2016.02.18 | コラム

効果・副作用は?インフルエンザの治療薬[抗インフルエンザ薬(タミフル、イナビル など)]に関して

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この記事のポイント

1.インフルエンザウイルスの感染・増殖と抗インフルエンザ薬が効く仕組み
2.抗インフルエンザ薬その① オセルタミビルリン酸塩(タミフル)に関して
3.抗インフルエンザ薬その② ザナミビル水和物(リレンザ)に関して
4.抗インフルエンザ薬その③ ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(イナビル)に関して
5.抗インフルエンザ薬その④ ペラミビル水和物(ラピアクタ)に関して
6.その他の治療薬に関して[アマンタジン塩酸塩(シンメトレル など)、漢方薬 など]
7.妊婦又は妊娠している可能性がある人に対する抗インフルエンザ薬の使用に関して

インフルエンザはインフルエンザウイルスが原因となり高熱や関節・筋肉の痛みなどが引き起こされる感染症です。一般的には秋から冬にかけて流行し、時に世界中で猛威をふるうこともあります。

そんな時に頼りになるのが、その名前をよく耳にする「タミフル®」などの抗インフルエンザ薬と呼ばれる薬です。ここでは抗インフルエンザ薬による治療に関して解説します。

 

◆ インフルエンザウイルスの感染・増殖と抗インフルエンザ薬が効く仕組み

インフルエンザウイルスは体内に侵入した後で非常に短期間で増殖し(仮に、1個のウイルスが体内に入ると24時間後には100万個あまりに増えるとされています)、発熱、頭痛などの症状を引き起こします。インフルエンザウイルスは宿主の細胞内に侵入しこの中で大量に作られたウイルスが細胞外へ放出され、さらに感染が拡大していく・・・といったように増殖・感染拡大を行います。細胞内で作られたウイルスが細胞表面から放出される時に必要な酵素にノイラミニダーゼというものがあり現在、抗インフルエンザ薬として一般的に使用されているタミフル®などの薬はこの酵素を阻害しウイルスの放出を抑えることでインフルエンザウイルスの増殖を抑えるノイラミニダーゼ阻害薬になります。

ノイラミニダーゼ阻害薬は現在(2016年2月時点)、オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル®)、ザナミビル水和物(商品名:リレンザ®)、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル®)、ペラミビル水和物(商品名:ラピアクタ®)があります。

その他の抗インフルエンザ薬としてはA型インフルエンザに対して効果が期待できるアマンタジン塩酸塩(主な商品名:シンメトレル®)という薬もあります。アマンタジン塩酸塩はウイルスが侵入する段階に作用し、ウイルスの増殖を抑えるとされています。抗インフルエンザ薬としては、タミフル®などのノイラミニダーゼ阻害薬に比べるとB型インフルエンザには無効とされA型インフルエンザでしか効果が期待できないことなどから、現在インフルエンザ治療へ使用されることは稀です。ただアマンタジン塩酸塩はパーキンソン症候群などの治療薬としても使用されていて、こちらの用途では現在でも多くの患者さんに使用されている薬となっています。

また抗インフルエンザ薬ではありませんが、麻黄湯(マオウトウ)などの漢方薬もインフルエンザに対して有効とされ使用されています。

 

◆ 抗インフルエンザ薬その① オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル®)に関して

ノイラミニダーゼ阻害薬の一つで、タミフル®の名前で使用されている内服薬で剤形にカプセル剤とドライシロップ剤があります。

治療で使用する場合は、感染から48時間以内に服用を開始することが原則です。先ほどウイルスの増殖過程に関して少し触れましたが、感染から2日以上の時間が経過するとかなりの量のウイルスが既に体内に放出されてしまっている状態ですので、その時点ではウイルスを抑える本剤を服用しても十分な効果は得られにくいと考えられています。そのため、感染が確認されてからできるだけ早めに服用することが効果的とされています。

▪️タミフル®の治療における通常の服用量(但し、服用量はオセルタミビルとしての量)

対象 服用量 服用方法

成人及び体重37.5kg以上の小児

1回75mg 1日2回、5日間
幼小児 1回2mg/kg(体重1kgあたり2mg) 1日2回、5日間

上記表にあるように、タミフル®は年齢や体重などに合わせた1回量を通常「1日2回、5日間続けて服用」します。カプセル剤以外の剤形として散剤(ドライシロップ剤)があり、幼少児や嚥下機能が低下した患者などへ使用されています。

また腎機能低下患者(透析患者などを含む)へは服用量の減量などが考慮され、腎機能の数値(クレアチニンクリアランス)などにより推奨とされる量や服用方法などが異なる場合があります。(例として、透析患者への治療投与では「単回投与で1回75mg、5日間後症状が残っていた場合はもう1回投与・・・」という方法が用いられる場合もある)

