症状・体質によっても変わる、「頭痛」治療に使う漢方薬(釣藤散、呉茱萸湯 など)

この記事のポイント
2.頭痛に使う漢方薬① 釣藤散(チョウトウサン)
3.頭痛に使う漢方薬② 呉茱萸湯(ゴシュユトウ)
4.頭痛に使う漢方薬③ 桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)
5.頭痛に使う漢方薬④ 五苓散(ゴレイサン)
6.頭痛に使う漢方薬⑤ 川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)
7.漢方薬の考え方
日本人の4人に1人は何らかの慢性的な頭痛を抱えていると言われています。近年では頭痛発作時の治療薬や頭痛予防に対する治療薬も増え、頭痛に悩む患者にとっての選択肢が広がってきています。ここでは頭痛治療に使う漢方薬について解説します。
◆ 薬による頭痛治療について
現在、頭痛に対する薬物治療には
しかし、これらの薬剤を服用しても効果が不十分であったり、副作用に悩まされたりする場合もあります。また
漢方薬を使う場合は通常、
◆ 頭痛に使う漢方薬① 釣藤散(チョウトウサン)
頭痛の中でも緊張型頭痛などに効果が期待できるとされています。特に高血圧気味であったり、耳鳴りを伴うような証に適するとされている漢方薬です。
血圧降下作用、脳血流保持作用(脳血流の減少を抑える作用)をあらわし、頭痛以外にもアルツハイマー型認知症や脳血管性の認知症などに対しても改善効果が期待できるとされています。
構成生薬に比較的少量ですが甘草(カンゾウ)を含むため、偽
◆ 頭痛に使う漢方薬② 呉茱萸湯(ゴシュユトウ)
比較的体力の低下や冷えがある人で、反復性に起こる激しい頭痛を訴えるような証に適するとされる漢方薬です。主な構成生薬である呉茱萸(ゴシュユ)は鎮痛、鎮静、身体を温めるなどの効果が期待できる生薬です。
片頭痛、緊張性頭痛など慢性頭痛に効果が期待できるとされています。特に頭痛発作の時に吐き気を伴ったり、首などのこり、吐き気、めまい、手足の冷えを伴うような頭痛に対しての効果が期待できるとされています。
◆ 頭痛に使う漢方薬③ 桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)
比較的体力が低下していて、冷えがあり、胃腸が弱く食欲不振や吐き気があったり、疲労を伴うような証に適するとされている漢方薬です。慢性頭痛に対して効果が期待でき、一般的には②の呉茱萸湯の適するとされる証よりも体力が低下気味な証に適するとされ、構成生薬にも健胃作用などをあらわす桂皮(ケイヒ)が含まれています。
桂皮はシナモンとして調味料としても使われている生薬で、食欲不振や慢性胃炎などの改善効果の他、熱や痛みなどに対しても改善効果が期待できます。桂枝人参湯は桂皮、人参(ニンジン)の他、甘草(カンゾウ)、乾姜(カンキョウ)、蒼朮(ソウジュツ)により構成されています。甘草を含むため、偽アルドステロン症などへの注意は必要となります。
◆ 頭痛に使う漢方薬④ 五苓散(ゴレイサン)
片頭痛や
下痢を抑える止瀉作用、体に水が貯留している状態での利水作用、唾液分泌速度の抑制による口渇に対する作用などをあらわします。五苓散は頭痛以外にも多くの疾患、症状に使われ、浮腫、ネフローゼ、下痢、吐き気、嘔吐、めまい、暑気あたり(夏ばて)と様々です。
他にも二日酔いの改善に有効であったり、慢性硬膜下血腫などへの改善効果も期待できるとされています。小児から高齢者まで幅広く使用される漢方薬の一つです。
◆ 頭痛に使う漢方薬⑤ 川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)
血管性頭痛や精神性頭痛などに効果が期待でき、特に感冒を伴うような症状に対して効果が期待できるとされています。頭痛以外にもかぜ、血の道症などに適応をもつ漢方薬です。
名前の中の「茶」が示す通り、構成生薬にお茶の葉である茶葉(チャヨウ)が含まれています。また構成生薬の川芎(センキュウ)には鎮痛・鎮静などに関わる中枢抑制作用や末梢血管拡張作用などをあらわすとされ、頭痛やのぼせ、婦人病などに効果が期待できる生薬です。川芎茶調散の適応に血の道症がある通り、更年期障害などに伴う頭痛などに対しても効果が期待できるとされています。比較的少量ですが構成生薬に甘草を含むため、偽アルドステロン症などには注意が必要です。
◆ 漢方薬の考え方
ここで紹介してきた漢方薬以外にも頭痛に効果が期待できる漢方薬はあります。頭痛の
その他にも当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)、半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)などの漢方薬も頭痛治療に用いられることがあります。
このように頭痛に対する漢方薬といっても様々であり、通常は使う人の症状・体質などを考慮した上で選択されます。例えば、片頭痛の診断を受けた2名の患者がいたとします。診断としては二人とも片頭痛ですが、漢方医学的には体の冷えの有無などによって、片方には呉茱萸湯、もう片方には五苓散というように使用する漢方薬が異なるというケースも考えられるのです。このように日本独自の医学である漢方は、個々の症状・体質に合わせた漢方薬を選んでいるのです。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。