認知症の予防法:運動・禁煙・食事など
認知症の予防にはどのようなものがあるのでしょうか。認知症と関係があると考えられている病気や生活習慣などについて解説します。
1. 認知症の危険性を高める原因を治療する
認知症の
高血圧症と糖尿病は認知症の発症にどのような影響を与えているのでしょうか。この2つの原因に共通しているのは血管に対してダメージを与えるという点です。それぞれの病気について解説していきます。
参考文献
・日本神経科学会/監, 認知症疾患
・Press D, Alexander D, Prevention of dementia, UpToDate
高血圧症
高血圧症は血圧が高い状態が続くことで医学的には「
脳血管性認知症は脳卒中(脳梗塞や脳出血)の後に起こるタイプの認知症です。高血圧症は脳梗塞や脳出血の危険性を高めます。したがって脳梗塞や脳出血の後に引き続いて起こる脳血管性認知症の危険性も大きくなります。脳血管性認知症を避けるにはその原因となる脳梗塞や脳出血を起こさないことが予防につながります。
アルツハイマー型認知症は、大脳皮質などにリン酸化タウ蛋白やアミロイドβ蛋白質が現れることを原因とする病気で、平たく言うと脳の細胞が変化して認知症が現れます。脳血管性認知症と違って血管の病気ではないのですが、中年期の高血圧症がアルツハイマー型認知症を発症するリスクを上昇させる可能性が指摘されています。アルツハイマー型認知症の発症のメカニズムは完全には分かっていないのですが、高血圧症が何らかの影響を及ぼしている可能性があります。
高血圧症は無
糖尿病
糖尿病は
糖尿病になり
アルツハイマー型認知症は2型糖尿病との関連があると考えられています。糖尿病は2つのタイプがあり、2型糖尿病は肥満などの生活習慣が主な原因です。2型糖尿病ではインスリンが効きにくくなること(インスリン抵抗性)や相対的に量が減ることなどが原因で起こります。脳は糖分を栄養にしその取り込みにはインスリンが必要です。インスリンが効きにくくなったりその量が不足すると、βアミロイドという物質が増加してしまいアルツハイマー型認知症の発症を促してしまうなどの仮説が立てられています。
糖尿病は、認知症の発症と関わりがあると考えられています。もし持病に糖尿病があるのであればしっかりと治療することで認知症を発症する危険性を下げることができるかも知れません。
2. 認知症に予防効果がある生活習慣は?
認知症の予防効果のある生活習慣はあるのでしょうか。ここではいくつかの生活習慣と認知症の予防について考えてみたいと思います。
参考文献
・日本神経科学会/監, 認知症疾患診療ガイドライン2017
・Press D, Alexander D, Prevention of dementia, UpToDate
・Zhong G et al. Smoking Is Associated with an Increased Risk of Dementia: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies with Investigation of Potential Effect Modifiers. PLoS One. 2015 Mar 12;10(3):e0118333
運動
定期的な身体活動をする人には認知症の発症が少なかったとする結果がいくつかの研究から報告されており、特にアルツハイマー型認知症の発症に効果があるのではないかと推測されています。一方で運動と認知症の発症には関連が見いだせなかったものもあり運動がどの程度認知症の発症を抑えるかについては決まった見解が得られていません。
とはいえ一定の見解がないからといって運動に効果がないという訳ではありません。定期的に運動をすることは認知症の
いきなり激しい運動を生活の中に取り入れることは難しいものです。できる範囲の運動から始めて少しずつ負荷を強くするなどの工夫をして継続することを意識すると良いかもしれません。
禁煙
喫煙は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症を起こす危険性を上昇させると考えられています。一方で禁煙をした人は喫煙者と比べても認知症になる可能性は低くなるという報告もあり禁煙による効果にも一定の期待はできるかもしれません。
喫煙は心臓や肺の病気を起こす危険因子です。禁煙をすることは認知症だけではなく他の病気に対しても予防効果が期待できます。禁煙を考えているのであれば実行に移すことによって得られる利益は大きいので禁煙に取り組んでみてください。
禁煙には禁煙外来を活用するのもよいでしょう。禁煙外来を行っている医療機関などを参考にしてみて下さい。
余暇活動
余暇活動は、労働以外の時間を使って楽しみなどを追求する行為のことです。余暇活動には知的なもの(ゲーム、映画鑑賞など)や身体的なもの(スポーツ、散歩、エアロビクスなど)、社会的なもの(友人と会う、ボランティア、旅行など)などがあります。
余暇活動は、認知症の発症によく効果があるという報告があり中年期から老年期の余暇活動の効果が期待されています。余暇活動は多様でありその定義も難しいためにどの程度認知症の予防に効果があるかははっきりとはしていません。
とはいえ余暇活動は日々の生活に楽しみを与える不可欠なものです。忙しい中でも余暇活動をすることは認知症のみならず様々なよい効果をもたらしてくれるでしょう。
食事
認知症の予防に効果のある食べ物は長年探し求められていますが、予防に根拠がある食品または食事は現在はありません。とはいえどのようなものに予防効果が期待されて検証されているかは気になる所だと思います。以下のような食品に認知症の予防効果が期待されていますが予防効果を証明したものはありません。
- 食事スタイル
- 地中海食
- 食品
- ω-3脂肪酸(オメガ3脂肪酸)
- アルコール
ビタミン (B6、B12、葉酸、D、抗酸化ビタミン)
これらの食品は認知症の予防効果について検討されてはいるものの現在の所、認知症を予防するという証拠は得られていません。確かに認知症を予防できる食品があれば魅力的に感じる気持ちは理解できます。しかし、仮に予防に効果的な食品が発見されてもその食品を摂取し続けるだけで認知症を完全に予防することは難しいでしょう。病気を食品だけで予防することはどの病気でも難しいものです。
食事の役割は、当然ながら特定の病気を予防するだけではありえません。食事は日々の活動のために必要なエネルギーを得ることや生活のなかでの楽しみを得るという側面を忘れてはいけません。ある病気を気にするがあまりにバランスを崩したり食事がイヤになっては食事がもつ本来の役割からかけ離れているとも言えるでしょう。認知症の予防効果を期待して特定の食品を摂取し続けることは悪いことではありませんが、少なくとも栄養バランスを保ち精神的な負担を感じない範囲で行うことの方が大切です。