2015.06.27 | ニュース

HIVに感染した人はがんによる死亡率が高い

アメリカ180万人の統計から

from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology

HIVに感染した人はがんによる死亡率が高いの写真

エイズ(AIDS)を起こすHIV感染は、カポジ肉腫というまれながんの原因になるほか、さまざまな種類のがんによる死亡の増加とも関連すると言われています。アメリカの研究で、HIVに感染した人を含む180万人以上のがん患者の死亡率を統計解析した結果、結腸直腸がん(大腸がん)、肺がん、悪性黒色腫(皮膚がん)、乳がんなどが原因の死亡率増加と関連が見られました。

◆アメリカ180万人の統計解析

研究班は、アメリカのがん患者とHIV感染者の登録情報から、次の180万人あまりの対象者について死亡率とHIV感染の関連を統計解析しました。

1,816,461人のがん患者を対象とし、そのうち6,459人(0.36%)はHIVに感染していた。

 

◆各種のがんによる死亡増加と関連

解析から次の結果が得られました。

HIV感染者ではHIV非感染者に比べて、多くのがんについて腫瘍特異的死亡率が有意に上昇していた:結腸直腸がん(調整ハザード比1.49、95%信頼区間1.21-1.84)、膵臓がん(調整ハザード比1.71、95%信頼区間1.35-2.18)、喉頭がん(調整ハザード比1.62、95%信頼区間1.06-2.47)、肺がん(調整ハザード比1.28、95%信頼区間1.17-1.39)、悪性黒色腫(調整ハザード比1.72、95%信頼区間1.09-2.70)、乳がん(調整ハザード比2.61、95%信頼区間2.06-3.31)、前立腺がん(調整ハザード比1.57、95%信頼区間1.02-2.41)。

HIV感染者では、それぞれのがんが原因で死亡する率が、結腸直腸がん、膵臓がん、喉頭がん、肺がん、悪性黒色腫、乳がん、前立腺がんについて高くなっていました。

 

なぜHIV感染者で一部のがんによる死亡率が高くなったのかはこの研究では分かりません。HIV感染が原因でがんの進行が早くなった可能性も考えられますが、がんの治療中に深刻な感染症が起こった、感染症を恐れて治療方法が制限された、HIV感染者とそうでない人で受診行動や生活習慣に違いがあった、などさまざまな可能性が検討されます。対策にはHIV感染が広がらないようにすることはもちろん、多くの面を考えに入れる必要がありそうです。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Elevated Cancer-Specific Mortality Among HIV-Infected Patients in the United States.

J Clin Oncol. 2015 Jun 15 [Epub ahead of print]

 

[PMID: 26077242]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る