だんせいふにんしょう
男性不妊症
男性側の問題で妊娠が成立しない状態
7人の医師がチェック 130回の改訂 最終更新: 2024.04.10

男性不妊症の検査について

男性不妊症が疑われる場合は、診察や検査によって、原因が詳しく調べられます。診察や検査の中では精液検査が重要です。精液検査からは、精子の量や運動率などが分かり、原因の推定だけではなく、治療を選ぶ際の判断材料にもなります。

1. 問診

問診は患者さんとお医者さんが主に対話形式で行う診察のことです。問診には患者さんの症状・背景(持病や内服薬など)の把握や、原因の推定といった目的があります。お医者さんは患者さんからの話を踏まえたうえで、詳しい質問をします。

【男性不妊症の人への問診例】

  • 不妊の期間
  • 性交時の様子
  • パートナーの不妊症の検査について
  • 不妊治療の有無
  • 内服薬の有無
  • 過去にかかったことがある病気

不妊症は避妊しない性行為を1年以上行っても妊娠にいたらないことを指します。不妊症の期間が診断のうえで肝になるので、詳しく説明してください。原因を推定する際には性交時の様子も重要な情報なので、恥ずかしい内容ではありますが、できるだけ正確に答えてください。 不妊症の要因の約半分は男性にあると言われていますが、もう半分の要因は女性にあると言われています。男性不妊症の検査と並行して、パートナーもしっかり調べてもらってください。

2. 身体診察

身体診察とは、お医者さんが患者さんの身体を観察したり、触れたりして、全身をくまなく調べることを指します。男性不妊症では精巣の大きさや形、硬さなどが詳しく調べられます。気になっている点がある人は、身体診察のときに詳しく調べてもらってください。

3. 精液検査

精液検査では精液や精子の量や見た目などを調べます。精液の基準値は次のものが用いられることが多いです。

【WHO(世界保健機構)の精液検査の正常値】

  • 精液量:1.5mL以上
  • 精子濃度:1500万/mL以上
  • 総精子数:3900万以上
  • 正常形態率:4%以上
  • 総運動精子数(総精子数×運動率)1560万以上

総運動精子数は治療の方向性を決めるうえで重要です。例えば、総運動精子数が正常値を超えている場合などは、自然妊娠が期待できるので、不妊治療を先延ばしにすることがあります。一方で、総運動精子数が著しく少ない場合は人工授精や生殖補助医療を積極的に使う判断材料の1つになります(人工授精や生殖補助医療については「こちらのページ」を参考にしてください)。

4. 血液検査

血液検査では、FSH(卵胞刺激ホルモン)や、LH(黄体刺激ホルモン)、テストステロン男性ホルモン)などを調べます。これらのホルモンは精子の形成に関係しているので、不足している人にはホルモン補充療法が検討されます。

また、抗精子抗体の有無も血液検査で調べます。抗精子抗体があると、精子の運動率が低下して、自然妊娠しづらくなると考えられており、人工授精や生殖補助医療を行う検討材料にもなります。

5. 超音波検査(エコー検査)

エコー検査は超音波を利用して、その反射の程度から体内を画像化する検査です。放射線を使うことはないので被ばくの心配はありません。男性不妊症が疑われる人には、超音波検査を使って、精巣の異常の有無や精索静脈瘤の有無などを調べます。多くはありませんが、より詳しい検査が必要な場合は、MRI検査などが行われることもあります。

参考文献

・「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014
・「泌尿器科診療ガイド」(勝岡洋治/編)、金芳堂、2011