きかんしぜんそく
気管支喘息
アレルギーなどで空気の通り道(気道)に炎症が起こることで、気道が狭くなってしまう病気
25人の医師がチェック 272回の改訂 最終更新: 2024.10.23

気管支喘息の基礎知識

POINT 気管支喘息とは

気管支喘息は主にアレルギーによって気道(口から肺までの空気の通り道)が狭くなる病気です。しつこい炎症が起こることにより気道が狭くなっているところに、急激な刺激を受けるとさらに気道は狭くなります。これを増悪(発作)といい、呼吸の状態は非常に悪くなります。そのため気管支喘息の治療は、慢性的な炎症を起こさせないことと、増悪から素早く解放することの両方を満たす必要があります。主な症状は息切れ・咳・喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー、ヒューヒューなどの音がすること)などです。 必要に応じて、呼吸機能検査や気道可逆性試験、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)検査などを行って診断します。治療には増悪を起こしにくくする治療と増悪を和らげる治療があります。気管支喘息が心配な人や治療したい人は、内科を受診して下さい。内科の中では特に呼吸器内科が専門に扱っていることが多いです。

気管支喘息について

  • 主にアレルギーによって空気の通り道(気道、気管支)に慢性的炎症が起きることにより、気道が狭くなって呼吸がしにくくなる病気
  • 健常の人と比べて気道が過敏になっており、気道が刺激を受けると狭くなりやすい(気道過敏性の亢進)
    • 気道感染やホコリなどの刺激が加わると、さらに気道がむくんだりギューっと縮まったりするために息苦しさが生じる(喘息増悪)
  • 喘息の原因にはアレルギー反応による炎症が大きく関わっている
    • 喘息患者は何らかのアレルギーをもつことが多いが、明らかなアレルギーのない喘息患者も存在する 
    • アレルギーとは自身の免疫が体に有害に働くこと
  • アレルギーを起こす原因物質(アレルゲン)の例
    • ダニ、ハウスダスト(目に見えない細かいホコリ)
      • ハウスダストがエアコンなどに溜まってまき散らされる場合がある
    • 犬や猫などのペット
    • 食べ物
    • 職業上触れる化学物質など(職業性喘息
  • 喘息増悪を起こす誘因の例
    • 風邪などの気道感染症
    • 喫煙
    • アルコール
    • ストレス
    • 大気汚染
    • 寒暖の差
    • 運動
    • 月経
    • 薬(特に解熱鎮痛薬に注意が必要)
  • NSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれる種類の解熱鎮痛薬が喘息を起こすことがある(アスピリン喘息
    • アスピリン(商品名:バファリンA、バイアスピリンなど)
    • ロキソプロフェン(商品名:ロキソニンなど)
    • イブプロフェン(商品名:ブルフェン、バファリンプレミアム、イブクイック、イブA、ナロンエースT、ノーシンアイなど)
    • ジクロフェナク(商品名:ボルタレンなど)
    • モフェゾラク(商品名:ジソペインなど)
    • ブプレノルフィン(商品名:レペタン、ノルスパンなど)
    • ケトプロフェン(商品名:モーラス、エパテック、ミルタックスなど)
    • フルルビプロフェン(商品名:ゼボラス、アドフィード、ヤクバンなど)
    • エスフルルビプロフェン(商品名:ロコアなど)
    • 飲み薬だけでなく、NSAIDsを使った外用薬(貼り薬や塗り薬など)でも起こることがある
  • 気道が狭くなっても、適切な治療や時間経過と共に炎症が落ち着けばまた元に戻るが、年単位の長期間で炎症が持続した状態のまま経過すると気道の構造が変化して狭くなり、元に戻りづらくなる(気道のリモデリング)
  • 頻度
    • 日本では子供の9-14%、大人の6-10%程度が喘息患者と考えられている
    • 小児期に発症したものは、半数以上が思春期までに改善するとされている
    • 改善する子供としない子供の違いは不明
    • 中年以降に初めて喘息を発症する例もある
  • 子供に多い原因はわかっていない
    • 遺伝によって生まれつき喘息になりやすい体質の赤ちゃんがいると考えられている
    • 両親が喘息のときは子供も喘息になりやすい
    • 赤ちゃんは免疫のしくみができる途中なので、感染などによって影響を受けやすいと考えられる
  • 気管支炎喘息のような症状(喘鳴、ゼーゼー)が出ていることを「喘息気管支炎」と呼ぶ場合があるが、医学的に正確な言葉ではない
  • 喘息発作」という用語はが一般的だが、医学的には「喘息増悪(ぞうあく)」と呼ばれるようになってきている
  • 心不全による肺水腫で呼吸困難になることを「心臓喘息」と呼ぶ場合があるが、気管支喘息ではない
    • 心不全では心臓が肺の血液を全身に送り出すことができず、肺に水が溜まってしまうことがある(肺水腫
    • 肺水腫では呼吸がうまくできず息苦しくなるが、気管支喘息とは異なる病気である
  • 息がゼーゼー鳴る症状を喘鳴(ぜんめい、英語でwheeze ウィーズ)と言い、病名としての喘息(asthma アズマ)とは区別する
    • 喘息には喘鳴以外の症状もあり、喘鳴は喘息以外の病気でも出る
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気管支喘息の症状

