2015.06.28 | ニュース

HIVの薬が精子にダメージを与える?感染者の精液検査に見られた精子運動性の変化

エファビレンツ使用との関連

from Human reproduction (Oxford, England)

HIVの薬が精子にダメージを与える?感染者の精液検査に見られた精子運動性の変化の写真

エイズ(AIDS)を起こすHIVは、レトロウイルスと呼ばれる種類のウイルスで、感染した人はウイルスの増殖を抑えるエファビレンツという薬などを使って治療されます。この治療によりエイズの発症を遅らせることができるのですが、副作用の疑いとして、エファビレンツを使っていた人で精子運動性が低かったことが新たに報告されました。

◆HIV感染者378人の精液検査から

HIVに感染した男性の精液に変化が見られることが、すでに報告されていました。研究班は、この変化がHIVの治療薬によるものかどうかを確かめるため、HIVに感染していた378人の男性の精液を検査し、HIV感染に対して受けていた治療と精液の特徴との関係を調べました。

 

◆高速運動精子が20%から5%に

検査から次の結果が得られました。

精子運動性だけが、治療状態によって有意な変化が見られた精液所見だった。高速運動精子の割合の中央値は、エファビレンツを含むレジメンの治療を受けていた患者群の5%に対して、ほかの群では20%だった(P<0.0001)。

どの薬を使っていたか、または薬を使っていなかったかによって、精子運動性にだけ違いが見られました。高速運動精子の割合が、エファビレンツを使っていなかった人では中央値20%でしたが、エファビレンツを使っていた人では中央値5%と、少なくなっていました

研究班は、「エファビレンツは現在の抗レトロウイルス治療において広く使われているため、この所見はHIVに感染していて子どもを持ちたいと望む多くの男性に関係するかもしれない」と述べています。

 

この研究では、エファビレンツによって妊娠しやすさに違いがあるかどうかは調べられていません。もし違いがあるとわかれば、あるいは精子と同じようにほかの細胞の変化とも関連が見つかれば、薬の使い方に影響するかもしれません。HIV感染の治療も、子どもを持つことも、どちらが優先とは一概に決められない非常に重要なことだけに、さらに詳しい情報が望まれます。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Impaired sperm motility in HIV-infected men: an unexpected adverse effect of efavirenz?

Hum Reprod. 2015 Jun 16 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26085581]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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