せっぱくりゅうざん
切迫流産
妊娠22週未満で、胎児心拍は確認できるが流産となる可能性の高い状態のこと
1人の医師がチェック 5回の改訂 最終更新: 2021.12.16

切迫流産の診察・検査は何をする?

切迫流産では出血や腹痛などの症状に合わせて、膣鏡診(クスコ診)や内診、経腟超音波検査、血液検査などを行います。検査を行うことで妊娠が子宮内に継続できているかどうかや子宮の状態、感染兆候の有無などを確認します。

それぞれの検査とその目的について以下に解説していきます。

1. 膣鏡診(クスコ診)

クスコ診

クスコという産婦人科の検査器具をかけることで、膣を広げて中を観察します。出血の有無や腟分泌物の性状、破水の有無など切迫流産の症状がないかを確認します。性器出血の原因として、切迫流産以外に子宮頸管の粘膜が増殖してできた子宮頸管ポリープや子宮膣部のびらんの可能性もあるためそのような膣内の炎症がないかを確認します。

子宮頸管ポリープは切除をすることで簡単に治療できることがほとんどですが、妊娠中に切除するかどうかは妊娠経過やポリープの大きさによって異なります。妊娠経過にも特に影響を及ぼしていない子宮頸管ポリープである場合には妊娠中は切除せず経過をみる場合も多いです。

また大部分は良性腫瘍ですが、ごく稀に悪性である場合もあり、切除したポリープの組織学的検査をすることで良性か悪性かを調べることができます。

子宮膣部のびらんはホルモンの分泌が盛んな20代から30代の女性に多く見られ、妊娠経過に悪影響はおよぼさないことが多いので、経過をみていきます。

2. 内診

内診とは、内診台の上で腟に指を入れて子宮口などの様子を触って調べる診察のことをいいます。内診をすることで、子宮口の柔らかさ、子宮口の開大や子宮頸管長の短縮などを直接ふれて観察します。通常妊娠初期では、子宮口は閉鎖していて子宮頸管長は35mmから40mm程度です。

内診と経膣超音波検査をあわせて、切迫流産の状態かどうかの判断材料とします。

3. 経腟超音波検査

診察台の上で腟に細長い超音波の検査機器をいれて、子宮内の画像を映し出します。切迫流産の診断には、子宮内に胎嚢(赤ちゃんを包んでいる袋)や胎児が観察できるか、胎児心拍が確認できるか、胎児心拍の徐脈はないか、子宮頸管長や子宮口の開大などの流産兆候はあるかなどを観察します。また、切迫流産の原因の1つとなる絨毛膜下血腫についても経腟超音波検査で確認することができます。

4. 血液検査

絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)といわれる子宮内の細菌感染は切迫流産の1つの原因です。そのため血液検査を行い、白血球数やCRPといわれる炎症反応を確認することで感染している兆候があるかどうかを調べます。結果によっては、抗菌薬の投与が検討されます。

またhCGという絨毛(胎盤となる組織の一部)から作られるホルモンの値を確認することで、妊娠をしているかどうかを確認します。hCGは妊娠していると多く作られ、流産した場合には値が低下します。つまり、hCGは妊娠しているかどうかを確かめる指標になります。通常は、hCGが1,500IU/Lから2,500IU/L以上であった場合には妊娠の可能性が非常に大きく、経腟超音波検査を行うと子宮内に胎嚢(たいのう、赤ちゃんを包んでいる袋のこと)が確認でき、妊娠が確定できるようになります。

しかし全妊娠の1%から2%程度のごく稀な場合に異所性妊娠子宮外妊娠)といって、子宮の中以外の場所に受精卵が着床し妊娠してしまっていることがあります。その場合は血液検査でhCGの上昇はみられますが、経腟超音波検査で子宮内に胎嚢を確認することができません。正常な妊娠でも妊娠5週ごろまで胎嚢が見つからない場合はありますが、異所性妊娠と見分ける必要があります。

異所性妊娠の場合には、強い下腹部痛や出血が自覚症状としてはあり、切迫流産の症状と似ていることがあります。そのため子宮内に妊娠が確認できていない初期の場合には、hCGの値と合わせて診断をすることがあります。異所性妊娠のうち90%以上は卵管に受精卵が着床することで起こります。異所性妊娠であった場合に妊娠を継続することは困難であり、妊娠を無理に継続すると卵管が破裂してしまい妊婦さんの体の中で大出血が起こってしまうことがあります。そのため、異所性妊娠が分かった場合には妊娠を終了させる必要があります。

治療には、手術や薬物治療があり母の体の状態によって治療法を選択しますが、多くの場合は手術によって胎児と胎盤組織の切除をおこないます。hCGの値が1,000IU/L未満と低く、受精卵の大きさも小さい場合には、自然に流産することも期待できるため、自然待機をする場合もあります。