りょくないしょう
緑内障
眼球内部の圧力が上がることで、眼の視神経に障害が生じ、視野に障害が出る病気
9人の医師がチェック 172回の改訂 最終更新: 2023.03.28

緑内障の原因について

緑内障は眼圧の上昇によって視神経が障害されてものが見えにくくなる病気です。眼圧とは眼球の圧力のことで、眼の硬さと表現されることもあります。ここでは眼圧の役割や眼圧が上昇するメカニズムを中心に説明します。

1. 緑内障の原因について:眼圧が上昇するメカニズムなど

緑内障は眼圧の上昇によって視神経(目で見た情報を脳に伝える神経)が障害される病気です。眼圧とは眼球の中の圧力のことで、眼の硬さと表現されることもあります。眼圧についての詳しい説明や、眼圧が上昇するメカニズムについて説明します。

眼圧と房水の関係について

眼圧には目を球状に保つという重要な役割があります。 わかりやすくするために、眼球を風船に例えて考えてみます。風船は空気を入れると丸く張りのある状態になり、空気が抜けるとシワシワの張りのない状態になってしまいます。この空気によって作られる風船の張りが、眼球でいうところの眼圧であり、また、風船の例でいう空気にあたるのが、眼球の中にある房水(ぼうすい)という水分です。

房水の役割の1つが眼圧をつくることです。房水は毛様体という場所から分泌され、隅角を通り線維柱帯という場所で吸収されます。分泌と吸収が絶えずバランスよく行われることで、房水の量は一定の範囲で調整されており、眼圧も一定に保たれています。

房水の量が増加すれば、眼圧が上昇します。また、眼圧が高くなりすぎると、眼球に接している神経に過剰な圧力がかかり、神経がダメージを受けます。一方で、眼圧が低ければ、眼球は球状を保てずに、縮んでしまいます。

【眼圧の成り立ち(目の断面図)】

眼圧の成り立ちと緑内障

眼圧の上昇を招く房水の増加はどのようにして起こるのか

房水の量が増えてしまうと、眼圧の上昇につながります。房水の量が増える原因は主に次の2つです。

まず、房水が流れ出なくなるメカニズムについて説明します。

房水の出口付近を隅角(ぐうかく)といいます。隅角は角膜(黒目の表面)と虹彩(茶色目の部分)が接する部位です。正常な状態では、目の中を流れてきた房水は最後に隅角を通過して、目の外に流れ出ます。しかし、何らかの原因で隅角が狭くなったり閉じてしまうと、房水の流出がせき止められて、目の中の房水の量が正常より多くなります。房水の量が多くなると、眼圧が上昇し、緑内障が起こります。

このパターンで起こる緑内障が「閉塞隅角緑内障」です。

次に、房水の吸収が悪くなるメカニズムです。

房水の吸収が行われる、線維柱帯という場所の異常によって起こります。 隅角での流れはスムーズであっても、その先の線維柱帯が目詰まりを起こして房水の吸収が悪くなると、眼球の中の房水が増えてしまいます。隅角が狭くなる「閉塞隅角緑内障」と同じく、房水量の増加によって、眼圧が上昇し緑内障が起こります。

このパターンで起こる緑内障が「開放隅角緑内障」です。

2. 緑内障の発病の危険性を上げる病気について

糖尿病」と「高血圧症」は緑内障の発病の危険性をあげると考えられています。この2つの病気は生活習慣病として耳にしたことがあるかもしれません。糖尿病高血圧症の要点や緑内障との関係について説明していきます。

糖尿病

糖尿病は血液中の糖分の濃度を下げるインスリンの作用が不足して、血糖値が高い状態続く病気のことです。全身にさまざまな問題を起こすことが知られています。目にも影響があり、緑内障のきっかけになると考えられています。

糖尿病の人が緑内障になるのをなるべく防ぐには「糖尿病自体をしっかり治療すること」が重要です。具体的には、食事療法や運動療法、薬物療法によって血糖値を正常に保ちます。

また、糖尿病の治療とともに「目の定期的な検査」もしてください。定期的な検査で緑内障に早く気づいてすみやかに治療すれば、視野への影響が少なくてすみます。糖尿病の詳しい説明は「糖尿病の詳細情報ページ」を参考にしてください。

高血圧症

高血圧症は血圧の上昇によって身体に悪影響がおよぶ病気のことです。医学的には血圧が次の状態であるとされます。

  • 病院や健康診断などで測定した血圧
    • 収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上
  • 自宅で測定した血圧
    • 収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上

血圧の上昇と眼圧の上昇は関係があると考えられています。眼圧をできるだけ上げないためには、高血圧症にならないこと、すでに高血圧症の人はきちんと治療することが大切です。

高血圧症の治療も糖尿病と同様に、食事療法や運動療法、薬物療法によって行うことができます。高血圧症の詳しい説明は「高血圧症の詳細情報ページ」を参考にしてください。

【参考文献】

・UpToDate Open-angle glaucoma: Epidemiology, clinical presentation, and diagnosis Author:Deborah S Jacobs, MD
・UpToDate Angle-closure glaucoma Author:Jennifer S Weizer, MD