とっぱつせいほっしん(しょうにばらしん)
突発性発疹(小児バラ疹)
発熱と発疹を伴う感染症。多くの小児が一度は経験する
13人の医師がチェック 95回の改訂 最終更新: 2024.06.04

​​突発性発疹の症状とは?

赤ちゃんが39度や40度の高熱を出すと心配になりますが、慌てなくていい場合がほとんどです。子どもの発熱の代表的な原因である突発性発疹の見分け方と、気を付けたい危険のサインについて説明します。

1. 突発性発疹の症状は熱が下がった後の赤い発疹

突発性発疹はウイルスが原因で、うつる病気です。ほとんどすべての子どもが一度はかかります。突発性発疹は1歳未満の赤ちゃんにもうつりますが、大人にうつることはほとんどありません。

発熱した後に赤い発疹が出るのが突発性発疹の特徴です。典型的な経過を次に説明します。

3日から5日の高熱、発疹はないことのほうが多い

突発性発疹の発熱は突然の高熱が特徴で、40度を超えることもあります。発熱は3日から5日くらい持続することが多いです。

発熱だけがあって発疹が出ないことも多く、発熱した子どもの10%から20%に発疹が出ると言われています。発疹がなくても突発性発疹と言うのですが、発疹がない場合は突発性発疹と診断されないまま治ってしまったりするので、正確にどれぐらいの割合なのかはわかりません。

皮疹(ひしん、皮膚の症状)は熱が下がったあとに出ます。皮疹と発疹はだいたい同じ意味です。発疹とは皮膚に症状が出るという意味で、読み方は「ほっしん」でも「はっしん」でも通じます。突発性発疹は「とっぱつせいほっしん」と読むのが普通です。

発疹はいつまで残る?

突発性発疹の皮疹は4日間程度で自然に消えていき、ほとんどの場合で痕は残りません。

2. 突発性発疹の皮膚の症状の特徴は?

突発性発疹の皮疹は全身に出ることが多いです。特に皮疹が出やすい場所は、胸から腹にかけて、背中、顔です。

突発性発疹の皮疹の見た目

突発性発疹の皮疹は数mm程度の大きさで、赤くポツポツとした斑点状で平坦なもの(紅斑)や、赤く斑点状で数mm程度盛り上がっているもの(丘疹)が典型的です。水ぶくれ(水疱)ができることはあまりありません。たいていの場合、皮疹にかゆみは伴いません。突発性発疹の見た目の特徴は、麻疹はしか、ましん)の時に出る皮疹と似ているので注意が必要です。

ほかに目に見える症状として、のどちんこの横に赤い斑点のような模様の膨らみが出ることがあります(永山斑と呼ばれています)。

皮膚の症状が突発性発疹の特徴に似ていると思ったら、麻疹と見分けるために、お医者さんに見せてください。

3. 熱と発疹以外の症状はある?

突発性発疹の症状は発熱と皮疹が最も代表的ですが、ほかの症状もときどき現れます。

【突発性発疹のその他の症状】

  • 鼻水
  • 不機嫌
  • 下痢
  • けいれん

熱が出ている間、かぜのような咳や鼻水の症状を伴うことがあります。

たいていの子どもは機嫌が悪くなります。便が緩く下痢気味になることもあります。けいれん(痙攣)を起こすこともあります。突発性発疹によるけいれんは15分以内に自然とおさまることが多いです。

発熱そのものが原因でけいれんが起こる、熱性けいれんというものがあります。熱性けいれんは比較的怖くないけいれんで、たいていの場合5分以内に治まり後遺症を残しません。

15分以上のけいれんには注意

けいれんが15分以上続く場合は、遷延性発作(せんえんせいほっさ)と呼ばれる治療の難しいけいれんの可能性がありますので、病院で診てもらってください。

ほかに突発性発疹でごくまれに起こる危険な状態のサインについて、このページの後半にまとめます。

4. 突発性発疹で高熱が出たらどうすればいい?

突発性発疹は安静にしていれば自然に治ります。高熱が出ても苦しそうでなければ、熱を下げる必要はありません。注意するべき点は、正しい診断をつけること、特にごくまれに起こる重症の場合を見逃さないことです。

発熱があっただけで子どもの身体に後遺症が残ることはありません。そのため、熱があっても苦しそうでなければ、解熱薬(げねつやく)を使う必要はありません。

病気で熱が出るのはなぜ?

