2016.02.13 | コラム

抗インフルエンザ薬の「予防投与」に関して(タミフル、リレンザ、イナビル)

インフルエンザの予防について
抗インフルエンザ薬の「予防投与」に関して(タミフル、リレンザ、イナビル)の写真
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この記事のポイント

1.抗インフルエンザ薬の予防投与とは?
2.抗インフルエンザ薬の予防投与その① オセルタミビルリン酸塩(タミフル)
3.抗インフルエンザ薬予防投与その② ザナミビル水和物(リレンザ)
4.抗インフルエンザ薬の予防投与その③ ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル)

インフルエンザはインフルエンザウイルスが原因となり高熱や関節・筋肉の痛みなどが引き起こされる感染症です。一般的には秋から冬にかけて流行し、時に世界中で猛威をふるうこともあります。

そんな時に頼りになるのが、その名をよく耳にする「タミフル®」などの抗インフルエンザ薬です。抗インフルエンザ薬は当然、感染治療に使う薬剤です。但し、場合によっては予防的に使用することもあります。ここでは抗インフルエンザ薬の「予防」的使用に関して解説します。

 

◆ 抗インフルエンザ薬の予防投与とは?

インフルエンザウイルスは体内へ侵入した後で非常に短期間で増殖し(仮に、1個のウイルスが体内に入ると24時間後には100万個あまりに増えるとされています)、発熱、頭痛などの症状を引き起こします。ウイルスの型などにもよりますが、時として非常に重篤な症状をもたらし死につながることもあります。特に高齢者や糖尿病などの持病を抱えている場合には非常に脅威となるウイルス感染症です。

インフルエンザウイルスは、体内に侵入し細胞内で大量にウイルスが作られ細胞外へ放出されるということを繰り返しながら増殖します。細胞表面からウイルスが放出される際に必要な酵素にノイラミニダーゼというものがあり、現在よく使われてる抗インフルエンザ薬はこの酵素を阻害することで、ウイルスの放出を阻害しインフルエンザウイルスの増殖を抑えるノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれる薬になります。

インフルエンザ薬は通常、医療機関へ受診し感染が確認された後で処方される薬ですが、「一部の対象者」に対してのみ予防的に使用できます。

一部の対象者とは原則として「インフルエンザ発症している患者の同居家族又は共同生活者であって下記に該当する方」が対象となります。

  • 高齢者(65歳以上)
  • 慢性心疾患患者(タミフル®、イナビル®では「慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者」)
  • 代謝性疾患患者(糖尿病など)
  • 腎機能障害患者

日本感染症学会(「社団法人日本感染症学会提言2012」参考)において、病院や特に高齢者施設などでの流行の被害、感染拡大を防ぐためには、従来から行われているワクチン接種や院内・施設内感染対策の一層の徹底化に加えて、抗インフルエンザ薬の暴露後(感染者に接触後)予防投与を早期から積極的に行う・・・という提言がされています。つまり、家族や周囲の人にインフルエンザの人がいても、健常人であれば予防手投与は必要ありません。また、2009年に世界的に脅威となった「インフルエンザ(H1N1)2009」の流行時には、当時の妊婦数107万人のうち、4〜5万人が抗インフルエンザ薬を予防的に使用したという記録もあります。


インフルエンザ薬が「予防」で使われる場合は、目的が「治療」ではないので通常、保険診療の扱いとなり、自由診療(全額自費で医療費を負担)となります。また、抗インフルエンザ薬の処方量や服用方法が「治療」目的で使用する場合と異なる場合があり、注意が必要です。次の項目では実際に「予防」的に使用される場合がある抗インフルエンザ薬に関して詳しくみていきます。

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◆ 抗インフルエンザ薬の予防投与① オセルタミビル塩酸塩(商品名:タミフル®

ノイラミニダーゼ阻害薬の一つで、「タミフル®」の名前でよく知られている薬剤です。タミフル®は剤形にカプセル剤と散剤(ドライシロップ剤)があり、A型・B型どちらのインフルエンザにも効果が期待できます。

予防投与を行うのであれば早めに開始することが原則です。先ほどウイルスの増殖過程に関して少し触れましたが、ウイルスが体内に侵入してから時間が経過すると既に体内にかなりの量のウイルスが放出されてしまっている状態ですので、その時点でウイルスを抑える本剤を服用しても十分な効果は得られにくいと考えられています。

 

▪️タミフル®の予防投与における通常の服用量(但し、服用量はオセルタミビルとしての量)

 対象  服用量  服用方法

 成人

 1回75mg

 1日1回、

 7〜10日間

 体重37.5kg以上の

 小児

 1回75mg

 1日1回、

 10日間

 幼小児

 1回2mg/kg

(体重1kgあたり2mg)

 1日1回、

 10日間

上記の表にあるように、タミフル®の年齢や体重などに合わせた1回量を服用します。治療の場合は通常「1日2回、5日間」の服用方法となりますが、予防投与の場合は1日の服用回数が「1回」と半分になり、服用日数も「7〜10日間」とやや長めです。(1回の服用量は通常であれば、治療で使用する量と変わりません)

また腎機能が低下している患者への投与は服用量の調節などが必要な場合があり、特に腎機能の状態をあらわすクレアチニンクリアランス(Ccr)が30ml/分以下の場合や透析を行っている場合などでは、1回の服用量や服用方法が異なる場合があります。

タミフル®を服用する際、基本的には食事に有無に関わらず服用することができますが、一般的には空腹時の服用よりも食後服用の方が吐き気などの消化器症状が少ないとされています。食欲が全くないのに無理やり何か食べさせることはかえって気持ち悪さなどを助長してしまうかもしれませんが、食べられるのであれば軽食などを摂ってから服用すると良いでしょう。