1歳未満の患児(低出生児、新生児、乳児)への安全性は確立されていませんが、タミフル®使用による有益性が危険性を上回ると医師が判断し、保護者などに十分な説明を行い、使用に関して同意を得た上で慎重に使用する場合もあります。

タミフル®を服用する際、基本的には食事に有無に関わらず服用することができますが、一般的には空腹時の服用よりも食後服用の方が吐き気などの消化器症状が少ないとされています。食欲が全くないのに無理やり何か食べさせることはかえって気持ち悪さなどを助長してしまうかもしれませんが、食べられるのであれば軽食などを摂ってから服用すると良いでしょう。

以前、報道などでも取り上げられたタミフル®と異常行動の関連性に関しては、因果関係の有無について明確な結論には至っていないものの注意は必要とされています。10代への使用は原則差し控えることになっていますが、処方禁忌ではなく、症状や合併症などを考慮した上で医師の判断により10代へ処方される場合もあります。その場合はタミフルによる治療開始後、異常行動が現れる可能性があることを考慮し、少なくとも2日間は小児及び未成年者が一人にならないように保護者などが配慮することが重要です。

尚、タミフル®は一部の対象者に対して予防投与で使用される場合もあります。詳しくはこちらの記事(抗インフルエンザ薬の「予防」的使用に関して)をご参照下さい。

 

◆ 抗インフルエンザ薬その② ザナミビル水和物(商品名:リレンザ®)に関して


(c) Norio NAKAYAMA (CC BY-SA 2.0)

ノイラミニダーゼ阻害薬の一つで、リレンザ®の剤形はドライパウダー吸入剤(外用薬)です。治療で使用する場合は、感染から48時間以内に使用を開始するのが原則です。(理由はタミフル®と同様)

治療で使用する場合は、1回2ブリスター(2吸入分:ザナミビルとして10mg)を1日2回、5日間、専用の吸入器具(ディスクヘラー)を用いて使用します。ディスク1枚が4ブリスター(4吸入分)なので、通常1日で1枚使用することになります。

他のノイラミニダーゼ阻害薬と異なる点は使用する薬剤量が成人と小児で同じであるところです。普通なら大人と子供で同じ量ってちょっと心配・・・となるところですが、実際に小児や高齢者、腎機能低下患者などへの使用において通常の使用量を用いても副作用がおこりやすくなるわけではなく、通常であれば投与量の調整は必要ないとされています。

とはいえ使用にあたり副作用などの注意事項がないわけではなく、タミフル®と同様の理由により異常行動への注意は必要です。投薬開始後、少なくとも2日間は小児、未成年者が一人にならないように保護者の方などの配慮が重要であることも同じです。

また、インフルエンザ感染症では気道が過敏になることがあります。リレンザ®はドライパウダーの吸入剤であるため、吸入後に気管支痙攣や呼吸機能の低下などが少数例報告されています。特に慢性呼吸器疾患(気管支喘息COPD など)がある患者への投与は十分な注意が必要となります。

気管支痙攣まではいかなくても吸入の際、咳き込みやむせる・・・などの症状により上手に吸入できないこともあります。医療機関によっては「練習用のディスクヘラー」が用意されている場合もあるので、これを用いて練習をしておくのも適切な使用へつなげる方法の一つです。またリレンザ®のドライパウダー中には乳タンパクを含む乳糖水和物が含まれています。そのため乳製品にアレルギーをもつ患者が使用した際、因果関係が否定できないアナフィラキシー事例がごく少数例、報告されているため注意が必要です。

尚、リレンザ®は一部の対象者に対して予防投与で使用される場合もあります。詳しくはこちらの記事(抗インフルエンザ薬の「予防」的使用に関して)をご参照下さい。

 

◆ 抗インフルエンザ薬その③ ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル®)に関して

ノイラミニダーゼ阻害薬の一つで、イナビル®はリレンザ®と同じ様に散剤を吸入する粉末吸入剤となっています。治療で使用する場合は、感染から48時間以内に使用することが原則です。(理由は他のノイラミニダーゼ阻害薬同様)

イナビル®の最大の特徴は治療にタミフル®やリレンザ®に比べ薬の効果が長時間持続する薬剤であり、治療に関しては単回投与で投薬が終了します。

治療投与の場合、成人及び10歳以上の小児へは通常「1回2容器分(4吸入分:ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mg)の単回投与」で投薬が終了します。10歳未満の小児へは通常「1回1容器分(2吸入分:ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mg)の単回投与」で投薬が終了です。

