にゅうとうふたいしょう
乳糖不耐症
乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が不足することで、乳糖を十分に消化や吸収することができず、下痢などの症状が出る病気
6人の医師がチェック 103回の改訂 最終更新: 2018.08.24

乳製品で下痢になる乳糖不耐症とは?

乳糖不耐症は、乳製品を食べたあとなどに腹痛や下痢の症状が現れる病気です。乳児では母乳やミルクで症状が出て治療が必要となることもあります。乳糖不耐症を持つ大人も大勢います。乳糖不耐症の原因や治療などを説明します。

1. 乳糖不耐症とはどんな病気か

乳糖不耐症は、乳製品などに含まれる乳糖という物質をうまく分解・吸収できないことによって腹痛や下痢などの症状が現れる病気です。

赤ちゃんが乳糖不耐症と診断される場合のほとんどは一時的なもので、自然に治ります。とはいえ、ミルクや母乳を飲んでいる時に乳糖不耐症があると、一時的に栄養状態が悪化するなどの影響が出て治療が必要になることもあります。

また日本ではたいていの人が、成長とともに乳糖を分解する能力を失っていきます。そのため成長にともなって乳糖不耐症が現れます。ただし、乳製品を全然食べたり飲んだりできなくなるわけではなく、少しの乳糖であれば摂取しても症状は出ません。

ほかに極めてまれですが、生まれつき乳糖を分解できない人がいます。この状態を一次性乳糖不耐症と言い、乳糖を避ける注意を続ける必要があります。乳糖を避けること以外に日常生活への目立った影響はありません。

2. 乳糖不耐症の症状

乳糖不耐症で出やすい症状の例として以下があります。

  • 腹痛
  • 腹部膨満
  • 下痢
  • 嘔吐

乳糖不耐症の特徴は、乳糖を含むものを食べたり飲んだりしてから数時間以内に症状が現れることです。それぞれの症状はほかにもいろいろな原因で現れるものなので、乳糖の摂取と関係なく症状が出るようなら、乳糖不耐症以外の原因をより強く疑うことになります。

乳糖不耐症により腹痛や下痢が出ている時は、乳糖を分解して栄養にすることがうまくできていません。その結果として栄養状態が悪化し、赤ちゃんの体重がなかなか増えないといった問題として現れ、治療が必要になることもあります。

詳しくは乳糖不耐症の症状のページで説明しています。

3. 乳糖不耐症の原因

乳糖不耐症は乳糖によって症状が引き起こされます。そのしくみには体内のラクターゼという酵素が関わっており、ラクターゼの作用が不足した状態が乳糖不耐症です。ラクターゼが不足する原因はいくつかに分類できます。

乳糖が吸収されるしくみをもとに、乳糖不耐症の原因について説明します。

牛乳などの乳製品で下痢になる人・ならない人の違い

「牛乳を飲むと下痢になる」と感じている人は多いと思います。乳糖不耐症の症状を引き起こす原因は、牛乳などに含まれる乳糖(ラクトース)です。牛乳以外の乳製品なども乳糖を含んでいるので同様の症状を引き起こすことがあります。

しかし、赤ちゃんは違います。乳糖を多く含むミルクなどを飲んでも、赤ちゃんの身体が正常な状態なら、症状は出ません。母乳にも乳糖が含まれていますが、やはり赤ちゃんは症状を起こさないのが普通です。

では、赤ちゃんはなぜ母乳やミルクを飲んでも症状が出ないのでしょうか。それは赤ちゃんの腸の中にラクターゼという酵素があって、乳糖を分解しているからです。ラクターゼの働きが減っている大人などでは乳糖不耐症の症状が現れます。ラクターゼについて次に説明します。

乳糖(ラクトース)を吸収するために必要なラクターゼとは

乳糖を分解するには、腸の中にあるラクターゼという酵素の働きが重要です。ラクターゼは主に小腸の細胞が持っています。腸に入ってくる食べ物と接する場所にラクターゼがあり、食べ物の中の乳糖に作用しています。ラクターゼは乳糖を分解して吸収しやすい物質(グルコースとガラクトース)に変えます。

このようにラクターゼがあることで、赤ちゃんは母乳やミルクの乳糖を分解して吸収し、栄養にすることができるのです。

乳糖不耐症はどんな状態か

乳糖不耐症は、何らかの原因で、腸のラクターゼが不足している状態です。ラクターゼの働きが少ないと、乳糖が分解・吸収されず、腸の中に残ります。

腸の中に残った乳糖は、腸から便へ水分を引き寄せる働きをします。残った乳糖が多いと水分の多い便ができて下痢となります。また、乳糖を吸収できなかった分は栄養が減ることになり、赤ちゃんの栄養状態が悪くなることにもつながります。