以前、報道などでも取り上げられたタミフル®と異常行動の関連性に関しては、因果関係の有無について明確な結論には至っていないものの注意は必要です。10代への使用は原則差し控えることになっていますが禁忌ではなく、症状や合併症などを考慮した上で医師の判断により10代へ使用される場合もあります。その場合、異常行動が現れる可能性があることを考慮し、小児及び未成年者が一人にならないように保護者の方などが配慮することが重要です。


◆ 抗インフルエンザ薬の予防投与② ザナミビル水和物(商品名:リレンザ®


(c) Norio NAKAYAMA (CC BY-SA 2.0)

リレンザ®は国内では2番目に承認されたノイラミニダーゼ阻害薬であり、内服薬のタミフル®とは異なり、散剤を専用容器で吸入するドライパウダー吸入剤(外用薬)です。A型・B型どちらのインフルエンザウイルスに対しても効果が期待できます。
治療の場合は感染確認後48時間以内に使用を開始しますが、予防投与で用いる場合、感染者に接触後36時間以内に投与を開始します。

予防投与の場合通常、1回2ブリスター(2吸入分:ザナミビルとして10mg)を1日1回、10日間、専用の吸入器具(ディスクヘラー)を用いて吸入します。ディスク1枚が4ブリスター(4吸入分)なので、通常1日0.5枚(2日で1枚)使用することになります。

リレンザ®の特徴の一つに、成人と小児(通常、5歳以上の小児)で投与量が変わらないという点があります。また腎機能が低下している方や高齢者への使用においても同様で、実際に腎機能低下患者などに通常の使用量を用いても副作用がおこりやすくなるわけではなく、通常であれば投与量の調整は必要ないとされています。

とはいえ使用にあたり副作用などの注意事項がないわけではなく、タミフル®と同様の理由により異常行動への注意は必要です。投与開始後、未成年者が一人にならないように保護者の方などの配慮が重要であることも同じです。

また、インフルエンザ感染症では気道が過敏になることがあります。リレンザ®はドライパウダーの吸入剤であるため、吸入後に気管支痙攣や呼吸機能の低下などが少数例報告されています。特に慢性呼吸器疾患(気管支喘息COPD など)がある患者への投与は十分な注意が必要となります。

気管支痙攣まではいかなくても吸入の際、咳き込みやむせる・・・などの症状により上手に吸入できないこともあります。医療気管によっては「練習用のディスクヘラー」が用意されている場合もあるので、これを用いて練習しておくのも適切な使用へつなげる方法の一つです。またリレンザ®のドライパウダー中には乳タンパク由来の乳糖水和物が含まれています。そのため乳製品にアレルギーがある患者が使用した際、因果関係が否定できないアナフィラキシー事例がごく少数例、報告されているため注意が必要です。

 

◆ 抗インフルエンザ薬の予防投与その③ ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル®

イナビル®の名前で使用されているノイラミニダーゼ阻害薬です。リレンザ®と同じように散剤を吸入する粉末吸入剤(外用薬)で、A・B型どちらのインフルエンザウイルスにも効果が期待できます。その最大の特徴はタミフル®、リレンザ®に比べ、薬剤の効果が長時間持続するところです。予防投与において通常、タミフル®であれば7〜10日間、リレンザ®であれば10日間、薬の使用を継続します。一方、イナビル®の場合は2日間の投与で終了です。

イナビル®を予防投与で使用する場合、感染者に接触後48時間以内に投薬を開始します。成人及び10歳以上の小児では通常、「1日1回、1回1容器分(2吸入分:ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mg)を2日間吸入投与する」となります。

成人及び10歳以上の小児へ治療で使用する場合「1日1回、1回2容器分、単回投与」で終了ですから、予防投与では「治療投与の1日分の量を、2日に分けて投与する」ということになります。ちなみに予防投与においては10歳未満の小児へは通常使用されません。(10歳未満の小児への2日間投与の使用経験はないとされています)

腎機能障害患者への投与に関しては使用経験が少ないため「患者の状態を十分観察しながら慎重に投与」となっています。

イナビル®は粉末の吸入剤であるため、リレンザ®同様、吸入後に気管支痙攣や呼吸機能の低下などがおこる可能性があります。特に慢性呼吸器疾患(気管支喘息COPD など)がある患者への投与は十分な注意が必要となります。またリレンザ®同様、イナビル®の粉末中にも乳タンパクを含む乳糖水和物が含まれています。乳製品に対してアレルギーをもつ患者が使用した際に、因果関係が否定できないアナフィラキシー事例がこちらもごく少数例、報告されているため注意が必要です。

イナビル®の使用に際して、事前に医師や薬剤師から使用方法や使用におけるコツなどをしっかり聞いておくとよいでしょう。添付されている患者用説明書には実際の吸入容器を使っての練習(薬剤トレーをスライドさせずに吸入練習する)の表記もありますが、医療機関によっては「練習用のデモ機」を用意している場合もあり、これを用いて練習しておくのも適切な使用へつなげる方法の一つです。

また、他の抗インフルエンザ薬同様、投薬後の異常行動への注意は必要です。未成年者が一人にならないように保護者の方などの配慮が重要であることも同じです。


ここでは抗インフルエンザ薬の「予防」的使用に関して紹介してきましたが、インフルエンザの予防の基本はワクチン接種と日頃からの手洗いや咳エチケットの心がけであり、抗インフルエンザ薬の「予防」的使用がワクチンによる予防に置き換わるものではありません。またワクチン接種に加えて日常生活における注意はやはり重要となります。手洗いを習慣的に行い、適度な休養をとる・・・などインフルエンザの猛威に対抗できる生活を心がけることが大切です。

 

執筆者

MEDLEY編集部

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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