透析中の骨密度低下に有効か?デノスマブの効果と副作用
透析を受けている人は、腎性骨異栄養症と呼ばれる代謝バランスの異常によって骨が弱くなることがあります。虎ノ門病院の研究班から、骨粗しょう症治療薬として知られるデノスマブを治療に使った結果が報告されました。
◆透析中で骨密度が低い人を治療
研究班は、
デノスマブは骨粗しょう症に対しては6か月に1回の注射で骨を増やす効果があるとされる一方、血液中のカルシウムを少なくする副作用が知られているため、この研究では食物からのカルシウム吸収を促す作用がある
血液中のカルシウムが少なくなりすぎること(低カルシウム血症)は、不整脈が起こりやすくなり危険と言われています。
◆骨密度が増加、低カルシウム血症には注意
11人に6か月以上の治療を行った結果、治療期間に次のことが見られました。
デノスマブ注射から7日後、血清カルシウムは目立って減少したが、患者に症状は見られなかった。
4人の患者はベースラインでシナカルセトを処方されていたが、デノスマブ開始後に低カルシウム血症のためシナカルセトは中止された。
最終フォローアップで、腰椎と大腿骨頚部の骨密度は
有意 に増加した。研究期間の間に、新たな骨折は見られなかった。
デノスマブ注射のあと、血液中のカルシウムが減少し、低カルシウム血症を悪化させる可能性があるほかの薬が4人で使用中止になりました。低カルシウム血症による症状は見られませんでした。
治療開始から6か月後に、骨折しやすい
研究班は、デノスマブの効果とともに「デノスマブは腎排泄されないため、透析を受けている患者で用量を調節する必要がない」という点にも触れています。
この研究は、デノスマブを使わなかった場合との比較を行っていないため限界がありますが、通常は透析中には骨密度が減少する傾向にあることから、デノスマブに効果があったと判断しています。
骨折は、特に高齢の人では生活を大きく妨げ、寝たきりなどの問題につながることもあります。骨折を防ぐため、患者の状態に合わせてさまざまな治療薬が使い分けられています。デノスマブが効果を発揮する場面がこのように検証されることで、より適切な治療に結びつくかもしれません。
執筆者
Denosumab for low bone mass in hemodialysis patients: a noncontrolled trial.
Am J Kidney Dis. 2015 Jul
[PMID: 25979349] http://www.ajkd.org/article/S0272-6386(15)00540-5/pdf※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。