  • 発作的におきる息苦しさ、咳
  • 「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音(喘鳴ぜんめい)がすることがある
  • 発作は夜間、明け方に多くみられることが特徴
  • 呼吸不全がきわめて重症の場合は死に至ることもある
    • 喘息による死亡は日本で年間1,000-2,000人
    • 死亡する人は65歳以上の高齢者が大半
    • 子供が喘息で死亡することは非常にまれ
  • 心不全COPDでも似たような症状がみられるため鑑別が重要
症状の詳細

気管支喘息の検査・診断

  • 最も重要なのは問診で、上記のような喘息に特徴的なエピソードがあるかどうか、またアレルギーや家族歴など喘息発症する因子があるかどうかを尋ねる
  • 主な検査
    • 呼吸機能検査:肺活量や、息を吐くときの空気の通りやすさを調べる
    • 気道可逆性試験:気管支を広げる薬を使って、使用前後で肺活量が改善するかどうかを調べる
    • 血液検査:アレルギー性の炎症が起きているか、アレルギー体質の有無の確認をする
    • 喀痰検査:痰の中に好酸球というアレルギーに関わる細胞が増えているかどうかを調べる
    • 胸部レントゲン喘鳴をきたす他の疾患がないか調べる
    • 胸部CT喘息以外の肺の病気が無いかどうか、レントゲンよりもより詳しく調べる
    • 気道過敏性試験:軽い喘息発作を起こす薬を吸入して、息を吐き出す量が低下するかどうかを調べる
    • 呼気一酸化窒素濃度 (FeNO) 検査:気道にどれくらいアレルギー性の炎症があるかどうかの目安を調べる
  • 自宅で喘息の状態を管理する検査
    • ピークフローメーター:息を吐くスピードを自分で自宅で検査できる器具。値が低いときは喘息の状態が悪くなっていると判断できる
    • パルスオキシメーター:体内に酸素が足りているかどうか自宅で検査できる器具。不足しているときは重い喘息増悪の可能性が高い
検査・診断の詳細

気管支喘息の治療法

  • アレルギーの原因になる物質を生活環境から除く
    • 部屋をこまめに掃除する、じゅうたんを敷かない、ペットを飼育しない、など
  • 市販の漢方薬などに咳などの症状を和らげるものがあるが、処方薬の代わりにはならない
    • 市販薬には喘息の人が使ってはいけないものや副作用で喘息を引き起こすものも多く注意が必要
    • 特に痛み止めや解熱薬に含まれているNSAIDsは、アスピリン喘息患者では増悪の原因となる
    • NSAIDsは非常に多くの痛み止めや解熱薬に含まれているので注意が必要   ただし、NSAIDsでも内服可な薬剤や、NSAIDs以外でも高用量では危険な薬剤(アセトアミノフェンなど)もあるので、アスピリン喘息と言われている場合には、解熱薬・鎮痛薬に関して市販のものでも医師に相談するべき
    • 薬局で喘息の治療薬を買うには病院・クリニックで処方箋をもらう必要がある
  • 喘息の治療薬は2種類ある
    • 喘息で起きている慢性的炎症を落ち着けて増悪が起こらないようにする治療薬(コントローラー)
    • 喘息発作が起こったときに気道(気管支)を拡げ、息苦しさなどの症状を抑える治療薬(リリーバー)
  • 治療は発作が起こらないようにすることが目標であり、コントローラーが重要
    • 軽くても発作が月1回以上起こる場合はコントローラーが必要
    • 予防を怠り、増悪時の治療薬のみを使い続けると、増悪自体も治りにくくなり重症化しやすくなる
  • 薬には飲み薬や吸入薬、貼り薬、注射薬などがある
    • 患者の年齢や認知機能、発作の頻度などに合わせて最適な薬を選択する
    • 吸入薬を処方されるときは吸入方法の説明があるが、最初の説明が不十分だったり続けているうちに忘れてしまったりする人も多い
      • 吸入方法が間違っていると効きにくいなどの原因にもなる
      • 定期的に薬剤メーカーのウェブサイトや動画サイトなどで吸入方法を確認する
  • 吸入ステロイド:コントローラーとして治療の中心になる
    • ブデソニド(商品名:パルミコート)
    • シクレソニド(商品名:オルベスコ)
    • モメタゾン(商品名:アズマネックス)
    • ベクロメタゾン(商品名:キュバール)
    • フルチカゾンプロピオン酸エステル(商品名:フルタイド)
    • フルチカゾンフランカルボン酸エステル(商品名:アニュイティ)
    • 吸入ステロイドの副作用は刺激感、嗄声(しわがれ声)、口腔カンジダ症など
    • ステロイド薬副腎皮質ホルモンをもとに作られた薬で、体のホルモンバランスに影響する場合があるが、吸入で体に入る量はわずかなので、飲み薬や点滴のステロイド薬に比べると全身の副作用はごく少ない
  • 長時間作用型β2刺激薬(LABA):コントローラーとして使う
    • サルメテロール(商品名:セレベント)
      • 基本的に吸入ステロイドと一緒に使うべきである
    • LABAの副作用は頭痛、動悸不整脈、まれに脱力感など
  • 吸入ステロイドとLABAが配合された吸入薬も使われている
    • サルメテロール・フルチカゾン(商品名:アドエア)
    • ホルモテロール・ブデソニド(商品名:シムビコート)
      • 発作の予防的使用に加えて、作用発現が早いため発作時にも対応できるとされる
    • ホルモテロール・フルチカゾン(商品名:フルティフォーム)
    • ビランテロール・フルチカゾン(商品名:レルベア)
  • ロイコトリエン拮抗薬:コントローラーとして使う
    • プランルカスト(商品名:オノン)
    • モンテルカスト(商品名:キプレス、シングレア)
    • ロイコトリエン拮抗薬の副作用は吐き気、腹痛、下痢など
      • まれな副作用に眠気、生理不順など
  • テオフィリン製剤:内服薬は主にコントローラーとして使う
    • 気道を広げる作用がある
    • 商品名:テオドール、テオロング、ユニフィルなど
    • テオフィリン製剤の副作用は吐き気、頭痛、不眠、めまい、動悸など
  • 抗アレルギー薬:コントローラーとして使われることがある
  • 長時間作用型抗コリン薬(LAMA):コントローラーとして使われることがある (商品名:スピリーバ レスピマット)
  • 吸入ステロイドとLABA、さらにLAMAの3剤が配合された吸入薬も使われている
    • ビランテロール・フルチカゾン・ウメクリジニウム(商品名:テリルジー)
    • インダカテロール・モメタゾン・グリコピロニウム(商品名:エナジア)
  • 重症の人を対象とする注射薬のオマリズマブ(商品名:ゾレア)が2009年に承認された
    • 非常に高価(1回の注射で薬価が5万円以上になることもしばしば)
  • 重症の人にはアレルギー反応に関わる因子であるIL-5やIL-4/13、TSLPを抑える注射薬が用いられることもある
    • メポリズマブ(商品名:ヌーカラ)、ベンラリズマブ(商品名:ファセンラ)、デュピルマブ(商品名:デュピクセント)、テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア)
    • いずれもゾレア同様に薬価が非常に高い
  • 短時間作用型β2刺激薬(SABA):リリーバーとして使う(増悪時の治療)
    • 素早く気道を広げる
    • サルブタモール(商品名:サルタノール、アイロミール、ベネトリン)
    • プロカテロール(商品名:メプチン)
    • フェノテロール(商品名:ベロテック)
    • 副作用に動悸、吐き気、頭痛、ふるえなど
  • ステロイドの点滴、内服:主にリリーバーとして使う(増悪時の治療)
    • 炎症を抑える
    • 副作用に高血糖感染症など多数
      • リリーバーとして使う場合は短期間の使用なので長期使用に比べると副作用は少ない
治療法の詳細

