じんがん(じんさいぼうがん)
腎がん(腎細胞がん)
腎臓の実質にできるがん。手術や分子標的薬により治療する。
10人の医師がチェック 260回の改訂 最終更新: 2024.05.08

腎がんの症状について:初期症状や転移した場合の症状、末期の症状など

 

腎がんには初期症状がほとんどありません。一方で、腎がんが進行すると疼痛(痛み)、血尿などの症状が現れます。ここでは腎がんの症状について、転移が現れたときの症状や末期の症状を中心に説明します。

1. 腎がんに初期症状はあるのか

腎がんにはほとんど初期症状がありません。そのため、症状を気を配っていても早期発見するのは難しいです。では、腎がんは進行してからでしか発見できないかというと、そうではありません。腎がんの6割から7割はステージ1(最も早期の段階)で発見されています。この割合は他のがんに比べて比較的高い数字です。症状がないにも関わらず早期発見が可能であることに、疑問を感じたかもしれません。その要因はいくつか可能性がありますが、超音波検査の普及が大きいと考えられています。腎臓は超音波検査で観察しやすい臓器の一つです。超音波検査の普及によって、健康診断や他の目的で受けた検査から腎がんが発見されることが増えているのです。

2. 腎がんの症状について

腎がんには古典的3徴と呼ばれる症状があり、次のものを指します。

【腎がんの古典的3徴】

  • 疼痛(とうつう)
  • 血尿
  • 腹部腫瘤感(ふくぶしゅりゅうかん)

上記の症状は進行した腎がんの人に現れることが多いです。また、実際には腎がんがあってもこれら「3つ全て」が現れる人は少ないので、どれかの症状に当てはまる人には詳しい検査が行われます。 また、腎がんがサイトカインという免疫に関係する物質を放出することがあり、下記の症状を自覚することがあります。

  • ふらつき
  • 体重減少
  • 発熱
  • 意識朦朧

上記の症状は腎がん以外の病気でも見られる症状であり、腎がんが原因となることはかなり稀です。ですので、当てはまるものがあったとしても過度に腎がんを心配する必要はありません。しかし、他の病気が隠れている可能性は十分にあるので、あてはまる症状がある人は速やかに医療機関で相談してください。

3. 腎がんが転移したときの症状について:骨転移・肺転移

腎がんは骨と肺に転移しやすいことが知られています。肺と骨に転移したときの症状について説明します。

骨転移の症状について

転移がある腎がんの人を調べた研究報告によると、24.6%の人に骨転移がみられました。 骨転移は腎がんが転移する臓器として、頻度が多いです。転移しやすい骨は次の部位です。

【腎がんが転移しやすい骨の部位】

  • 脊椎(せきつい):背骨 
  • 肋骨(ろっこつ)
  • 大腿骨(だいたいこつ)
  • 上腕骨

体の末端の骨に腎がんが転移することはまれで、体幹や体幹に近い太い骨に腎がんの転移は起こりやすいです。脊椎(背骨)に転移すると、中にある神経に影響しやすいので、注意が必要です。神経に影響が及ぶとしびれを感じたり手足の動かしにくさを感じたりします。

【骨転移が神経に影響したときの症状】

  • 痺れ(しびれ)
  • 知覚鈍麻(ちかくどんま):感覚が鈍くなる
  • 巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい)手による細かな作業ができなくなる
  • 歩行障害
  • 便失禁、尿失禁
  • 呼吸困難:呼吸がしにくくなる

転移が神経に与えて現れる症状はさまざまですが、中には命に影響を及ぼすものもあり、速やかな治療が必要になります。骨転移の症状には、放射線治療が有効で、痛みの緩和、神経への影響の予防、骨折の予防といった効果があります。

肺転移の症状について

肺転移の状況により症状が異なります。転移が小さな場合や数が少ない場合は特に症状がありません。一方で、転移が大きくなったり数が増えると次のような症状が現れます。

  • 息苦しさ

また、上記の症状に加えて、肺から出血し、血を吐くこと(喀血:かっけつ)もあります。の症状が出ることがあります。肺に転移があると言われた人は上記の症状が現れた場合は、すみやかにかかりつけのお医者さんに相談してください。

4. 腎がんの末期の症状は?

腎がんに限らず『がんの末期』には明確な定義がありません。ここで言う「末期」は抗がん治療(手術や抗がん剤治療、放射線治療)が行えない状態を指すことにします。 がんの末期ではがんが進行した影響で、悪液質(あくえきしつ)と呼ばれる状態が起こります、悪液質になると、がん細胞に身体の栄養が奪われてしまい、倦怠感や食欲の低下が現れます。食事量が減るため、栄養不足が起こり、身体のむくんだり、肺やお腹の中に水分が溜まっていき、身体を動かすのが簡単ではなくなります。また、がんの影響で痛みやしびれも現れます。 末期の症状は緩和医療で和らげるられるものがあるので、苦痛に思うことは、お医者さんに伝えてください。また、精神的なサポートも症状の緩和につながるので、家族や友人といった顔を知った人がそばで患者さんを落ち着かせることも大切です。 緩和医療に関しては「緩和医療って末期がんに対して行う治療じゃないの?」で詳細に説明しているので、参考にしてください。