アレルギー性結膜炎とは
アレルギー性結膜炎は眼の
目次
1. アレルギー性結膜炎とは
アレルギー性結膜炎は眼の結膜にアレルギー反応が起きて
日本眼科学会が作成した「アレルギー性結膜疾患の
「1型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患で、なんらかの自他覚症状を伴うもの」
1型アレルギーとは、花粉などの
2. アレルギー性結膜疾患の分類
アレルギー性結膜炎は「アレルギー性結膜疾患」という大きな括りに含まれています。アレルギー性結膜疾患は大きく次の4つに分けられています。
【アレルギー性結膜疾患の分類】
- アレルギー性結膜炎
- アトピー性角結膜炎
- 春季カタル
- 巨大乳頭結膜炎
それぞれについて説明します。
アレルギー性結膜炎:季節性、通年性
目に起こるアレルギーと聞いて、多くの人がイメージする病気がアレルギー性結膜炎かと思います。花粉症の人に起こる目の症状の多くは、アレルギー性結膜炎によるものです。
- 季節性アレルギー性結膜炎
- 通年性アレルギー性結膜炎
毎年同じ季節に症状が起こるものを季節性アレルギー性結膜炎と呼びます。花粉が原因になるものは花粉性結膜炎とも呼び、原因としてはスギ花粉がもっとも多いです。一方、季節によらず一年中症状が生じうるものを通年性アレルギー性結膜炎と呼びます。
アトピー性角結膜炎
顔にアトピー性皮膚炎がある人に起こるアレルギー性の結膜疾患を「アトピー性角結膜炎」と呼びます。症状は長年にわたって続き、原因となるアレルゲンはハウスダストやダニが多いです。皮膚のかゆみが強いため、目をよくこすることで病状が悪化しがちです。
春季カタル
アレルギー性結膜疾患の中でも、結膜の炎症が強いものを「春季カタル」と呼びます。「春季」とついてますが、主な原因はハウスダストやダニなどの通年性のアレルゲンです。症状は1年を通して起こり、春などの季節の変わり目に悪化しがちです。10歳前後の男児に多く、成長に伴って自然に改善することがあります。アトピー性皮膚炎を伴うことも多いです。
春季カタルでは、まぶたの裏の眼球結膜がボコボコと隆起する増殖性変化がみられるのが特徴です。また、結膜だけでなく角膜にも異常が起こることがあります。そのため、目のかゆみ、涙目、目やにといった症状だけでなく、角膜の異常による目の異物感、痛み、まぶしさ、視力低下などの症状も起こります。痛みは目が開けられないほど強くなることがあります。
巨大乳頭結膜炎
コンタクトレンズ、義眼、目の手術で
増殖性変化が起こる点は春季カタルと似ていますが、増殖性変化の形が異なる点と、角膜の
3. アレルギー性結膜炎の症状
アレルギー性結膜炎で起こりやすい症状は次のようなものがあります。
- 目がかゆい
- 目がゴロゴロする、異物感がある
- 目やにが出る
- 目が充血する
- 涙が出る
花粉やダニなどのアレルゲンが目に入ると目のかゆみ、異物感、目やになどが生じます。目の痛みや腫れは起きにくいです。
アレルギー性結膜炎の人の50-75%には鼻水、鼻づまり、くしゃみなどのアレルギー性鼻炎の症状が併せて起こります。詳しくはこちらのページを参考にしてください。
4. アレルギー性結膜炎の原因
アレルギー性結膜炎は目の結膜で起こるアレルギーです。免疫が異物と認識したアレルゲンが原因になります。ここでは、季節性アレルギー性結膜炎と通年性アレルギー性結膜炎に分けて、原因について説明します。
季節性アレルギー性結膜炎の主な原因は花粉です。どの季節に症状が起こりやすいかによって、アレルゲンとなっている花粉を推定できます。
- 春:スギ、ヒノキ
- 夏:イネ科、シラカンバ
- 秋:ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ
- 冬:スギ
花粉を原因とした結膜炎は花粉性結膜炎とも呼ばれ、最も多い原因はスギ花粉です。
一方、通年性アレルギー性結膜炎の原因として多いアレルゲンは次のようなものです。
- ダニ
- ハウスダスト
- 動物の毛:ネコなど
これらを原因とする通年性アレルギー性結膜炎は、季節によって多少の症状の変化がありますが、基本的には一年を通して症状が起こりえます。
5. アレルギー性結膜炎の検査
アレルギー性結膜炎が疑われた人にはいくつかの検査が行われます。目のかゆみや目やになどの症状があって、アレルギー性結膜炎特有の見た目が身体診察から見つかれば、ほぼ診断がつきます。さらに、血液、皮膚、涙の検査を行うことで、より正確に診断が行われます。
問診 - 身体診察
- 血液の検査
特異的 IgE抗体検査
- 皮膚テスト
