歯周病(歯周炎・歯肉炎)の検査
歯周病の検査でははじめに
1. 問診
問診は病気の経過や症状を把握するのにとても重要です。最近では問診票などにあらかじめ症状などを詳しく書いて、それをお医者さんが参考にして診察が行われます。お医者さんからは歯の症状に関しての質問や、日頃の歯磨きなどのケアの状況、身体状況、生活背景に関しての質問があります。詳しく説明します。
歯の症状について
問診でははじめに、受診した主な理由が聞かれます。歯周病では具体的には次のような症状があります。
- 歯が痛い
- 歯がしみる
- 歯に食べ物がはさまる
- 歯茎が腫れる(痛い)
- 歯磨きの時に出血する
- 口臭がする
歯周病ではいろいろな症状が起こりますので、上記以外でも気になる症状があれば伝えるようにしてください。歯が痛かったりしみたりが、どのような時に起こるのかなども具体的に伝えてください。
日常の歯磨きなどの口腔ケアについて
日頃、歯磨きなどの口のお手入れ(口腔ケア)をどの程度しているかは重要な情報です。口腔ケアは歯周病治療で最も基本となるものです。口腔ケアの方法を改善するために、現在のケア方法について確認されます。
- 歯磨きをするのはいつか
- 1回の歯磨きの時間はどのくらいか
- 歯ブラシ以外の清掃用品を使っているか
- 歯磨き方法を習ったことがあるか
- 前回の歯科受診はいつか
質問内容を詳しく説明します。
◎歯磨きをするのはいつか
1日のうち歯磨きをいつするか聞かれます。具体的には次のタイミングが考えられます。
- 起床後
- 朝食後
- 昼食後
- 夕食後
- 就寝前
どのタイミングで歯磨きを行うか、1日何回磨いているかを伝えてください。
◎1回の歯磨きの時間はどのくらいか
歯磨きにかけている時間は普段あまり意識していないかもしれません。数分なのか5分以上なのか、大体で良いので伝えてください。1日何回も歯磨きを行っていたり十分な時間をかけていたりするのに歯周病になっている場合には、磨き方が不十分な可能性があります。その場合は、今のケア方法を見直すことで歯周病が改善する可能性があります。
◎歯ブラシ以外の清掃用品を使っているか
歯ブラシ以外の清掃用品には次のようなものがあります。
- デンタルフロス
- 歯間ブラシ
歯周病では、これらの清掃用品を使って歯と歯の間の歯垢(
◎歯磨き方法を習ったことがあるか
大人になって歯科などで改めて歯磨き方法を習ったことがある場合には伝えてください。正しい歯磨き方法で歯垢を除去することが歯周病には重要です。習ったことがない場合には、歯科できちんと指導してくれます。
◎前回の歯科受診はいつか
歯周病では、いったん改善した場合でも半年に1回程度は歯科で歯垢や歯石などの汚れをとることが重要です。ふだんの歯磨きでは歯垢を取りきれないことがあるからです。歯科での定期的な清掃を行わない場合は、再度歯周病が悪化することがあります。最後に歯科受診した時期について伝えてください。
日常の生活習慣について
日々の生活習慣でも歯周病を悪化させる要因があります。具体的には次のようなことを聞かれます。
- 習慣的に飲む飲み物があるか
- 間食はするか
- 喫煙をどの程度するか
- 飲酒をどの程度するか
質問内容を詳しく説明します。
◎習慣的に飲む飲み物があるか
毎日のように飲む飲み物があれば伝えてください。丁寧に歯磨きをしても、炭酸飲料や果汁飲料などの酸性度の高い飲み物を日常的に飲んでいると歯が溶けやすくなったりします。また、酸性度が高くなくても断続的に飲み物を飲んでいる場合や、アルコールを日常的に飲んでいる場合なども歯に悪影響を与えていることがあります。思い当たる習慣的な飲み物があれば伝えて、歯にどのような影響を与えているか聞いてみてください。
◎間食はするか
間食をする人はダラダラと食べているのか、時間を決めて食べているのか伝えてください。たとえ甘い物でなくても、断続的に食べ物を口にしていると歯が食べ物にさらされている時間が長くなるので、歯垢がつきやすくなります。どうしても間食をしたい場合には時間を決めて食べるようにしてください。
◎喫煙をどの程度するか
喫煙している場合には、1日の本数と何年間喫煙しているかを伝えてください。現在喫煙していない場合でも、以前喫煙していた場合には、その頃の本数と年数を伝えてください。喫煙は歯周病を悪化させる最大の要因です。歯科で適切な治療を行っても、喫煙をしていると病状が改善しにくかったり、いったん改善してもすぐに悪化したりすることがわかっています。
喫煙は歯周病だけでなく他のさまざまな病気の原因にもなります。今後の健康のためにも禁煙が望ましいです。
◎飲酒をどの程度するか
飲酒をする場合には1日の量と週に何回程度の飲酒をするか伝えてください。日常的なアルコール摂取が歯に悪影響を与えることもあります。また、酔って歯磨きをせずに寝てしまうことなどもあり、歯垢がたまりやすくなる要因になります。
身体状況について
治療するにあたって必要な情報を得るために、他の病気や生活に関しての質問も行われます。
- 以前に治療した、もしくは現在治療中の病気、けが、持病はあるか
- 常用薬やサプリメントの服用はあるか
- 薬や食べ物などの
アレルギー はあるか - 妊娠や授乳をしているか
質問内容をより詳しく説明します。
