こうりんししつこうたいしょうこうぐん
抗リン脂質抗体症候群 (APS)
身体の中に血栓でできやすくなる膠原病の一種で、特に女性に多い。流産の原因となることがある
11人の医師がチェック 134回の改訂 最終更新: 2021.11.28

抗リン脂質抗体症候群の原因について:免疫の異常

抗リン脂質抗体症候群は血管を構成するリン脂質に対して免疫反応が起こることで、血管がつまりやすくなる病気です。このリン脂質による免疫反応が脳梗塞肺塞栓症流産を繰り返す原因になります。

1. 抗リン脂質抗体症候群の原因

抗リン脂質抗体症候群は免疫の異常で起こる病気です。血管を構成するリン脂質に対して免疫反応が起こることで、血管がつまりやすくなり、脳梗塞肺塞栓症流産を繰り返してしまう自己免疫疾患の一つです。このような免疫反応の異常がなぜ起こってしまうかについてはわかっていません。

2. 自己免疫疾患とは?

ウイルス細菌などの異物が身体に入ってきた時に、これらを駆除する仕組みを「免疫」と呼びます。免疫は通常、異物だけを攻撃し自分の身体は攻撃しないように制御されています。しかし、何らかの理由で免疫の制御が働かなくなり、自分の身体に対しても免疫反応を起こしてしまうことがあります。これにより体調不良を起こしてしまう病気を「自己免疫疾患」と呼びます。

抗リン脂質抗体症候群は、血管を構成するリン脂質に対して免疫反応が起こることで血管がつまりやすくなる自己免疫疾患です。免疫の異常が根底にあるため、全身性エリテマトーデスなど他の自己免疫疾患を一緒に起こしてしまうこともあります。

3. 抗リン脂質抗体とは?

免疫はさまざまな免疫細胞、免疫物質により成り立っています。なかでも重要な免疫物質に抗体があります。抗体は外から入ってきた異物とくっつくことができる免疫物質です。異物に抗体がくっつくと、免疫細胞が見つけやすくなります。これにより抗体は異物の駆除を助けています。

通常は自分の成分に反応する抗体は生成されません。しかし、抗リン脂質抗体症候群の人では血管を構成する成分であるリン脂質に対する抗体(抗リン脂質抗体)が生成され、これにより血管に対する免疫反応が起きてしまいます。健康な人の血液には検出されない物質なので、抗リン脂質抗体の有無を血液検査で調べることで、抗リン脂質抗体症候群の可能性がわかります。詳しくはこちらで説明します。