せっぱくりゅうざん
切迫流産
妊娠22週未満で、胎児心拍は確認できるが流産となる可能性の高い状態のこと
1人の医師がチェック 5回の改訂 最終更新: 2021.12.16

切迫流産とは?

切迫流産とは妊娠21週6日までの期間で、子宮からの出血など流産の兆候が現れているけれども、妊娠は子宮内に継続しており正常な妊娠経過への回復が期待できる場合をいいます。

つまり症状の程度にもよりますが、お医者さんから「切迫流産です」と言われる状況では、すべての人が流産に至ってしまうわけではありません。切迫流産の症状や検査、治療、切迫流産と言われた場合の過ごし方について以下に解説します。

1. 切迫流産の定義

流産とは妊娠21週6日までに何らかの理由で妊娠が終了してしまうことを指し全妊娠の約15%に起こると言われています。

切迫流産とは妊娠21週6日までの期間で子宮からの出血を認めますが、妊娠は子宮内に確認でき胎児は子宮外に排出されていない状態をいいます。下腹部痛の有無にかかわらず子宮からの出血を認める場合には切迫流産と診断されるため、継続が期待できる妊娠と流産に至る可能性の高い妊娠の両方が含まれます。出血の量が増加し、疼痛が強くなり子宮口の開大を認めた場合には、進行流産とされ流産に至る確率が高くなります。

2. 切迫流産と切迫早産の違いは?

切迫流産と切迫早産の違いは、妊娠期間の違いです。一般的に妊娠21週6日までの妊娠の中断を流産、妊娠22週0日から妊娠36週6日までに出産に至ることを早産といいます。これに準じて、妊娠21週6日までの間に出産の兆候を認めることを切迫流産、妊娠22週0日から妊娠36週6日までに出産の兆候を認める場合を切迫早産といいます。

3. 切迫流産の症状、兆候は?

切迫流産の主な症状は出血、お腹の張り、下腹部の痛みがありますが、その程度は個人差があります。少量の出血や軽い下腹部の痛みであれば、正常な妊娠初期の経過でも起こることがあります。

しかし以下のような場合は切迫流産など何らかの異常が起こっている疑いが強まるため、かかりつけの医療機関に連絡して、受診の必要性を相談してください。

  • 出血の量が多い
  • 出血に下腹部の痛みを伴う
  • 下腹部の痛みが強い

出血や腹痛は正常な状態で感じられることもありますが、このように強い症状や複数の症状が出る場合には何らかの異常が隠れている疑いがより強くなります。詳しくは「切迫流産の症状、兆候は?」のページで説明します。

4. 切迫流産の原因は何がある?

切迫流産や流産は原因不明のことも多いですが、以下のような原因が見つかる場合もあります。

妊娠11週6日までの流産の原因で最も多いのが胎児の染色体異常です。どんな両親からも染色体異常のある卵子や精子は作られているので、染色体異常による流産は誰に起こっても不思議のないことです。

胎児を包んでいる膜などに細菌などが感染して切迫流産を引き起こすこともあります。抗菌薬を使う治療法があります。

子宮頸管無力症は自覚症状がないのに子宮口の開大などが進む状態です。子宮頸管無力症のリスクが予想される場合などで、早産予防を図って子宮頸管縫縮術(しきゅうけいかんほうしゅくじゅつ)という手術が行われる場合があります。

詳しくは「切迫流産の原因は何がある?」のページで説明します。

5. 切迫流産の検査は何をする?

切迫流産が疑われた場合、以下の診察や検査を使って診断のための情報を集めます。

  • 膣鏡診
  • 内診
  • 経膣超音波検査
  • 血液検査

膣鏡診は、膣鏡(クスコ)という金属製の道具で膣を広げて中を観察する方法です。子宮頸管ポリープなどが切迫流産と似た症状を現す場合がありますが、膣鏡診で子宮頸部などを観察することで見分けがつく場合があります。切迫流産以外の原因が見つかった場合はそれに対応する治療を検討します。

内診は膣に指を入れて子宮頸部を触って調べる診察です。

経膣超音波検査は、細長い機械を膣に入れて行う超音波検査で、子宮の中の様子が画像でわかります。

内診と経膣超音波検査によって、子宮口の開大や頸管長など、切迫流産を意味する変化の有無や程度がわかります。さらに切迫流産の原因となる絨毛膜下血腫などが見つかる場合もあります。

血液検査は、感染が疑われる場合に炎症反応(白血球数、CRPなど)を調べることで、切迫流産の原因のひとつである絨毛膜羊膜炎などを見分ける役に立ちます。また異所性妊娠子宮外妊娠)の可能性がある場合に、妊娠の指標となるhCGを調べることもあります。

検査を使って切迫流産と診断されると、絨毛膜羊膜炎などの原因に対応する治療や、子宮収縮抑制薬などの治療が検討されます。

6. 切迫流産の治療には何がある?

妊娠初期の切迫流産に対しての流産予防に効果の根拠がはっきりとしている薬物療法はありません。しかし妊婦さんの症状によっては、子宮収縮を抑制させる薬などが処方されることがあります。

子宮収縮を抑制する薬には種類があり、妊娠週数などに応じて使い分けます。妊娠12週0日未満で使うピペリドレート塩酸塩(ダクチル®)、妊娠12週0日以降16週0日未満で使うイソクスプリン塩酸塩(ズファジラン®)、妊娠16週0日以降で使うリトドリン塩酸塩(ウテメリン®)などがあります。

また、過去の流産や早産の経験がある場合などに、子宮頸管縫縮術という手術が検討されることがあります。子宮頸管縫縮術は子宮頸部を糸で縫うことで子宮口の開大や子宮頸管の短縮を抑える手術です。しかし子宮頸管縫縮術はいつ行うべきかなど、効果について不明な点もあります。

切迫流産の治療について詳しくは「切迫流産の治療には何がある?」のページで説明します。

7. 切迫流産と言われたら日常生活で気を付けることは?

切迫流産と診断された場合、無理な運動は避けたほうがいいと考えられますが、どの程度安静にすれば流産を防げるかははっきりわかっていません。

絨毛膜下血腫が見つかった人ではベッド上安静にしたほうが流産が少なかったという報告もあります。

大切なのはかかりつけの医師と相談して、自分の状態に合った行動を考えることです。

また、仕事との関わり方も人それぞれで大切です。母性健康管理指導事項連絡カードを使うと主治医からの指導などを的確に職場に伝える助けになります。

詳しくは「切迫流産と言われたら日常生活で気を付けることは?」のページで説明します。

8. 流産の確率はどのくらい?

全妊娠の約15%と一般的に考えられているよりも高い頻度で流産は起こっています。流産のうち80%から90%ほどは妊娠12週0日までに起こり、この時期の流産は早期流産と呼ばれます。早期流産のほとんどは胎児の染色体異常が原因であり、お母さんの生活が原因となっているわけではありません。どんな両親でも胎児の染色体異常はある程度の確率で起こります。

また、流産率は年齢と比例して上昇し、25歳から29歳の女性の流産率が11.9%であるのに対して35歳から39歳の女性の流産率は24.6%です。これは年齢とともに胎児の染色体異常の確率が上昇することが原因といわれています。

切迫流産と診断された人のうち、どのくらいの割合で流産をするかという事は分かっていません。しかし切迫流産は出血や腹痛といった症状がみられてはいても、妊娠が子宮内で継続している状態で、正常な妊娠経過への回復が期待できる場合をいいます。つまり、お医者さんから「切迫流産です」と言われる状況では、症状の程度にもよりますが、すべての人が流産に至ってしまうわけではありません。