手足口病の基礎知識
POINT 手足口病とは
手足口病はその名の通り手や足や口に症状の出る病気です。痛みやかゆみを伴う皮疹・水ぶくれが特徴になります。夏から秋に流行し、5歳以下の子どもがかかりやすいです。 たいていの場合は治療を行わなくても治りますが、まれに重症になるので注意が必要です。重症になった場合は、髄膜炎・脳炎・心筋炎などになることがあるため、いつもより明らかにぐったりしている場合は医療機関にかかって下さい。 口の中の症状が強く飲食ができない場合には脱水症状改善の補液を行い、痛みには鎮痛薬などの症状を和らげるための治療を行います。手足口病では必ずしも医療機関にかからなくて良いですが、困ったことがあったりぐったりしてしまったりした場合は、小児科・総合内科・感染症内科にかかって下さい。
手足口病について
手足口病の症状
- 3-6日間の潜伏期を経て
発症 する発疹 以外の症状 はあまり目立たない- 主症状は見られにくい
- 主な症状
- 口の中や手のひら、足の裏に赤い発疹ができる
- 水ぶくれのような発疹で、大きさは数mm程度
- 手の甲や足の甲、指の間、膝、肘やおしりに発疹ができることもある
- 感染者の1/3程度には熱も出るが、発熱は38℃以下が多い
- 発疹はかさぶたにはならずに3-7日で消える
- 口の中の発疹は痛みがあるため、食事や水分をとりたがらなくなることが多い
- 手足の発疹は痛みやかゆみがある
- 痛みやかゆみがあるため歩くのを嫌がる子もいる
意識障害 や明らかにぐったりするような場合や嘔吐を繰り返す場合には、重篤な合併症 を起こしている可能性がある- 似たような症状を起こす病気
手足口病の検査・診断
- 検査は必須ではなく、
症状 と流行の状況から総合的に診断される - のどや血液、便の中の
ウイルス の検査をすることもあるが、以下の理由で一般的にはあまり行われない- 検査結果が出た頃には、病気が治ってしまっていることがほとんど
- ウイルスの検査で陽性とわかっても治療は変わらない
- 検査できる施設は少ない(病院の外の施設に検査を依頼する場合がほとんど)
合併症 を起こしている可能性がある場合には、検査を追加することがある(以下がその例)- 脳炎・髄膜炎・ギラン・バレー症候群であれば
脳脊髄液検査 - 肺水腫であれば
CT 検査 - 心筋炎であれば
心臓エコー検査
- 脳炎・髄膜炎・ギラン・バレー症候群であれば
手足口病の治療法
- 主な治療
ウイルス に対する根本的な治療法はない症状 が強い場合に症状を取り除く治療(対症療法 )をすることがある- 発熱に対しては解熱剤
- ただし、熱があってもしんどくない場合は無理に解熱する必要はない
- ウイルスは人間の体内で増殖するが、人間の平温で最も増殖しやすいため、熱が上がっているとウイルスが増殖しにくい環境になっている
発疹 に痛みやかゆみを伴う場合は、抗ヒスタミン 薬の塗り薬を使用する- 刺激が少ない食べ物をとる(味が薄く、軟らかいもの)
- 水分はできるだけこまめにとる
- 食事や水分を十分にとれないために脱水になっている場合には、点滴が必要になることもある
- 保育園や学校を休む必要のある期間は決まっていない
- 一般的には本人の症状が落ち着いていれば集団生活は可能
- その都度医師と相談する必要がある
- 予防、再発予防方法
- 手洗い、うがい
- 特におむつ交換の後には十分に手洗いをする
- タオルの共有は控える
- 食器やテーブル、おもちゃなどの消毒も可能な限り行う
- 完全に予防することは困難
- 手足口病に有効なワクチンはない
- 症状がなくなってからも数週間は便の中にウイルスが存在するため、おむつの取り扱いには十分に気をつける
合併症 を起こした場合にはそれぞれの合併症に対する治療を行う
手足口病の経過と病院探しのポイント
手足口病が心配な方
手足口病はその名の通り、手、足、口の中にぶつぶつの皮疹や口内炎のようなものができる感染症です。熱は出ないか、出ても軽いものです。このような症状が当てはまる場合には、手足口病の可能性があります。
まず始めに理解しておきたいのは、手足口病は一般的なかぜと同じく、特に深刻に捉える必要はあまりない病気であるということです。自然の経過で治る病気ですし、手足口病という病名が有名になる前にはただの風邪の一種として認識されていた病気でもあります。「家族内に手足口病の人がいて、うつった可能性が高い」「手足口病に特徴的な症状が出ている」といったような時には、高熱が出たり病気が1週間近く長引いているような場合を除けばとりあえず自宅で様子を見るという選択肢もあります。
このような事情から、手足口病で医療機関を受診する第一の目的は他の病気ではないことを確認すること、ということになります。例えば水痘(水ぼうそう)であれば全身にぶつぶつができて熱が出るため、手足口病と症状が似ています。水痘の場合には治療薬がありますので必要に応じて薬を使用するという選択肢があります。もし診断が手足口病だということになれば、熱があれば熱冷ましが処方されますが、熱もない手足口病の場合、特に薬が出ないことも多いです。ご自宅で無理せず過ごして、様子をみてもらうことになるでしょう。
このような手足口病ですが、この病気で気をつけることがあるとすれば、周囲へ感染を広げないようにすることです。学校や職場はお休みして、自宅ではこまめに手洗いを行いましょう。感染中はタオルを家族間で共有せず別々に分けられると安心です。
受診先は、お子さんならば小児科のクリニック、成人の方であれば内科のクリニック、あるいはぶつぶつが強い場合には皮膚科の受診でも良いでしょう。手足口病は小児に多い病気ですが、まれに成人もかかることがあります。小児科の医師は診断に慣れていますが、成人を主に診ている医師では、場合によっては手足口病の可能性があまり思い浮かびにくいこともあるかもしれません。例えばご家族に手足口病の方がいてご自身にうつったのではないかと感じているような場合には、ぜひそのことを申し出るようにしてください。「息子が手足口病になって、3日後から私もこういう症状が出てきました」「ネットで調べて、手足口病じゃないかが気になって受診しました」といったように、最初に受診の目的や心配事を率直にお伝えになるのが良いでしょう。