◎以前に治療した、もしくは現在治療中の病気、けが、持病はあるか
以前に治療を受けたことがある病気や、現在治療中の病気などがある場合には伝えてください。糖尿病があると歯周病になりやすいことがわかっています。その他にも、歯周病と関連する病気もありますので、現在治療中の病気などは全て伝えてください。
◎常用薬やサプリメントの服用はあるか
現在使用している薬やサプリメントがあれば教えてください。歯周病の治療で新しく薬を服用する時には飲み合わせを確認する必要があります。市販薬やサプリメントについては自分で把握しておく必要がありますが、医療機関からもらった薬についてはお薬手帳を活用すると漏れなく伝えることができます。
◎薬や食べ物などのアレルギーはあるか
治療で新しく薬を使用する際に必要な情報です。
歯を削る場合などに局所麻酔薬を使うことがあります。局所麻酔薬は一般的にはリドカイン(商品名:キシロカイン®)が使われます。以前に抜歯や歯の麻酔で気分が悪くなったことがある場合には、アレルギーの可能性がありますので必ず伝えてください。
◎妊娠・授乳をしているか
妊娠中や授乳中の場合には治療に使う薬剤などに気をつける必要があるので伝えてください。妊娠中は歯周病になりやすいです。自治体によっては妊婦歯周病検診などが行われている場合もあります。
2. 歯周基本検査
歯周基本検査は歯周病の人に行われる一般的な検査です。受診時点での歯周病の進行度を確かめて、今後の治療を計画するために行われます。
歯肉の炎症・出血の有無
歯肉の
歯周ポケットの深さの測定
歯周病が進行すると歯周ポケットはどんどん深くなります。歯周ポケットの深さを、ポケット深針と呼ばれる先の丸くなった細い定規で測定します。日本歯周病学会の出しているガイドラインでは、歯周ポケットの深さによる歯周炎の進行の程度を次のように分類しています。
【歯周病の進行の程度と歯周ポケットの深さ】
歯周病の進行の程度 | 歯周ポケットの深さ |
健康な歯茎 | 2mm以内 |
歯肉炎 | 3mm以内 |
軽度歯周炎 | 4mm未満 |
中等度歯周炎 | 4-6mm |
重度歯周炎 | 6mm以上 |
歯垢(プラーク)の検査
歯垢(プラーク)がどのくらい付着しているかをみる検査です。患者が日常の歯磨き(ブラッシング)でプラークをどの程度清掃できているかを確認します。通常はプラークが赤く染まる染色液を歯に行き渡らせて、赤くなった所を目で見て確かめます。
歯の動揺度(ぐらつきの程度)の検査
歯周病では歯を支える歯槽骨が破壊されるため、悪化すると歯のぐらつきが強くなります。歯周病の進行の程度を把握するため歯のぐらつきを調べます。具体的にはピンセットや指などを使って歯を動かして、ぐらつきの幅を測定します。ペリオテストという専用の測定機器を用いて測定することもあります。
歯の動揺の程度(ぐらつきの程度)の分類は次の通りです。
【歯の動揺の程度とぐらつきの幅】
歯の動揺の程度度 | ぐらつきの幅 |
0度:健康 | 0.2mm以内(生理的動揺) |
1度:軽度 | 前後(唇と舌方向)に0.2-1mm以内 |
2度:中等度 | 前後(唇と舌方向)、左右に1-2mm以内 |
3度:高度 | 前後(唇と舌方向)、左右に2mm以上、または垂直方向にぐらぐら大きく動く |
歯のぐらつきが大きい場合には、歯周ポケットが深いことが多く、歯根と歯肉の付着が少なくなっていることを表します。歯の動揺がある場合には治療に対する反応が悪く治りにくいです。
口の中の検査:噛み合わせ(咬合状態)の確認、詰め物(修復物)の検査
噛み合わせ(咬合)や口の中の状態を確認して歯周病を悪化させる要因がないかを診察します。歯ぎしりや食いしばりの癖があると歯槽骨がもろくなって歯並びが悪くなることがあります。歯並びが悪いと歯の重なり部分や隙間にプラークが詰まりやすく、歯周病を悪化させる要因になります。
また虫歯の治療で歯に詰めた物(修復物)が合っていなかったり金属クラウンをつけていたりする場合なども、歯垢がたまりやすく歯周病の要因の一つになることがあります。
その他の検査
唾液が少ないと口内の汚れや細菌が洗い流されにくくなるなどで、歯周病を悪化させる要因の一つになります。また、食事をすると口の中は酸性に傾き歯の表面が溶けやすい環境になります。唾液には酸を中和して口内を中性に戻す働きがあり、中和する能力(唾液中和能)が不十分だと虫歯や歯周病になりやすい状態になります。
唾液の状態を知るため、唾液量の測定や唾液中和能の測定などを行うことがあります。
3. 細菌学的検査
歯垢(プラーク)内もしくは唾液内にいる歯周病を起こす細菌の種類数を調べます。難治性(治りにくい)の歯周病では細菌の検査を元に
4. 画像検査:レントゲン検査
歯槽骨の状態や歯周組織の炎症状態を把握するために
5. 歯周病の検査費用
歯周病の検査は保険で行われる部分と保険ではない部分があります。歯周基本検査やレントゲン検査などは保険が適用されます。保険の負担割合にもよりますが、検査の自己負担額は1回あたり1000-3000円程度です。
【参考文献】
・「歯周病治療の指針2015」(日本歯周病学会/編)
・J Clin Periodontol. 1980 Dec;7(6):495-505.