恐怖
- いきなり起こる、予期できない
発作 であるのが特徴
- 予期不安
- 「パニック発作がまた来るのではないか」と心配・不安に思い続けてしまう
- 発作が起きやすい場所や状況を避けるようになり、行動が制限される
- 発作の意味を心配・不安に思ってしまう
- 心臓発作を近いうちに自分は起こすのではないか
- そのうち自分の頭が変になってしまうのではないか
- 広場恐怖
- 発作が起こったときにすぐに助けが求められなかったり、すぐに逃げ出せなかったりする状況に対する恐怖
- 広場恐怖という名前であるが、上記の条件を満たせば、さまざまな状況で起こりうる(乗り物、人混み、単独での外出、行列、高速道路、美容院、歯医者、会議、
MRI 検査など) - 外出・通勤ができず生活に支障がでる
パニック障害の検査・診断
パニック障害の治療法
- 主な治療
- 治療は、薬物療法と
認知行動療法 を組み合わせて行う - 薬物療法
- パニック発作を抑えることが目的
- 抗うつ薬 (SSRI) やベンゾジアゼピン系
抗不安薬 が有効
- 認知行動療法
- あえて不安
症状 が生じる状況に身を置き、少しずつ不安に慣れていく - 徐々にステップアップしながら広場恐怖を克服したり、パニック発作を心配しないように自分に言い聞かせるトレーニングをする
- 不安への対処法も身につけることが望ましい
- 不安をやり過ごし、通り過ぎるのを待つ
- 不安から注意をそらす(不安への過度の注目を減らす)
- 深呼吸などのリラクセーション法を習得する
- 患者さんと医師でよく話し合って決める
- パニック発作で死ぬようなことはないという認識を持つ
- 認知行動療法は、薬物療法と同じくらい効果が見込める
- 以前は過呼吸の症状に対して紙袋を口に当てるペーパーバッグ法が用いられていたが、窒息や
失神 のリスクがあるため現在では推奨されていないパニック発作を誘発するため、カフェイン摂取は避ける
- あえて不安
- 治療は、薬物療法と
- 長期的な経過
- 早期治療が早期の回復へとつながる
パニック障害に関連する治療薬
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- 脳内の神経伝達を改善し、意欲を高めたり、憂鬱な気分などを改善する薬
- うつ病では脳内のセロトニンなどの神経伝達物質の働きが不調となり、意欲の低下、不安などの症状があらわれる
- シナプス前終末から遊離(放出)された神経伝達物質は、自身の受容体へ作用(結合)することで情報が伝達されるが、遊離された神経伝達物質の一部はシナプス前終末へ回収(再取り込み)される
- 本剤は脳内でセロトニンの再取り込みを阻害しセロトニンの働きを増強することで抗うつ作用などをあらわす
- 本剤はセロトニンの働きが深く関わるとされる強迫性障害やパニック障害などに使用する場合もある
パニック障害の経過と病院探しのポイント
パニック障害が心配な方
パニック障害は精神疾患の中でも頻度が高く、内科などで診断や初期治療を受けることがありますが、その中でもうつ病や双極性障害を併発したり、区別がつきにくい場合などがあり、その場合は専門家による診断が有効です。パニック障害を主に診療する専門医は精神科専門医です。精神科には精神保健指定医という国家資格と精神科専門医という学会認定資格があり、そのどちらかを持っている医師であれば診療できます。
パニック障害に関連する専門科は精神科および神経科(精神神経科)、メンタルヘルス科、一部の心療内科です。神経科と神経内科は異なりますが、パニック障害を診療するのは神経科の方になります。
突然強い不安や恐怖におそわれて、息苦しさや震えといった症状が出現した状態をパニック発作と呼びます。パニック発作では、ひとまず症状を落ち着かせることが治療の目的になることと、パニック障害ではなくその他の原因(体の病気など)が発作の原因になっていないかを調べるために、救急の外来を受診することが多いかと思います。パニック発作ではなく、その場では症状が落ち着いているパニック障害の治療のためであれば、近くの精神科クリニックの受診が適切です。
パニック障害は主に問診により診断される病気ですが、パニック障害と診断する前に似た症状を引き起こす身体の病気の有無を血液検査や心電図、MRIなどで確認することが一般的です。血液検査であれば、総合病院の精神科ではなく精神科専門のクリニックであっても対応できるところは多いです。
パニック障害でお困りの方
パニック障害の治療は主に抗うつ薬や抗不安薬を中心とした薬物療法と、不安階層表などを用いた心理療法(カウンセリング)を行います。パニック障害の治療に限らず精神科医療は個々の医師により治療方針や薬剤の使い方、心理療法の導入のタイミングなどが違う場合があります。古くからある薬を使う先生もいれば、最新の心理療法に取り組む先生もいて、どれが治療結果がいいということが一概に言えないので、それぞれの患者さんに最善と思われる治療をしています。ですので、医療機関が変わると同じパニック障害の診断でも薬や治療が変わる場合もあります。
大病院であるほど良い治療が受けられるということはありませんので、病院の通いやすさや主治医との相性などを考慮して医療機関を選ぶことが大切です。