どの年齢にも単回投与で投薬が完了するため、吸入がしっかりできれば、薬の確実な投与が確保しやすいといえます。

腎機能低下患者に対する使用に関しては「患者の状態を十分観察しながら慎重に投与」となっています。

イナビル®は粉末の吸入剤であるため、リレンザ®同様、吸入後に気管支痙攣や呼吸機能の低下などがおこる可能性があります。特に慢性呼吸器疾患(気管支喘息COPDなど)がある患者への投与は十分な注意が必要となります。またリレンザ®同様、イナビル®の粉末中にも乳タンパクを含む乳糖水和物が含まれています。乳製品に対してアレルギーをもつ患者が使用した際に、因果関係が否定できないアナフィラキシー事例がこちらもごく少数例、報告されているため注意が必要です。

イナビル®の使用に関して、特に小児などにおいては吸入する際、上手く吸い込めないなどが想定されるため、医師や薬剤師から使用方法や使用におけるコツなどをしっかり聞いておくとよいでしょう。添付される患者用説明書には実際の吸入容器を用いての練習(薬剤トレーをスライドさせずに吸入練習する)の表記もありますが、医療機関によっては「練習用のデモ機」を用意している場合もあり、これを用いて練習しておくのも適切な使用へつなげる方法の一つです。

また、他の抗インフルエンザ薬同様、投薬後の異常行動への注意は必要です。小児や未成年者が一人にならないように少なくとも2日間は保護者の方などの配慮が重要であることも同じです。

尚、イナビル®は一部の対象者に対して予防投与で使用される場合もあります。詳しくはこちらの記事(抗インフルエンザ薬の「予防」的使用に関して)をご参照下さい。

 

◆ 抗インフルエンザ薬その④ ペラミビル水和物(商品名:ラピアクタ®)に関して

ノイラミニダーゼ阻害薬の一つです。感染から48時間以内に投与するのが原則です。(理由は他のノイラミニダーゼ阻害薬と同様)

他のタミフル、リレンザ、イナビルと大きく異なるのは、ラピアクタ®が医療機関で注射によって投与される薬ということです。そのため、他のノイラミニダーゼ阻害薬に比べ、「飲めなかった・・・」とか「吸入できなかった・・・」などといったことがないため、内服や吸入が困難な患者に使用できるメリットなどがあります。

通常は、医療機関を受診し、15分ほど時間をかけて点滴(静脈注射)を行いそれで終了です。(症状などに応じて連日反復して投与する場合もあります)

腎機能に障害がある場合や、元々何らかの病気を患っていて症状が重症化するおそれがある場合などでは、薬剤の投与量が変更されることもあります。また頻度は非常に稀ですが投与終了後、肝機能が低下する場合もあり早ければ投与の翌日早朝に黄疸などの症状があらわれる可能性もあります。そのため場合によっては肝機能検査を行うなど体の状態をしっかり観察する必要もあります。

他の抗インフルエンザ薬同様、投薬後の異常行動への注意は必要です。小児や未成年者が一人にならないよう少なくとも2日間は保護者の方などの配慮が重要であることも同じです。

 

◆ その他の治療薬[アマンタジン塩酸塩(主な商品名:シンメトレル®)、麻黄湯(マオウトウ) など]に関して

アマンタジン塩酸塩に関しては、B型インフルエンザに無効であることや何らかの事情で他の抗インフルエンザ薬が使用できないなどの場合において処方が検討される薬であることから、他のインフルエンザ薬に比べると使用されることは稀といえます。

その他、漢方薬によるインフルエンザの症状改善効果が注目されています。特に麻黄湯(マオウトウ)はタミフル®などの抗インフルエンザ薬と比べても同程度の治療効果があるという臨床試験における結果報告もあり、インフルエンザに対する薬物治療における選択肢の一つとなっています。

 

◆ 妊婦又は妊娠している可能性がある婦人に対する抗インフルエンザ薬の使用に関して

現在、抗インフルエンザ薬の妊娠中の投与に関する安全性は確立されていません。しかし、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には抗インフルエンザ薬を使用します。インフルエンザ自体が妊婦に対してハイリスクであることを鑑み、インフルエンザの流行状況やウイルスの型などを考慮した上で治療における抗インフルエンザ薬の使用を推奨する場合もあります。実際に2009年における新型インフルエンザ(H1N1)2009の流行期では、妊婦へのタミフル®又はリレンザ®の早期投与(症状出現後48時間以内)を勧めたという事例もあります。

 

ここでは主にインフルエンザに対する薬による治療を紹介しましたが、タミフル®などのノイラミニダーゼ阻害薬やアマンタジン塩酸塩においても、ウイルスの増殖を抑える薬であってウイルスを直接倒す薬ではありません。インフルエンザに対しては、やはりワクチン接種やうがいや手洗いなどの日頃からの予防が重要です。それでも感染してしまった場合は、薬による治療と並行して脱水症状を防ぐため小まめに水分摂取をしたり、十分な休養をとるなど体調を整えることが大切です。

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執筆者

中澤 巧

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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