2017.06.25 | ニュース

なぜ50歳女性が駅で一晩過ごさなければならなかったのか

HIVとともに歳を取るということ
from Lancet (London, England)
なぜ50歳女性が駅で一晩過ごさなければならなかったのかの写真
(C) OcusFocus - iStock

エイズが1980年代に認知されて以来、治療は発達し、HIVに感染した人の生存期間は感染していない人とほとんど変わらないようになりました。しかし、社会的な側面には多くの問題が残されています。

医学誌『Lancet』が、イギリスでHIV感染者が困難に面している状況をレポートしました。
 

50歳女性のヘレンは16年前に出身地のウガンダで手術を受けたときにHIVに感染しました。記者が取材した前日、ヘレンは駅で一晩過ごしていました。

HIVを持って生活することを取り上げたテレビ番組に出演したあと、借りていた部屋の大家から、部屋を出て行くように言われました。子供にうつされないようにという理由でした。荷物はすでにガレージに動かされていました。
 

HIV対策活動をする団体テレンス・ヒギンズ・トラストのクライブ・ブラウズ氏は、50歳以上のHIV感染者は「経済的に困っていて、疎外され、孤独を感じ、不幸だと感じ、同じ年齢のほかの人たちが利用できるサービスを利用できずにいる」と発言しています。

トラストの調査では、イギリスの50歳以上のHIV感染者246人のうち、58%が週に283.80ポンド(およそ4万円)未満の収入で暮らし、82%が中等度から高度の孤独を感じていると答えました。
 

イギリスの状況についてのレポートを紹介しました。『Lancet』は世界中で読まれている医学誌です。国によって違いはあっても、HIV感染をめぐるイギリスの状況は、普遍的な問題点を含んでいます。

HIVに対する治療薬が発達したことで、HIVに感染しても命に関わる事態を防いで普通の日常生活を送れるようになりました。

HIVは性行為や輸血、注射の回し打ちといった限られた状況を除けば、日常生活の中で人から人へ感染することはありません。性行為をしてもコンドームを使うなど正しい対策によって感染は防げます。しかし、ヘレンのように偏見から不当な扱いを受ける例はまだ残っています。

社会的なサポートを必要とする人が心無い扱いを受けることは間違っています。HIV感染者の「孤独」の解決に近付くためには、社会全体に正しい理解を広めることが第一歩になるのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Growing older with HIV in the UK.

Lancet. 2017 Mar 4.

[PMID: 28271830]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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