だんせいふにんしょう
男性不妊症
男性側の問題で妊娠が成立しない状態
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最終更新: 2024.04.26
男性不妊症の基礎知識
POINT 男性不妊症とは
不妊症の主な原因が男性にあるケースを指し、不妊症の約半数を占めます。男性不妊症の原因は乏精子症(精子が少ないこと)や、射精障害(射精が正常に行えないこと)などがあります。精液検査や血液検査で原因を特定し、適した治療を行います。不妊症の場合、女性側の原因については調べられることが多いですが、男性不妊症についても調べることが勧められます。男性不妊症について診察を希望される人は泌尿器科で相談してみてください。
男性不妊症について
- 男性側に何らかの原因があり、妊娠が成立しない状態
- 一般的に不妊症というと女性側の問題を指すことが多いが、WHO(世界保健機構)から不妊の原因の分類の割合が出ている
- 男性のみに問題がある場合:24%
- 女性のみに問題がある場合:41%
- 男女ともに問題がある場合:24%
- 原因が不明の場合:11%
- 一般的に不妊症というと女性側の問題を指すことが多いが、WHO(世界保健機構)から不妊の原因の分類の割合が出ている
- 造精機能障害による場合と、精路通過障害による場合、性機能障害による場合がある
- 造精機能障害
- 精巣で十分な精子を作り出せない状態
- 精路通過障害
- 精子が、精巣から尿道まで輸送出来ない状態
- 性機能障害
- 勃起不全(ED)などで性行為を正常に行なえない状態
- 造精機能障害
- 造精機能障害を起こす主な原因
- 原因不明(最も多い)
染色体 、遺伝子異常(クラインフェルター症候群など)- 精索静脈瘤:睾丸の上に流れる血管が異常に膨れてしまう
- 停留精巣:陰のうの中に、睾丸が入ってない状態
- 精巣
がん 下垂体 、甲状腺 疾患化学療法 、放射線療法 の影響- 加齢
- 喫煙
- 精液検査により以下の4つにわけられる
- 無精液症:精液が出ない
- 無精子症:精液中に精子を認めない
- 乏精子症:精液の中の精子の数が少ない
- 精子無力症:精子の動きが悪い
- 奇形精子症:正常な形の精子が極端に少ない
- 精路通過障害を起こす主な原因
- 不妊症の中の40〜50%が男性側にも問題があると報告されている
男性不妊症の症状
- 男性不妊症の定義
- 男性側に原因があり、妊娠が成立しない
- 通常の不妊症とは男女が1年間、妊娠の成立を目的として性行為を行っているのに妊娠が成立しない
- 男性側に原因があり、妊娠が成立しない
男性不妊症の検査・診断
- 精液検査
- 精液の分泌量、その中の精子の数、運動率、形態異常を有する率を調べる
- 精液
所見 (数値は下限基準値)- 精液量(ml):1.5ml
- 総精子数(百万/射精量):39(百万/射精量)
- 精子濃度(百万/ml):15(百万/ml)
- 総運動率(%):40%
- 前進運動率(%):32%
- 生存率(生存精子、%):58%
- 精子形態(正常形態、%):4%
- 血液検査
ホルモン に異常がないかを調べる
- 確定診断に必要な検査
超音波検査 - 精巣の位置、血管の位置を調べる
- 精索静脈瘤の診断にも有効
染色体 検査- 染色体に異常がないか調べる
- 精管
造影 - 精管が通り具合を調べる
MRI 検査- 精巣静脈瘤の有無や精巣の評価のために用いる
- 特殊検査:抗精子
抗体 、精子受精機能について調べる
男性不妊症の治療法
- 明らかな原因がある場合は原因を治療する
- 無精子症の治療
- 精路閉塞による場合:手術で精子が体外に出て行けるようにする
- 顕微鏡下精路再建術
- 射精管切開術
- 精管欠損による場合:精子を手術で取り出して顕微鏡を用いた受精を行う
- 精巣内精子採取術(TESE:Testicular sperm extraction )
- 顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)
- 精路閉塞による場合:手術で精子が体外に出て行けるようにする
- 精路通過障害の治療:原因ごとに適した治療法を選択する
- 精索静脈瘤の治療:手術で静脈瘤への血流を遮断する
- 顕微鏡下精巣静脈低位
結紮術 - 精巣静脈高位結紮術
- 顕微鏡下精巣静脈低位
- 逆行性射精の治療
- 膀胱内精子回収
- 三環系抗うつ薬
- 勃起障害(詳細はEDのページを参照)
認知行動療法 - ED治療薬
- 乏精子症、精子無力症の治療
- クロミフェン内服男性:
男性ホルモン の分泌を増やし造精機能を助ける - 補中益気湯内服:造精機能を助ける
- クロミフェン内服男性:
- それぞれの治療による効果が不十分な場合
- 精子の動きに問題が無い場合
- 人工授精
- 精子の動きが少ない場合
- 人工授精
- 体外受精
- 顕微授精
- 精子の動きがとても少ない場合
- 体外受精
- 顕微授精
- 精子の動きに問題が無い場合
男性不妊症の経過と病院探しのポイント
男性不妊症が心配な方
男性不妊症の診療は不妊症を専門とする泌尿器科で行われます。ただし、男性不妊症を専門とする泌尿器科医は少ないため、自力では探しづらいかもしれません。そうした場合には、女性の不妊症を担当する医師が情報をもっていることが多いので、紹介を受けるとよいかもしれません。