歯周病(歯周炎・歯肉炎)とは
歯周病は
目次
1. 歯周病(歯槽膿漏)とは
歯周病は歯の周りに細菌が感染して炎症が起きる病気です。歯と歯肉(歯茎)の境にある歯垢(
歯周病は歯肉炎と歯周炎を合わせたものです。かつては歯槽
まずは歯周病が起こる歯周組織の構造について説明し、次に歯周病が起こる仕組み、歯肉炎、歯周炎について説明します。
歯周組織の構造
歯周病はその名の通り歯のまわりの組織に起こる病気です。歯と歯周組織の構造は以下の通りです。
- 歯
- 歯髄
- 象牙質
- エナメル質
- 歯周組織
- 歯肉(歯茎)
- セメント質
- 歯根膜
- 歯槽骨
【歯と歯周組織の構造】

歯の中心にはいわゆる「歯の神経」と言われる歯髄があり、そのまわりを硬い組織が覆っています。硬い組織は内側から象牙質、エナメル質と呼ばれます。歯の根っこ(歯根)は内側からセメント質、歯根膜、歯槽骨、歯肉(歯茎)という歯周組織に覆われています。この歯周組織に炎症が起きて破壊されていく病気が歯周病です。
歯周病が起こる仕組み
歯周病の原因は歯と歯茎の間についた歯垢(プラーク)です。プラークは細菌が集まってできたものです。身体には異物である細菌などを排除する
歯肉炎
歯肉炎は歯肉のみに炎症が起きた状態です。歯周病にかかっていない健康な状態でも歯と歯肉の間には1-2mmの溝(歯肉溝)があります。口の中の清掃が不十分だと、この溝に歯垢(プラーク)が付着して、炎症を起こして歯肉が赤くなったり、腫れたりします。このようにプラークが原因となった歯肉炎をプラーク性歯肉炎とよび、歯周病の初期段階です。
歯磨きなどの口腔ケアを徹底してプラークを除去したり減らしたりすると、歯肉炎は改善します。しかし、治療を行わずに放置すると多くの人は歯周炎に進行します。
歯周炎
歯肉炎が進行すると歯周炎になります。健康な歯でも歯と歯肉の間に溝がありますが、歯肉炎になると溝がやや深くなります(3mm以内)。歯肉炎を放置するとさらに溝が深くなり、歯周ポケットと呼ばれる深い溝(3mm以上)になります。歯周ポケットが深くなると炎症がさらに広がり、歯槽骨などが破壊されて歯周炎になります。歯周炎が進行すると歯を支える歯槽骨がどんどん破壊されて、歯がグラグラするようになります。
歯肉炎と違い歯周炎では、治療によって病状の進行を抑えられても、一度破壊された歯周組織が元に戻ることは期待できません。また、歯周病を起こす細菌を完全に排除することは難しいため、治療で歯周炎の進行が止まった後も定期的な歯科受診での口腔ケアが必要です。
歯周炎は数年単位でとゆっくり進行するので、なかなか病気に気がつかないことがあります。自分で歯周病かどうかチェックできる項目を「歯周病のセルフチェック方法はあるか」で紹介していますので、歯周病の可能性がある人は早めの受診をお勧めします。
2. 歯周病になりやすい人の特徴
歯周病にかかっている人の割合は年齢が上がるとともに大きくなります。その他にも糖尿病などの病気がある人は歯周病になりやすいことがわかっています。
年齢
歯周病にかかった人の多くは35歳前後で
全身疾患:糖尿病など
糖尿病などの病気がある人は歯周病にかかりやすいことが知られています。歯周病は糖尿病の大きな
また、糖尿病の治療をしてもなかなか
糖尿病の中でも1型糖尿病と呼ばれるものでは、糖尿病にかかっている期間が長いほど歯周病になりやすいことが、日本人の研究で報告されています。
3. 歯周病と生活習慣病などの全身疾患の関係
歯周病はさまざまな病気に影響するのではないかと言われています。具体的には、心筋梗塞や狭心症などの心血管系の病気や、誤嚥性肺炎、
特に糖尿病とは関連が深く、糖尿病があると歯周病にかかりやすくなるだけでなく、歯周病があることで糖尿病を発症しやすくなったり治療をしても血糖値がなかなかよくならなかったりすると言われています。
さらに重症の歯周病を放置すると糖尿病性腎症の発症や悪化に影響を与えるのではないかと考えられています。歯周病の治療によって糖尿病の指標であるHbA1cが改善するという報告があり、糖尿病の人には歯周病の治療が勧められます。
4. 歯周病の症状
歯周病でよくある症状は次の通りです。
- ブラッシング(歯磨き)時に出血する
- 歯肉(歯茎)が腫れる
- 歯肉(歯茎)が赤い
- 口臭がする
