肝臓がん(肝細胞がん)の症状:初期症状から進行した場合の症状を解説
肝臓がんは初期にはほとんど症状はあらわれません。進行するにつれて、痛みや
目次
1. 肝臓がんの初期症状はほとんどない
肝臓がんはかなり進行するまで自覚症状があらわれないことが多く、症状から肝臓がんを早期発見するのは困難です。進行して
ここでは、肝臓がんが進行した時にあらわれる次の症状について解説をします。
- 黄疸の症状:肝臓の機能低下により、
ビリルビン という物質が血液中で増加することで起こる- 皮膚や白目が黄色くなる
- 皮膚がかゆくなる
- 体がだるく感じる(全身
倦怠感 、疲労感) - 風邪のような症状
- 微熱
- 尿の色が濃くなる
- 痛み:肝臓がんが大きくなることで起こる
- 右の脇腹の痛み:右季肋部痛(みぎきろくぶつう)
- みぞおちの痛み:心窩部痛(しんかぶつう)
- 食欲不振
- 全身倦怠感
浮腫 (ふしゅ、むくみ )腹水 (ふくすい)
肝臓がんは肝硬変を背景にして発生します。肝硬変によりすでに肝臓の機能が低下しているところへ、肝臓がんが大きくなることで、ますます機能できる肝臓が少なくなり、肝不全の症状があらわれます。肝不全の症状には食欲不振、全身倦怠感、浮腫、腹水などがあり、これらの症状にはがんの影響もふくまれます。
そのため、肝臓がんが進行すると、肝臓がんによる症状と肝不全による症状とが複雑に絡み合って、両者の区別は難しくなります。あらわれる症状に対して適切な治療をしていくことが大事です。
次に、それぞれの症状について、さらに詳しく説明します。
2. 黄疸の症状:皮膚や白目が黄色くなる、かゆくなる

黄疸は、肝臓の機能の低下により、ビリルビンという物質が血液中で増加することで起こります。皮膚や眼球
【黄疸の主な症状】
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 皮膚がかゆくなる
- 体がだるく感じる(全身倦怠感、疲労感)
- 風邪のような症状
- 微熱
- 尿の色が濃くなる
黄疸はさまざまな病気が原因となって起こる症状です。そのため、黄疸があるからといって必ずしも肝臓に異常があるとは限りません。
黄疸のメカニズム
黄疸の成り立ちはやや複雑です。黄疸は血液中のビリルビンの濃度が高くなることで起こります。
ビリルビンは古くなった
肝臓の機能が低下していると、このビリルビンの処理が追いつかなくなり、血液中にビリルビンがたまります。これにより黄疸になります。
また、赤血球の破壊が起きすぎるのも、ビリルビンの発生量が増えて黄疸の原因になります。肝硬変では血液の流れに異常が生じて
これら2つの要因で肝硬変の人には黄疸が起きやすく、その症状の一つとしてかゆみがでます。
黄疸の症状がたくさんでている場合は別ですが、身体がかゆいからといって肝臓の病気を疑うのは早計です。かゆみの原因はほかにもたくさんあります。かゆみがおさまらない人は、医療機関を受診して原因を調べることをお勧めします。
かゆみをどうやって和らげるか
黄疸になるとかゆみが出ることが多いです。肝臓がんで黄疸が出るときには肝臓の機能が低下していることが多く、その症状で身体がむくみやすくなります。むくみ(浮腫)があると皮膚は薄く乾燥しやすくなり、かゆみをさらに助長します。
皮膚を傷つけるとかゆみが増強するので、とにかく引っかかないことが大事です。
- 保湿
- 皮膚の乾燥を防ぐために、ローションや保湿クリームなどを活用する
- 温度・湿度調整
- 蒸れたり乾燥したりするとかゆみが強くなるので、適度な温度と湿度を保つ
- 爪のケア
- 皮膚を傷つけにくくするため、爪を短く切っておく
以上のような工夫が有効と考えられます。個人個人でかゆみに対して有効な方法も異なるので、自分にあった方法を探してみてください。
3. 痛み
肝臓がんで痛みが出る場合として、主に、骨に
骨転移による痛み
肝臓がんが骨に転移することは多くはありませんが、かなり進行した状態ではありえます。骨転移に対しては、
肝臓がんが大きくなることによる痛み
肝臓の周りには薄い膜があります。この膜を被膜(ひまく)といいます。肝臓がんが大きくなり、大きくなるのを抑える治療が難しくなると、肝臓の被膜が伸ばされて痛みが出ます。痛みは「鈍い痛みが持続する感じ」と表現されます。
その他、肝臓がんが破裂したことによる痛み
急な腹痛が起きた時は肝臓がんが破裂した可能性もあります。破裂する割合はまれで、肝臓がん全体の0.6%ほどとされています。
痛みを抑えるためにできること
肝臓がんの痛みに対しては、鎮痛薬が使用されます。NASIDsやアセトアミノフェンなどの一般的な鎮痛薬も使用可能です。痛みが強いなどで効果が不十分な時は、モルヒネなどのオピオイド鎮痛薬が有効です。ただし、肝臓の機能が落ちているときなどはモルヒネは慎重に使わなければならない場合もあります。そのときの状況に応じて、最も適した鎮痛剤が選択されます。
