イングランドの2型糖尿病患者12万人の統計
イギリスの研究班が、イングランドの統計データをもとにした研究を医学誌『CMAJ』に報告しました。
この研究は、イングランドで行われた患者追跡調査の結果を使い、2003/2004年の冬から2009/2010年の冬にかけての7年間のデータを解析しました。成人の2型糖尿病患者124,503人を対象者としました。
対象者の中でインフルエンザワクチンを打った人と打たなかった人を比較して、病気や死亡率に違いがあるかを調べました。
入院、死亡を防ぐ効果
次の結果が得られました。
共変数および残余交絡を調整したのち、ワクチン接種は脳卒中(発生率比0.70、95%信頼区間0.53-0.91)、心不全(発生率比0.78、95%信頼区間0.65-0.92)、肺炎またはインフルエンザ(発生率比0.85、95%信頼区間0.74-0.99)による入院率および、全死因死亡率(発生率比0.76、95%信頼区間0.65-0.83)が有意に低いこと[...]と関連した。
インフルエンザワクチンを打った2型糖尿病患者では、打たなかった患者と比べて以下の病気による入院や全体としての死亡率が低くなっていました。
- 脳卒中による入院:0.70倍
- 心不全による入院:0.78倍
- 肺炎またはインフルエンザによる入院:0.85倍
- 全体としての死亡率:0.76倍
持病がある人はインフルエンザに注意!
2型糖尿病患者ではインフルエンザワクチンを打った人で死亡率などが低かったという報告でした。
以前から、以下に当てはまる人はインフルエンザにかかると肺炎などの悪化した状態につながりやすいため、優先的にワクチン接種の対象とされるべきと報告されています。
- 生後6か月から59か月の乳幼児
- 50歳以上
- 慢性的な病気がある
- 呼吸器の病気(喘息や肺気腫など)
- 心臓の病気(高血圧のみの場合は除く)
- 腎臓の病気
- 肝臓の病気
- 神経の病気
- 血液の病気
- 代謝性疾患(糖尿病など)
- 免疫が極端に弱っている
- 免疫抑制薬使用中、HIV感染症など
- 体格指数(BMI)が40以上
- インフルエンザの流行期間中に妊娠している、もしくは妊娠を計画している
- 生後6か月から18歳の子供で、アスピリンを使った長期治療中
- インフルエンザにかかるとアスピリンがライ症候群を引き起こす恐れがある
- ナーシングホームなどの長期ケア施設に入居している
- 脾臓の摘出後
リストの中に糖尿病も挙げられています。糖尿病になると一般に感染症に弱くなるため、インフルエンザに限らず注意が必要です。
予防接種でインフルエンザの危険性を減らすことができます。「ワクチンを打てば絶対にかからない」とは言えませんが、打たないよりも確率が低くなります。
糖尿病の治療中の方は、次のシーズンでもぜひ予防接種を検討してください。
執筆者
Effectiveness of the influenza vaccine in preventing admission to hospital and death in people with type2 diabetes.
CMAJ. 2016 Oct 4.
[PMID: 27455981]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。