2017.01.13 | ニュース

閉経で骨が減った女性に、ロモソズマブの注射で骨折リスク75%減

7,180人の比較

from The New England journal of medicine

閉経で骨が減った女性に、ロモソズマブの注射で骨折リスク75%減の写真

閉経後は女性ホルモンのバランスが大きく変わり、骨粗鬆症の危険性が高い時期です。骨を強くする薬は最近も新しく作られています。新薬のロモソズマブを月に1回注射する効果が検討されました。

ここで紹介する研究は、閉経後で一定基準以上の骨粗鬆症がある女性を対象に、ロモソズマブの効果を調べています。

ロモソズマブはモノクローナル抗体と呼ばれる種類の薬です。モノクローナル抗体は、体内にある特定の物質に結び付くことで、体内で起こっている化学反応をコントロールします。ロモソズマブは体内のスクレロスチンと結合します。

健康な体では、骨はつねに新しく作られる一方で一部は壊され、新陳代謝しています。スクレロスチンは、骨が作られる作用にブレーキをかけています。ロモソズマブはスクレロスチンと結合して、スクレロスチンの作用を抑えることで、骨がより多く作られるようにバランスを変えます

この研究では7,180人の女性が対象となりました。対象者はランダムに2グループに分けられ、一方は毎月1回ロモソズマブを注射し、もう一方は毎月1回有効成分のない偽薬を注射しました。毎月1回の注射を12か月繰り返しました。さらに、両方のグループで薬(または偽薬)を既存薬のデノスマブに切り替えました。

デノスマブも骨粗鬆症を治療する薬です。6か月に1回の注射で使います。日本でもすでに販売されています。両方のグループでデノスマブに切り替えたあと12か月間(研究開始から24か月後まで)治療を続けました。

効果を判定するため、研究開始から12か月後と24か月後の時点までに起こった骨折の件数を比較しました。

 

次の結果が得られました。

12か月時点で、新たな脊椎骨折はロモソズマブ群の3,321人中16人(0.5%)、対して偽薬群の3,322人中59人(1.8%)に起こった(ロモソズマブによりリスクが73%低いことを示す、P<0.001)。

24か月時点で、それぞれの群がデノスマブに切り替えたのち、脊椎骨折の率は偽薬群よりもロモソズマブ群のほうが有意に低かった(ロモソズマブ群で3,325人中21人、0.6%、偽薬群で3,327人中84人、2.5%、ロモソズマブでリスクが75%低下、P<0.001)。

有害事象は、骨過形成・心血管系イベント・変形性関節症・がんの例を含め、群間で同等に見えた。非定型大腿骨骨折1件および顎骨壊死2件がロモスズマブ群で見られた。

12か月後までに1回以上の骨折があった割合は、ロモソズマブのグループでは0.5%、偽薬のグループでは1.8%でした。

24か月後までではロモソズマブで0.6%、偽薬で2.5%でした。

どちらの時点でもロモソズマブのグループのほうが骨折を経験した人の割合が少なく、ロモソズマブのグループでは24か月後までの骨折のリスクが75%少なくなっていました。

副作用の可能性がある症状などは、ロモソズマブのグループで統計的に多いとは言えませんでした。ただし、ほかの骨粗鬆症治療薬で起こりうる副作用として知られる、非定型大腿骨骨折が1件、顎骨壊死が2件報告されました。

 

ロモソズマブによって、閉経後に骨粗鬆症がある女性の骨折が減ったという結果が得られました。骨粗鬆症の治療の選択肢に将来ロモソズマブが加わってくるかもしれません。

一方、骨粗鬆症の治療薬にはすでにたくさんの種類があります。よく使われているのがビスホスホネート製剤です。閉経後の女性に対してはホルモン療法も行われています。この研究でも使われたデノスマブも選択肢のひとつです。デノスマブは6か月に1回の注射で効果を現します。

ほかの薬と比べてロモソズマブにどんな利点があるかは、効果の強さや持続する期間、副作用などさまざまな観点から考える必要があります。ロモソズマブと同様にモノクローナル抗体を使った薬には非常に高価なものも多く、費用も重要なポイントになる可能性があります。

新薬開発とそれぞれの比較検討によって骨粗鬆症の治療法は年々進歩を続けています。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Romosozumab Treatment in Postmenopausal Women with Osteoporosis.

N Engl J Med. 2016 Oct 20.

[PMID: 27641143]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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