突発性発疹の原因はウイルスです。ウイルスが感染しているとき、身体の免疫のしくみが働いて、ウイルスを排除しようとします。発熱は免疫の働きのひとつで、ウイルスが増殖しにくい環境を作る意味があります。このため、解熱薬で熱を下げると、熱でしんどい身体を楽にするメリットがありますが、ウイルスが増殖しにくい環境を作る効果を邪魔してしまいます。そのため、解熱薬は必要なときだけ使うのが最も良いと考えられます。

熱と一緒に出ると危険な症状は?

特に注意が必要なのは、1日以上続くひどい頭痛や、意識がぼんやりとしてしまう症状です。突発性発疹で1日以上の強い頭痛や意識もうろうがあるときは重症になっている可能性があります。以下で説明します。

5. 突発性発疹で重症になることはある?

突発性発疹は、基本的に軽症で自然と治る病気ですが、まれに重症化して、発熱や皮膚の症状以外の問題を起こします。このようにひとつの病気が原因でさらにほかの異常も引き起こされることを合併症(がっぺいしょう)と言います。

突発性発疹の合併症に髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎があります。髄膜炎とは、脳や脊髄を包んでいる膜にウイルスが感染して炎症を起こしている状態です。脳に炎症を起こした状態が脳炎です。

突発性発疹の原因である2種類のウイルスのうち、ヒトヘルペスウイルス6のほうがやや合併症を起こしやすく、ヒトヘルペスウイルス7によって重症の合併症に至ることは比較的少ないです。

免疫が弱っている人は特に注意

HIVに感染している人、臓器移植を受けた人、血液幹細胞移植を受けた人は免疫が弱くなっています。免疫が正常な人よりも、突発性発疹にかかった場合に髄膜炎や脳炎につながる危険性が高い状態です。当てはまる人は特に注意してください。

合併症によってどんな症状が出るかを次に説明します。

6. 突発性発疹が重症の合併症を起こしたときの症状は?

髄膜炎や脳炎の症状として、ひどい頭痛、けいれん、意識が遠くなってぼーっとする、などが挙げられます。このため、突発性発疹にかかったあと頭痛や意識が遠くなる症状があり、目安として1日以上続く場合は、合併症を伴っている可能性があります。急いで医療機関に行って診察を受けてください。

大泉門の変化にも注意

髄膜炎や脳炎によって、おでこの近くにある、大泉門(だいせんもん)と呼ばれる部位が盛り上がってくることがあります。

大泉門、小泉門

大泉門というのは乳児のおでこから少し上の部分にある頭蓋骨の隙間で、触ると数cm程度の範囲が柔らかいのがわかります。早い子では10ヶ月ごろにこの部分の骨がつながって柔らかい部分がなくなっていきます。これを「大泉門が閉じる」と言います。

ほとんどの子どもは18ヶ月から24ヶ月までに完全に大泉門が閉じます。大泉門がまだ閉じていない子どもが突発性発疹にかかった場合に、大泉門が盛り上がることがありますが、この場合は髄膜炎や脳炎の可能性もありますので注意が必要になります。

大泉門が盛り上がっていたら、急いで医療機関で診察を受けてください。

7. 突発性発疹の治療が原因で起こる症状は?

突発性発疹のウイルス以外に、まれに薬が原因で身体の状態が悪化することもあります。特に解熱薬を使用することで、薬のアレルギーや肝炎を起こすことがありますので、注意が必要です。

肝炎の症状はかゆみ、だるさ、黄疸などです。アレルギーの症状は皮膚、胃腸、気管や肺で起こることが多いので、皮疹や下痢・腹痛、息苦しさが出たときには注意してください。特に息苦しさがあるときは必ず医療機関にかかってください。

8. 突発性発疹に似た病気はある?

突発性発疹の症状は、発熱、お腹・背中・顔を中心に全身に出る発疹、不機嫌になるといったものです。けいれんや意識がもうろうとするといった症状もあります。突発性発疹以外に似た症状を引き起こす病気は、以下が考えられます。

突発性発疹は、熱が下がってから皮疹が出ることが特徴です。熱が下がったあとに皮疹が出たときは、突発性発疹のほかに麻疹はしか)が考えられます。

突発性発疹と比べると、麻疹は重症になりやすく、ほかの子どもにもうつりやすいという重要な違いがあります。

麻疹の症状は突発性発疹とかなり似ていて、見分けるのは簡単ではありません。間違って麻疹の発見が遅れてしまうと大変なことになるので、熱が下がったあと皮膚にブツブツが出たら、小児科や皮膚科を受診してお医者さんに調べてもらってください。