ラクターゼの働きが不足する原因はいくつかに分類できます。

  • 生まれつきラクターゼがない
  • 腸のダメージによりラクターゼが失われる
  • 成長にともなって自然にラクターゼが減る

生まれつきラクターゼがないことは非常にまれです。この場合、成長してからラクターゼを作れるようにはなりません。そのため、乳糖を避ける食生活を続ける必要があります。

赤ちゃんが乳糖不耐症と診断される場合のほとんどは、腸のダメージによりラクターゼが失われることが原因になっています。腸のダメージの原因となるものはさまざまですが、急性胃腸炎などの病気が主な例です。成長してからの状況も含めて、クローン病などの炎症性腸疾患、セリアック病などがラクターゼを失わせることも考えられます。

炎症性腸疾患は腸に持続的な炎症が起こって腹痛・下痢・血便などを現す病気です。根本的な原因はわかっていませんが、治療として炎症を抑える薬などがあり、症状が治まった状態を維持することが治療の目標とされます。詳しくはクローン病の詳細情報潰瘍性大腸炎の詳細情報をご覧ください。

セリアック病は日本人ではまれですが、白人に多い病気です。食事に含まれるグルテンという物質によって下痢などを現します。医師の診察の上で腸生検などの検査を使って診断され、必要と判断されれば食事療法が行われます。

腸にダメージを与えている病気が治まれば、ラクターゼは自然に回復し、再び乳糖を分解・吸収できるようになります。

成長にともなってラクターゼが減ることは、たいていのアジア人に起こる変化です。母乳を飲む時期にはラクターゼがあるので乳糖を問題なく分解できますが、成長とともにラクターゼが減っていくので、乳糖を受け付けなくなり、乳糖不耐症の状態になります。

このように原因の違いによって乳糖不耐症を分類することができ、それぞれで生活への影響などが違います。乳糖不耐症の種類について詳しくは次に説明します。

4. 乳糖不耐症の種類

乳糖不耐症は、原因によって大きく3種類に分類できます。

  • 一次性乳糖不耐症
  • 二次性乳糖不耐症
  • 成長にともなう乳糖不耐症

一次性乳糖不耐症は非常にまれです。子供が乳糖不耐症と診断される場合のほとんどは二次性乳糖不耐症です。ほかに成長にともなって多くの人が乳糖不耐症の状態になります。

以下でそれぞれの違いなどについて説明します。

一次性乳糖不耐症

一次性乳糖不耐症は、遺伝的に生まれつきラクターゼを持っていないことで、非常にまれです。一次性乳糖不耐症を持って生まれた子供は、生まれてすぐに症状が現れます。成長してもラクターゼを作れるようにはならないので、無乳糖ミルクを飲ませるなどの対応に続いて、離乳後も乳糖を避けることが必要です。

乳糖を避け続けるのは大変かもしれませんが、必要な栄養素はほかの食品からも摂ることができるので成長には影響がないことが多いです。

二次性乳糖不耐症

もともと乳糖を分解・吸収できていたのに、ほかの原因によって乳糖不耐症が引き起こされた場合を二次性乳糖不耐症と呼びます。腸がダメージを受けてラクターゼが減ることなどが原因です。ほかに腸の細菌が異常に増殖して乳糖の正常な分解・吸収を邪魔してしまうことも原因として考えられます。

子供が乳糖不耐症と診断される場合のほとんどは二次性乳糖不耐症です。二次性乳糖不耐症は一時的に栄養状態を悪化させ、体重が増えにくいなどの問題を起こします。治療を必要とする場合もありますが、原因が解消されていればしだいにラクターゼが増えてくるので、自然に治ります。

成長にともなう乳糖不耐症

子供のころには乳糖を十分吸収できていた人でも、年齢とともにラクターゼが減り、大人になってから乳製品などで症状が現れるようになる場合があります。

ヨーロッパとアメリカの白人では成人してからも乳糖を分解できる人が多いですが、日本人などのアジア人では乳糖不耐症に当てはまる人のほうが多く、その割合は90%から100%とも言われます。

