◆閉経後骨粗しょう症の女性80人が成長ホルモンを補充
骨粗しょう症を患いエストロゲン補充療法を受けている50歳から70歳の女性80人が対象となりました。対象者は成長ホルモン補充を受けるグループと偽薬を使うグループにランダムに分けられ、どちらの群もカルシウムやビタミンDの補充を3年間行いました。
◆成長ホルモンは骨を増やすが、生活の質には影響を与えない
著者らは以下の結果を得ました。
成長ホルモンは用量依存的に全ての領域で骨密度と骨塩量を増やした(成長ホルモン1.0Uでは対照群と比較してP=0.01、成長ホルモン2.5Uでは対照群と比較してP = .0006)。10年後、群間で均等に振り分けた被験者間での骨折回数は、56%から28%に減った(P=0.0003)。[...]生活の質は、成長ホルモン治療中や10年間の追跡調査期間で変化がなく、対照群と比べ変わらなかった。
つまり成長ホルモンは骨の量を増やし骨折を減らす効果はありましたが、生活の質を変える効果はありませんでした。
著者らは「成長ホルモン治療は閉経後骨粗しょう症の女性において10年後骨と骨折に関し有益な結果を示したが、生活の質には、影響を与えなかった。」と結論しています。
閉経後は更年期障害による症状などがしばしば現れます。生活の質が変わらなかったという事は、これらの改善にはあまり結び付かなかったのかもしれません。エストロゲンを補充した場合は、骨粗しょう症に対する効果とともにこれらの症状への効果も期待できる一方で乳がんのリスクが高まるとも言われ、それぞれ一長一短がありそうです。
執筆者
Effect of Growth Hormone Treatment on Fractures and Quality of Life in Postmenopausal Osteoporosis: A 10-Year Follow-Up Study.
J Clin Endocrinol Metab. 2015 Aug 27
[PMID: 26312576]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。