- 歯が痛い
- 歯が染みる(知覚過敏)
- 歯がグラグラする
歯周病は歯肉炎と歯周炎をあわせた呼び方です。初期の歯周病である歯肉炎の症状は軽く、歯茎が少し腫れたり赤くなるなどの症状が起こります。歯肉炎から歯周炎に進行すると出血や口臭、知覚過敏、歯のぐらつきなどが起こります。初期の歯周病では症状が軽いため知らない間に病気が進行していることがあります。
詳しい症状は「歯周病の症状」のページで説明していますので参考にしてください。
5. 歯周病の原因
歯周病はいろいろな要因が絡み合って発症しますが最も大きな原因は歯垢(プラーク)です。歯垢は細菌が集まってできたもので、歯にはりついて感染し炎症を持続的に起こすことで歯の周囲が破壊されます。歯周病を起こす原因や悪化に関連するものとして次のようなものがあります。
【歯周病の要因】
- 細菌に関わる要因
- プラーク(細菌の塊)
- 歯周病を起こす細菌の強さ
- 歯周病を起こす細菌の多さ
- プラークの残りやすさ
- 歯石
- 悪い歯並び・噛み合わせの悪さ・歯ぎしり
- 口呼吸
- 不適切な歯みがき
- プラーク(細菌の塊)
- 生活習慣に関わる要因
- 喫煙
- ストレス
- 食生活
- 全身の特徴に関わる要因
- 全身疾患:糖尿病など
- 遺伝的な要因
- 特定の薬
ホルモン バランスの変化免疫能
詳しくは「歯周病の原因」のページで説明していますので参考にしてください。
6. 歯周病の検査
歯周病の検査には次のようなものがあります。
問診 - 歯周基本検査
- 画像検査
細菌検査
問診では症状の他に今までかかった病気や、現在治療中の病気について聞かれます。現在歯磨きなどの口腔ケアをどの程度行なっているかも重要な情報です。歯磨きの回数やデンタルフロスなどを使用しているかなどが聞かれます。
歯周基本検査では歯周ポケットの深さや出血のしやすさ、歯垢の付着程度、歯のぐらつく程度について調べられます。これにより歯周病がどれくらい進行しているかがわかり、その後の治療方針が決定されます。歯周組織の状態を把握するための画像検査である
検査の詳細については「歯周病の検査」のページを参考にしてください。
7. 歯周病の治療
歯周病の治療では原因となる歯垢(プラーク)を取り除くことが基本です。必要に応じてプラークが残りやすい環境である歯並びや噛み合わせを改善する治療が行われます。進行した歯周病では歯周ポケットを浅くするための手術などの治療も行われます。
歯垢を取り除く治療では自分で行う歯磨きなどのケアと、歯科で行うケアの両方を行います。セルフケアが不十分だと歯科で治療を行なっても改善が難しいです。歯垢をしっかりと取り除く方法で歯磨きをするとともに、デンタルフロスなどを用いて歯間の歯垢も取り除くことが重要です。
歯科での治療や、セルフケアについては「歯周病の治療」で詳しく書いてありますので参考にしてください。
8. 歯周病の人の注意点
歯周病になった人は歯周病を悪化させるような生活習慣を改善させることも重要です。喫煙は歯周病を悪化させる要因であり、治療をしても効果があらわれにくくなります。喫煙をしている人は禁煙するようにしてください。また、磨き残しの多い歯磨きをしていた人は、歯科で教えてもらった歯磨き方法をきちんと行うことが重要です。
歯周病は心筋梗塞や狭心症などのさまざまな病気に影響していると言われています。歯周病治療を行うことはこれらの病気にかかるリスクを下げる一つの方法になります。
歯周病の人が気をつけるべきことについて「歯周病の人が知っておきたい注意点」に記載してありますので参考にしてください。
【参考文献】
・「歯周病治療の指針2015」(日本歯周病学会/編)
・J Int Acad Periodontol. 2000 Apr;2(2):49-55.
・「糖尿病患者に対する歯周病治療ガイドライン改訂第2版」(日本歯周病学会/編)
・Community Dent Oral Epidemiol. 2002 Jun;30(3):182-92.
・J Int Acad Periodontol. 2001 Oct;3(4):104-11.
・Diabetes Care. 2010 May;33(5):1037-43. doi: 10.2337/dc09-1778. Epub 2010 Feb 25.