成長にともなう乳糖不耐症は持続しますが、少量の乳製品なら問題なく食べたり飲んだりできる人が多いです。

5. 乳糖不耐症の検査

乳糖不耐症の診断には問診が大切です。また、乳糖を除去してみて症状がなくなり、再び乳糖を摂取すると症状が出るなら、乳糖不耐症の疑いが強くなります。

乳糖不耐症の診断に使われる検査は次のようなものです。

  • 問診
  • 身体診察
  • 乳糖の除去
  • 乳糖負荷試験
  • 便検査
  • 呼気水素ガス濃度検査
  • 経口ブドウ糖負荷試験

これらの検査はいつも使われるわけではありません。問診などで乳糖不耐症かどうかがはっきりしない場合に、ほかの病気と見分ける目的で検査を使うことがあります。

診断のために最初の手がかりになるのが問診です。問診では質問に答えることで身体の状態などを医師に伝えます。乳糖不耐症の診断には、「牛乳や乳製品を食べたり飲んだりした後に症状が出た」という情報がとても大切です。そのため心当たりがあれば問診で伝えてください。

多くの場合は、問診から乳糖不耐症が疑われ、乳糖の除去が開始されます。つまり乳糖を含まないものから栄養をとるようにします。

通常、乳糖を除去して5-7日程度で症状が治まります。乳糖を避けていても症状が長引く場合はほかの原因がないかを考える必要があります。

詳しくは乳糖不耐症の検査のページで説明しています。

6. 乳糖不耐症の治療

乳糖不耐症がある赤ちゃんは、母乳やミルクの乳糖をうまく吸収できないことから栄養状態に影響が出ることがあり、体重が増えにくくなることも考えられます。そこで栄養状態を改善するなどを目的とした治療法があります。

乳糖を含むものを食べたり飲んだりしないようにすれば、乳糖不耐症の症状は出なくなります。しかし、乳糖を含む母乳やミルクは赤ちゃんにとっては主な栄養の元です。そこで、治療の考え方には次の2通りがあります。

  • 乳糖を含まない食品から栄養を摂る:無乳糖ミルク
  • 乳糖の分解を助ける:β-ガラクトシダーゼ製剤

無乳糖ミルクは市販されている製品で、医師の指示に従って購入できます。乳糖を含まないので、乳糖不耐症による症状を引き起こすことがなく、ほかの栄養成分は同程度に含んでいます。

無乳糖ミルク以外にも、β-ガラクトシダーゼ製剤を使って母乳などを与える方法があります。β-ガラクトシダーゼは乳糖を分解できる酵素です。粉ミルクと一緒に溶かして飲ませたり、母乳の場合は少量の水かぬるま湯に溶いて授乳の途中で飲ませたりします。

治療をいつまで続けるかは状況によって違います。

一次性乳糖不耐症のある子供は離乳後も乳糖を避ける必要があります。

一方で子供が乳糖不耐症と診断される場合のほとんどは、急性胃腸炎などに引き続いて起こる二次性のものです。二次性乳糖不耐症の多くは自然治癒し、治療の必要がなくなります。

成長にともなう乳糖不耐症はとても多くの人に現れますが、ほとんどの人が治療を必要とせず、症状が出ない程度の乳製品を食べたり飲んだりして生活しています。

詳しくは乳糖不耐症の治療のページで説明しています。

7. 乳糖不耐症の人が気を付けることはある?

子供に下痢などの症状があって乳糖不耐症と診断された場合、そのほとんどは一時的なもので、数か月以内に自然治癒し、再びミルクや母乳を飲めるようになります。

自然治癒するまでにも、少量の乳糖なら症状が出ない場合があります。症状があって栄養状態が悪化している様子があれば、無乳糖ミルクやβ-ガラクトシダーゼ製剤が助けになります。

成長にともなって現れる乳糖不耐症では、通常、少量の乳糖なら症状なく飲んだり食べたりできるので、「自分にとって症状が出ない量」を把握しておくことで、食事を考えやすくなります。乳製品の中でも「牛乳はほとんど飲めないが、ヨーグルトなら一食分は大丈夫」など、種類によって違いがある人もいます。

乳製品を減らした場合はカルシウムなどの栄養が不足することを心配するかもしれませんが、カルシウムを多く含む魚・豆製品・野菜などで栄養のバランスを取ることもできます。

乳糖不耐症と言われた時の注意について詳しくは、生活上の注意点のページで説明しています。

参考

ハリソン内科学

UpToDate: Lactose intolerance: Clinical manifestations, diagnosis, and management.