気管支喘息に関連する治療薬

ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)

  • 体内のアレルギー反応を抑え、気管支を広げ喘息による咳の発作などを起こりにくくする薬
    • 喘息は体内のアレルギー反応によって気管支などに炎症が生じ、気道が狭くなることで咳などの症状があらわれる
    • 体内でアレルギー反応などに関わるロイコトリエンという物質は気管支を収縮させる作用などをもつ
    • 本剤はロイコトリエンの作用を阻害し、気管支を広げる作用などをあらわす
  • 本剤はアレルギー性鼻炎などに使用する場合もある
ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)についてもっと詳しく

テオフィリン製剤

  • 気管支の拡張や呼吸中枢の刺激作用などにより喘息や気管支炎などの咳や息苦しさなどを改善する薬
    • 喘息では気管支などの炎症により気道が狭くなっており咳の発作などの呼吸症状があらわれる
    • 気管支を広げる作用をもつ体内物質にcAMPがあり、PDEという酵素により別の物質に変換されてしまう
    • 本剤はPDEを阻害することでcAMPの濃度を高め気管支を広げる作用をあらわす
  • 本剤は抗炎症作用や中枢神経刺激作用など多くの作用をもつとされる
テオフィリン製剤についてもっと詳しく

抗ヒスタミン薬(内服薬・注射剤・貼付剤)

  • 神経伝達物質ヒスタミンの働きを抑えることでアレルギー反応を抑え蕁麻疹、花粉症、喘息などによる、皮膚の腫れや痒み、鼻炎(くしゃみや鼻みずなど)、咳などの症状を改善する薬
    • 蕁麻疹、皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息などでは何らかの原因によって体内でアレルギー反応が起こり症状があらわれる
    • 神経伝達物質のヒスタミンはアレルギー反応を引き起こす体内物質のひとつ
    • 本剤はヒスタミンの働きを抑える作用(抗ヒスタミン作用)をあらわす
  • 抗ヒスタミン作用に加え、ほかの作用によってもアレルギー反応を抑える薬剤もある
抗ヒスタミン薬(内服薬・注射剤・貼付剤)についてもっと詳しく

気管支喘息が含まれる病気

気管支喘息のタグ

気管支喘息に関わるからだの部位