2015.06.11 | ニュース

同性婚を禁じるとHIV治療に悪影響か

ナイジェリアで同性婚を禁止する前後の追跡調査
from The lancet HIV
同性婚を禁じるとHIV治療に悪影響かの写真
(C) Syda Productions - Fotolia.com

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し治療の効果が得られなければ、いずれAIDS(後天性免疫不全症候群)を発症します。AIDSとは、免疫の働きが壊れ、通常の人は感染しないようなカビやウイルスに感染しやすくなってしまう状態です。HIVは性交渉を介して感染することが多く、予防が重要です。今回は、「同性婚」を禁止する法律が、HIV治療を滞らせるかもしれないというナイジェリアの研究をご紹介します。

◆同性婚を禁止する前後で患者を比較

ナイジェリアでは、2014年1月に、同性婚を禁止する法律が施行され、同性間の性交渉は犯罪とされました。今回の研究では、この法律のHIV治療に与える影響を解析する為、以下のような方法を取りました。

[…]TRUSTコホート研究は、ナイジェリアのアブジャに住む16歳以上の男性同士の性交渉を行う男性を対象に行われた前向き研究コホートである。HIVの治療成績、医療介入を恐れたり避けたりする傾向などの患者に与える恥辱、といった項目を、同性婚禁止法の施行前後で四半期毎に追跡した。具体的な指標としては、恥辱や差別の程度、外来での追跡が不可能になる事象、抗ウイルス療法の状況、ウイルス量である。[…]

本研究では、16歳以上の同性間性交渉を行う男性を対象に、同性婚禁止法案の施行後にHIVに対する患者の考え方や、実際の治療がどのように変化したかを、前向きに追跡して解析しています。

 

◆同性婚禁止法施行以降、医療に対する恐怖を感じる同性愛者が増えた

結果は以下のようなものでした。

2013年3月19日から2014年8月7日まで、707人の同性間性交渉をする男性を追跡し、同性婚禁止法施行前にのべ756回の外来受診、施行後にのべ420回の外来受診があった。医療を求めることに恐怖を感じたことがあると報告した患者の数は、法律施行後の方が有意に多かった。(法律施行後161人(38%) VS 法律施行前187人(25%), P <0.0001)[…]外来追跡が不可能になったり、医療を避ける行動をとったりすることに関しては追跡期間中に特に変化はなかった。同性間性交渉をする男性の中で、実際にHIVに感染している181人のうち、161人(89%)はウイルス量を測定していた。そのうちで医療従事者に対して自身の性交渉について開示している人たちは、一度も開示したことのない人たちに比べて、法律施行前のウイルス量が良好に抑制できていた。(62人中18人(29%)VS 99人中13人(13%); P = 0.013)

上記の結果を簡単にまとめると、

  1. 同性婚禁止法の施行により、医療を受けることを怖がる同性愛男性が増えた。
  2. 同性婚禁止法の施行前、同性愛を医師に公言していたHIV患者は、治療成績が良かった。

となりました。

 

解釈としては議論の余地があります。もしかすると、同性婚を法律で禁止することは、HIV治療に関してはネガティブな影響を与えるのかもしれません。

抗ウイルス療法が発展した昨今では、適切な治療を受ければ多くの場合AIDS発症せずに良好なHIVのコントロールを得ることができます。HIV治療を滞らせる原因としては、HIV検査の遅れ、治療介入の遅れ、内服や外来の中断、などが挙げられますが、今回の法律は意図せずしてまさにこれらの原因を作ってしまったのかもしれません。

全世界で同性婚にかかわる法律が変化していく中、政治的な面だけでなく医療面からも切り口を与えてくれる非常に意義深い論文だと感じます。

執筆者

石田 渉

参考文献

The immediate effect of the Same-Sex Marriage Prohibition Act on stigma, discrimination, and engagement on HIV prevention and treatment services in men who have sex with men in Nigeria: analysis of prospective data from the TRUST cohort.

Lancet HIV. 2015 June 1 [Epub ahead of print]

[PMID: 26125047 ]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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