プリックテスト スクラッチテスト - 皮内テスト
- 眼の検査
- 涙液中総IgE抗体測定
- 点眼誘発試験
- 結膜分泌液・眼脂内の好酸球検査
これら全てが行われるわけではなく、必要に応じた検査が選ばれます。よく行われるのは「涙液中総IgE抗体測定」で、涙の中にアレルギーを起こすIgE抗体がどのくらい含まれているかがわかります。また、どの物質に対してアレルギーを起こしているかを調べるために、血液検査の「特異的IgE抗体検査」が行われることがあります。検査方法についてはこちらのページを参考にしてください。
6. アレルギー性結膜炎の治療
アレルギー性結膜炎では
【治療で使われる点眼薬の種類】
- 抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬)
- メディエーター遊離抑制薬
- ステロイド点眼薬
アレルギー性鼻炎が併せて起きている人や、点眼薬では症状が良くならない人には
最近では医療機関で処方されていた薬が市販薬として購入できるようになっています。
また、毎年同じ時期に季節性アレルギー性結膜炎の症状が起こる人は、症状が出現する2週間ほど前から点眼薬の使用を開始する「初期療法」によって、ピーク時の症状を軽減できます。「初期療法」や「市販薬」について詳しくはこちらのページを参考にしてください。
7. アレルギー性結膜炎の人が気をつけると良いこと
アレルギー性結膜炎では予防やセルフケアが重要です。日常生活について知っておくと良いことについてまとめます。
アレルギー性結膜炎の予防・セルフケアについて
アレルギー性結膜炎の治療では、点眼薬による薬物治療を行うとともに、花粉やダニといった原因アレルゲンを避ける工夫も重要です。
原因アレルゲンの代表である花粉をできるだけ避けるためには、下記のような方法がおすすめです。
- 花粉情報に注意する
- 花粉の多い時の外出は控える。外出時にマスク、眼鏡を使う
- 表面が毛羽立った毛織物などのコートの使用は避ける
- 帰宅時、衣服や髪をよく払ってから入室する。また、洗顔、うがいをし、鼻をかむ
- 飛散の多いときは窓、戸を閉めておく。換気時の窓は小さく開け、短時間にとどめる
- 飛散の多いときのふとんや洗濯物の外干しは避ける
- 掃除を励行する。特に窓際を念入りに掃除をする
参考:『鼻アレルギー診療ガイドライン(2016年版)」
目を洗うことも花粉の除去に有効ですが、カップ式の目を洗う道具はあまり勧められません。防腐剤の入っていない点眼薬を5-6滴使って洗い流すとよいです。
一方、通年性アレルギー性結膜炎ではハウスダストやダニが原因となることが多いです。ハウスダストにはダニが多く含まれており、ダニの除去が重要な予防方法になります。
- 床の掃除機がけを行う
- 布張りのソファー、カーペット、畳はできるだけやめる
- ベッドのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかける
- 寝具を十分に乾燥させる
- 室内の温度、湿度の管理をする
- シーツ、布団カバーはこまめに洗濯する
参考:『鼻アレルギー診療ガイドライン(2016年版)」
湿気を好むので、換気や除湿などをして湿度が上がりすぎないように気を配ることが重要です。こちらのページにさらに詳しく書いてありますので参考にしてみてください。
日常生活についての疑問点
日常生活に関してコンタクトをしても良いのかという疑問を持つ人が多いようです。症状が強い時にはコンタクトレンズの使用を避けるほうが良いです。レンズにアレルゲンや目やにが付着して症状が悪化することがあります。
症状が軽い時期にはコンタクトレンズを使用しても構いませんが、できれば1日使い捨てのタイプがお勧めです。
また、コンタクトレンズを使う場合には、一旦外して点眼するなどの注意が必要です。コンタクトレンズをつけたまま使用できる点眼薬もなかにはありますので、希望される場合には薬剤師さんやお医者さんに相談してください。
その他よくある疑問点や、治療に関して知っておくと良いことについてはこちらのページに詳しく書いてあります。
参考文献
・日本眼科学会 アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン編集委員会, 「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)」
・鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会/編, 「鼻アレルギー診療ガイドライン(2016年版)」, ライフ・サイエンス, 2015