おたふくかぜ(りゅうこうせいじかせんえん、むんぷす)
おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)
唾液をつくる耳下腺(耳の前〜下)、顎下腺(あごの下)が腫れて痛み、熱がでる感染症。特に小児に多い
10人の医師がチェック 155回の改訂 最終更新: 2022.05.04

おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプス)とはどんな病気?

おたふく風邪は主に耳下腺が腫れて痛む感染症です。原因はムンプスウイルスです。潜伏期間が2週間前後と長く発症前から感染力があること、感染しても発症しない不顕性感染がありこの場合にも感染力があることから、感染の拡大に注意が必要です。治療法はなく自然治癒する病気ですが、まれに合併症や後遺症が生じることもあります。予防接種をしっかり受けて感染を予防することが大切です。

1. おたふく風邪の原因は何か?

おたふく風邪の原因はムンプスウイルスです。

おたふく風邪の潜伏期間は2週間前後です。発症3日前から9日後まで感染力があります。またおたふく風邪には不顕性感染があり、不顕性感染にも感染力があります。

おたふく風邪の感染経路は、飛沫感染接触感染です。

ムンプスウイルスはどんなウイルスか

ムンプスウイルスは、パラミクソウイルス科に属するウイルスの一つです。パラミクソウイルス科には、ムンプスウイルスの他に、麻疹ウイルスやRSウイルスなどが属しています。これらのウイルスには今のところウイルスを直接治療する抗ウイルス薬がありません。また細菌でもないので、抗菌薬も効きません。

潜伏期間はどのくらいか?

感染してから発症するまでの期間のことを潜伏期間と呼びます。おたふく風邪の潜伏期間は2週間前後です。発症3日前から9日後まで感染力があります。潜伏期間中にも他の人へうつすことがあるため、感染の拡大に注意が必要です。

またおたふく風邪には不顕性感染があります。不顕性感染とは、感染しても発症しない(症状が生じない)ことです。ムンプスウイルスに感染した人のうち、発症しない不顕性感染が20-30%と言われています。不顕性感染者もウイルスを排出し感染力があります。不顕性感染者は感染しているのに症状が出ないので、本人も周囲も感染していることに気づかないうちに、他の人へうつしてしまう可能性があり、感染の拡大に注意が必要です。

どうやってうつるのか?感染経路について

おたふく風邪の感染経路は、飛沫感染と接触感染です。感染者の口から飛ぶ飛沫(水滴)を吸い込んだり直接触れたりすることによって、人から人へうつります。感染者の近くで生活している家族、集団保育や学校の同じクラス内では特に、感染のリスクが高くなります。

2. おたふく風邪によくある症状

おたふく風邪にかかると、耳下腺の腫脹、発熱、嚥下痛などの症状の他にも、合併症として髄膜炎や睾丸炎・卵巣炎、難聴、膵炎などを起こしたことによる症状がみられることがあります。

最も中心となる症状は、耳下腺の腫脹です。耳の前下方にある耳下腺がまず痛み出し、その後腫れてくることが多いです。耳下腺の腫脹は片側のことも両側のこともありますが、多くはまず片側だけが腫れて、その数日後にもう片方が腫れます。耳下腺の腫脹は最長で10日間ほど続きます。

ムンプスウイルスに感染した人のうち耳下腺が腫れるのは30-40%です。耳下腺が腫れなくても、髄膜炎や睾丸炎・卵巣炎、難聴、膵炎などの合併症が起きることがあります。

詳しくは、「おたふく風邪の症状について」のページで説明しています。

3. おたふく風邪はどうやって診断する?

おたふく風邪は主に、問診と身体診察によって診断します。

  • おたふく風邪のワクチン接種歴が0-1回
  • 周囲でおたふく風邪が流行中
  • 耳の前下方にある耳下腺が腫れて痛む

このような場合にはおたふく風邪と診断される確率が高くなります。

問診と身体診察で診断がつかない場合には、血液検査や微生物検査などの検査を行うことがあります。

詳しくは、「おたふく風邪はどうやって診断するのか?検査はどんなことを行う?」で説明しています。

4. おたふく風邪の治療について

おたふく風邪は自然治癒する病気で、治療法はありません。おたふく風邪の原因であるムンプスウイルスが身体の中で増殖するのを抑える抗ウイルス薬はありません。

おたふく風邪にかかったら対症療法を行います。対症療法とは、病気の原因を根本的に治療するのではなく、起こっている症状を軽減させるための治療のことです。おたふく風邪にかかり耳下腺が腫れて痛んだり熱が出たりしてつらい場合には、アセトアミノフェン(商品名の一例:カロナール®、コカール®)などの解熱鎮痛薬を使用します。

詳しくは、「おたふく風邪の治療法について」で詳しく説明しています。

5. おたふく風邪はどうやって予防する?

おたふく風邪には治療法がありません。かかると睾丸炎・卵巣炎や難聴などの合併症が起こることがあり、まれに後遺症が残ることもあります。このため、かからないように予防することが大切です。

おたふく風邪は、予防接種で予防できます。現時点では日本では任意接種ではありますが、事情があって打てない人以外の全ての人に接種が望まれます。おたふく風邪の予防接種は2回打ちます。1回目は1歳になったら、2回目は小学校入学前(年長)の1年間で打ちます。この2回のスケジュールは、定期接種である麻疹風疹ワクチンと同じなので、麻疹風疹ワクチンと同時接種をしておけば打ち忘れを防ぐことができます。

詳しくは、「おたふくかぜワクチンは打った方が良いか?」で説明しています。