非小細胞肺癌でプラチナの次に使う薬はニボルマブかドセタキセルか?
肺がんの治療ではさまざまな抗がん剤を使います。ニボルマブとドセタキセルも使われる場面があります。ある場合にニボルマブが優れているとした試験で、対象者をさらに追跡した結果が報告されました。
ニボルマブ、ドセタキセルとは?
ニボルマブ(商品名オプジーボ®)は、
ドセタキセル(商品名タキソテール®など)はニボルマブより前から使われている
プラチナ製剤使用後の非小細胞肺癌に対するニボルマブまたはドセタキセル
多国間で行われた2件の研究の結果が、専門誌『Journal of Clinical Oncology』に報告されました。
2件とも、
それぞれの結果は別に報告されています。どちらもニボルマブのほうがドセタキセルよりも1年間生存した人の割合が多いなどの結果となりました。前の報告からさらに追跡を続け、また2件をまとめた検討の結果がここで改めて報告されました。
2年生存もニボルマブが多く、有害事象も少ない
次の結果が得られました。
2年全生存率は、肺扁平上皮癌に対してニボルマブで23%(95%信頼区間16%-30%)、ドセタキセルで8%(4%-13%)、扁平上皮癌以外の非小細胞肺癌に対してニボルマブで29%(24%-34%)、ドセタキセルで16%(12%-20%)だった。
[...]治療関連有害事象の率はニボルマブのほうがドセタキセルより低かった(すべてのグレード:68% vs 88%、グレード3または4:10% vs 55%)。
2年間生存した人の割合を比較すると以下のようになりました。
- 扁平上皮癌に対して
- ニボルマブ:23%
- ドセタキセル:8%
- 扁平上皮癌以外の非小細胞肺癌に対して
- ニボルマブ:29%
- ドセタキセル:16%
2件を合わせて、副作用やほかの原因などによる症状など(有害事象)を比較したところ、何らかの有害事象が現れた人はニボルマブで68%、ドセタキセルで88%でした。入院が必要な程度以上の有害事象が現れた人はニボルマブで10%、ドセタキセルで55%でした。
研究班は「以前に治療されている進行非小細胞肺癌の患者で、ニボルマブはドセタキセルに比べて長期の臨床的利益と良好な忍容性プロファイルを提供する」と結論しています。
ドセタキセルよりニボルマブ?
プラチナ製剤使用後の非小細胞肺癌患者に対してドセタキセルとニボルマブを比較した研究を紹介しました。条件に当てはまる人ではニボルマブを優先する根拠とすることができるかもしれません。
ただし、類推をあらゆる場合に当てはめて「ドセタキセルよりニボルマブのほうが効く薬だ」とまでは言い切れません。がん治療薬の働きは複雑なので、がんの種類などが違えば優劣は変わる可能性があります。
またニボルマブに近いしくみで働くペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ®)は、条件に合う人なら最初の治療薬として使う場合があります。ひとつの薬の使用後は似た薬を使っても効かないだろうと見る考え方があるため、最初にペムブロリズマブ、次いでプラチナ製剤を使ったあと、3番目にドセタキセルを使うことはあってもニボルマブは使わないと判断される場面はあるかもしれません。
がん治療薬の選択は複雑です。細かい条件を決めて比較し検証することで、さまざまな場合の判断を助けるデータが積み重ねられています。
執筆者
Nivolumab Versus Docetaxel in Previously Treated Patients With Advanced Non–Small-Cell Lung Cancer: Two-Year Outcomes From Two Randomized, Open-Label, Phase III Trials (CheckMate 017 and CheckMate 057).
J Clin Oncol. 2017 Oct 12. [Epub ahead of print]
[PMID: 29023213]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。