4. 食欲不振

肝臓がんが進行すると、肝臓の機能が落ちて、全身倦怠感などとともに食欲も低下していきます。がんが体中に広がった悪液質(あくえきしつ)という状態により食欲低下が起こることもあります。
食欲低下はさまざまなことで引き起こされ、治療薬の副作用が要因になることもあります。例えば痛みに対して使われるオピオイド鎮痛薬の副作用として便秘になることがあり、便秘は食欲不振を増す材料になります。さらに、食欲不振が続くと栄養不足になり、腹水などの症状がでやすくなります。腹水もまた食欲低下の原因となります。
食欲不振を大きく改善するのは容易ではありませんが、食事の内容を工夫することで少しでも食べる量を増やす助けになります。
- 工夫① 高エネルギーの食品を取り入れる
- 少しの量でもエネルギーが多く取れるもの。例えば、もち、おはぎなどの、もち米を利用した食品など
- 工夫② 香辛料を使う
- 食欲増進のため、香辛料が苦にならないならば香辛料を多めにしてみる
- 工夫③ 目の前に、少しずつ料理を出す
- たくさんの料理を目の前にすると食欲がわかないこともあるので、小さな器に少量ずつ盛ってだしてみる
- 工夫④ 冷たいものやあっさりしたものを食べる
- 水分の多い野菜や果物
- プリン、ゼリー
- シャーベット
- 麺類
吐き気がある場合は、冷たいものやあっさりしたものなら食べやすいという人もいます。ただし、無理してまで食べる必要はありません。「食事をとらなければならない」と考えすぎるのも辛いものです。苦痛にならない範囲で、少しずつでもいいので食べる工夫をしてみてください。
5. 全身倦怠感
肝臓がんが進行すると全身倦怠感(強い疲労感やだるさ)が症状としてあらわれます。
がんが進行すると悪液質という状態を引き起こします。悪液質は様々な症状の原因になりますが、全身倦怠感もその一つです。また、肝臓がんと肝不全の両方が、全身倦怠感の原因になります。
がんの影響が身体にある状態であっても、精神的な工夫でだるさが紛れるかもしれません。例えば、お気に入りの香りやグッズなど自分がリラックスできるようなものを身の周りに調える、好きな音楽を聴くなどの方法があります。家族や周りの人は、少しでも患者さんが過ごしやすいように環境を整えるサポートをすることが大切です。
6. 浮腫(ふしゅ)

浮腫とは体のむくみのことです。がんが進行すると身体から栄養が減って、アルブミンというたんぱく質も減少します。アルブミンの役割の一つに、血管内の水分を血管内に留める役割があります。つまり、アルブミンが減少すると血管の中の水分が出ていくことになります。血管の中から出ていった水分はお腹の中にたまったり、足がむくむ原因になります。栄養状態の低下以外でも、リンパ管が閉塞することによって浮腫が生じることもあります。
浮腫が強くなると痛みの原因になることがあります。痛みがひどくなれば鎮痛剤などで対応することになります。
7. 腹水(ふくすい)
腹水はお腹の中の腹腔(ふくくう)というスペースに溜まった水のことです。腹水の原因はいくつかあります。体の中のアルブミンが減ったりすることが原因の一つです。アルブミンの減少は、「肝臓が悪くなること」と「がんが進行すること」の両方が原因になります。他には肝硬変によって血液の流れが悪くなることも原因の一つです。流れが悪くなることで、肝臓に血液を送る門脈の圧力が上がり、腹水が溜まることにもつながります。
8. 肝臓がんが脳転移した時の症状
肝臓がんの脳転移は多いとは言えません。
脳転移による症状は、転移がある場所によって大きく違います。脳転移したがんが時間の経過とともに大きくなると、脳に影響が出て次のような症状が出現します。
- 頭痛
- 嘔吐
- 体の動かしにくさ(
麻痺 ) - 痙攣(けいれん)
9. 肝臓がんの破裂の症状
肝臓がんのうち、サイズが大きく肝臓の表面から突出している
肝臓がんが破裂したときの症状は以下のようなものです。
- 腹痛
嘔気 ・嘔吐- 冷や汗
頻脈 (脈が速くなる)- 意識消失
肝臓がんの破裂は程度が軽ければ自然におさまることもあります。一方で、出血量が多いと考えられる場合は緊急で
肝臓がんは小さくても破裂することがあります。肝臓がんの診断がされていて急に腹痛が起きたときには肝臓がんが破裂した可能性もありますので、速やかに医療機関を受診して詳しく調べてもらってください。
10. 肝臓がんの末期の症状:肝不全による腹水、肝性脳症など
肝臓がんが進行し、いわゆる末期と呼ばれる状況になると、ほとんど肝臓が機能しなくなります。肝臓がんができる人は肝硬変の人が半数以上を占め、もともと肝臓の機能が低下しています。そこに肝臓がんができ、肝臓の機能が極端に低下すると「肝不全」の状態になります。
【肝不全の症状】
- アルブミンが減ることによる症状
- 腹水:お腹が張る
- 浮腫:足がむくむ
- 黄疸にともなう症状
- だるい
- 尿が濃くなる
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 体がかゆくなる
- 肝性脳症
- 意識がぼーっとしたりおかしな行動をとる
- 眠ったような状態になる
アルブミンが減ることによる症状
肝臓はたんぱく質をつくったり、体に不要な物質を
肝不全になりアルブミンの生産量が減ると、血管内の水分が外に出やすくなります。その結果、腹腔というお腹のスペースに水が溜まったり、足がむくんだりします。
腹水や足の浮腫の症状を改善するために、余分な水分を体外に出す方法が考えられます。利尿剤を使って尿量を増やし、水分を排出する方法がありますが、効果は一時的で限られています。腹水がかなり溜まってしまった場合は、お腹に針を刺して直接腹水を抜いたりもします。しかし、これも効果は一時的で、一旦は症状は良くなりますが、時間がたつと再び腹水がたまります。また、腹水には体に必要な栄養分も含まれているので、抜ける量には限界もあります。
黄疸にともなう症状
肝臓はさまざまな物質を代謝して、尿や便とともに体の外に出せる形にしています。そのため、肝臓が機能しなくなると代謝がうまくいかなくなり、体に不要な物質が溜まっていきます。特に問題になるのがビリルビンとアンモニアです。
ビリルビンは寿命を過ぎた赤血球が壊れることでできる黄色い物質です。ビリルビンが体外に排出されない状況が続くと、血液中にビリルビンがたまって、皮膚や眼球結膜(白眼の部分)が黄色く染まる「黄疸」があらわれます。見た目で黄疸とわかるまでになるのは、血液中のビリルビンがある程度上昇してからになります。初期の黄疸では、尿の色がいつもより黄色く見えるなど、目立ちにくい症状から始まることがあります。
黄疸では以下のような症状があります。
- 皮膚や眼球結膜が黄色くなる
- 体がだるく感じる(全身倦怠感、疲労感)
- 皮膚がかゆくなる
- 風邪のような症状
- 微熱
- 尿の色が黄色くなる
肝不全による黄疸は肝臓の機能を保護する薬などを使って治療が行われますが、完全に改善するのは難しく、効果は限られています。
肝性脳症
アンモニアが原因で意識状態が悪くなることがあります。肝不全が深刻で、いわゆる末期の状態になると、アンモニアが代謝されにくくなって体内に溜まっていきます。アンモニアが蓄積すると意識状態に影響を与え、肝性能症を引き起こします。
肝性脳症の程度は蓄積したアンモニアの量に関係しています。少し詳しく解説します。
- 軽度の症状
- 時間や場所について認識できないことがある
- 異常な行動をとる
- うつらうつらしているが呼びかけで起きる
- 重症の症状
- 興奮状態や混乱した発言などをする
- ほとんど眠っている
- 指示に従わない、または従えない
- 意識の消失
肝性脳症の治療はアンモニアの量を減らす方法が中心となります。
- たんぱく質の摂取を減らす
- たんぱく質を摂取すると血液中のアンモニアが増えます。そのため、肉や魚などのタンパク質を多く含む食品は極力食べないようにします
- ラクツロースの服用または浣腸
- ラクツロースは腸内の環境を酸性に傾けます。腸内を酸性に傾けることでアンモニアを産生する
細菌 の増殖を抑えます
- ラクツロースは腸内の環境を酸性に傾けます。腸内を酸性に傾けることでアンモニアを産生する
- 分岐鎖
アミノ酸 の点滴- 分岐鎖アミノ酸は血液中のアンモニアを減らす働きがあります。予防目的でも点滴や栄養剤として摂取します
- リファキシミンの服用
- 腸内細菌を減らすリファキシミン(商品名リフキシマ®)という薬があります。腸内細菌を減らしてアンモニアの産生を抑えます。
さらに詳しい肝性脳症の知識は、「肝性脳症の詳細情報」から得られます。
11. 症状から余命はわかるか
肝臓がんの症状が出るか出ないか、また出たとしていつどのような症状が出るかは、人によって大きく異なります。極端な例では、全く症状がないにもかからず、ある日突然かなり進行した肝臓がんと診断されることもあります。そのため、こんな症状があるから余命はあとどれだけだ、と予測することは非常に困難です。
肝臓がんとすでに診断されていて、治療中に新たに症状があらわれたとしても、必ずしもがんが進行したことを意味しません。治療中は特に症状に敏感になってしまうものですが、例えばそれは実は薬の副作用による症状で、薬を替えれば症状がなくなる、ということも考えられます。治療中に体調の変化を感じたら、こまめに主治医に相談することが大切です。
一方で、肝臓がんが末期に近づくといろいろな症状が出現します。例えば腹水が溜まってお腹が膨れてきて身動きが辛くなったり、胸に水(
症状が重くなった時に大事なのは、正しい緩和ケアでできる限り症状を和らげることとともに、安心感のある環境を作ることです。ご家族や患者さんのサポートをする人は、無理のない範囲で時間を共にすることも大切です。